第73話:中学時代の男友達と女装ショップへ
数日後。
中学時代の友人たちと待ち合わせ。
自宅最寄の駅前に集合。
いい天気だけど、いい天気すぎて、暑い暑い。
皆のリクエストで、ウチは『しの女』の制服で。
スニーカーと違って、ローファーは地味に歩きにくい……。
駅前のプチ・ロータリーには既に四人、集まっていた。
そこへ。
「おまたせ」
軽く手を挙げながら、近付くと。
「マジか!?」
「うわ、本物!?」
「ナマ
「略したら、ナマーヤ!?」
略すな。ナマーヤって何だよ一体。
するするっと、四人の男子に取り囲まれる、女装男子の図。
ハタから見たら、ナンパされる美少女。
いや。
美少女は自意識過剰過ぎるか。
少女、くらいにしておこう。
「ナンパはお断りです」
「えー」
「ナンパ違うし」
「でも、マジ、これ、ちゃんと盛り上がってるのな……」
「服の上からだと、それっぽ過ぎて違いがわかんないな」
口々に感想を述べる連中。
興味を惹かれるのは、もちろん、男には存在しない、
「まぁ、その疑問に答えるにも、お店、行ってみようか」
と、先導して、駅の改札へ向かう。
ぞろぞろ。
女子ひとり、男子四人。
正しくは。
女装男子ひとりに、男子四人。
男子の方も、ウチの制服姿にあわせて制服姿。
まぁ、制服と言っても男子の夏服なので、スラックスの色が違うくらいか。
ただ、ひとり、デニム。
「川村んとこって、私服だっけ?」
「そうだよ。通学は私服。学校行ったらほぼ作業着だけどな」
なるほど。確か工業系の学校だったっけか。
そんな話をしながら、電車に乗って数駅。
目的の駅で降りてから少し歩くと、
「え? ここって女向けの店なんじゃ?」
「うっ……なんか入るの、すげぇ恥ずかしいぞ」
「場違い感、ハンパ無いな……」
ぶーたらは無視して。
「右半分は女性向けで、左側が例のショップだよ。行くよ」
と、ここでも船頭……じゃなくて、先導。
意味的には、あながち間違いじゃないか。
「いらっしゃいませ」
店長の雪人さんが出迎えてくれる。
「お邪魔します。大人数ですみません」
雪人さんには先んじてメッセージで今日、友達を連れて行くと連絡済み。
「いえいえ、来てもらって嬉しいよ。ゆっくりしてってね」
「はい、ありがとうございます」
「うわぁ、これかぁ!」
「ああ、多分、これだよな」
早速。
「あんまり騒がないように、ね?」
とりあえず、五寸釘。
「なぁ、なぁ、園田、これだよな?」
「そうだよ。サイズは
山田が棚から取り出した
「どのサイズ?」
「B」
ウチが着けてるのと同じのを取り出して見せる。
「B……ちっちゃいな」
「どうせなら、
山田が取り出した
やっぱり、男なんだよなぁ。大きいのがお好きですね……。
「大きすぎると、色々不都合があるんだよ」
そう、物理的にも、精神的にも、ね。
「なぁ、
今度は若林が別の棚から取り出した
「うん、それそれ。横にある紐で腰にくくり付ける感じね」
「なるほど、こんな感じか」
若林が、実際にスラックスの上から疑似的に装着してみせる。
「なんか、座布団常備みたいな感じだな」
わははは、と。笑いが起きる。
お店からしたら、迷惑かもしれないけど。
なんかいいよね、こういうの。
「カツラもあるのな」
「化粧品もあるぜ」
「どっちも縁の無いものだよなぁ、オレ達には……」
「うんうん」
とか言いつつ、商品を見て回る連中だけど。
連中が、全く近寄らない一角が。
男子高校生が、おそらく近寄れない商品のコーナー。
そのコーナーで、ウチは。
「雪人さん、これ、試着してみてもいいですか?」
かたわらで、ウチらを温かく見守ってくれていた雪人さんが、嬉しそうに。
「どうぞどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
ウチは新入荷の『夏向け・涼感ブラジャー』を手に、フィッティングルームへ。
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