第52話:ぱっつん子先輩の手による料理



「え? 先輩、ちゃんと料理できるじゃないですか?」


 全然ダメダメで、包丁の持ち方から、とか思っていたら。


「もともと全くできない訳ではないですし、それに……」


 件の、料理を教えて欲しいと言い出した後。


 こっそり料理の勉強をしていたらしい。


「味付けを教わるのに、基礎ができていなかったら、時間がかかり過ぎてしまうでしょう?」


 おっしゃる、通り。


 なんだ。


 結構、時間かかるかなと思ってたけど。


 これは、逆に、時間がかからなさすぎて。


 夕食まで時間が余ってしまう、かも?


 それならば、と。


 じっくり、ゆっくり、丁寧に、丁寧に。


 食べる人数の事もあるので、二食分を、数回に分けて。


 二食分と言えば、ちょうど、ウチと母さんの二人分だから、分量的にも慣れているので、作りやすいし、教えやすい。


「なるほど、手順はだいたいわかりましたけど、材料や調味料の分量が、大ざっぱ過ぎて、解かりにくいと言いますか……わかりませんわね」


「デスヨネー」


 少々、とか、ひとつまみ、とか。


 ささっと、ふりかけて、とか。


 ここらへん、経験則的なところが大きいので。


「そんな事もあろうかと」


 じゃじゃーん。


 と。


 ぱっつん子先輩が取り出しましたるは。


 料理用の計測器。


 ひらべったいところにモノを乗せると、結構細かい単位で重さが測れるやつ。


「料理に入れる前に、こちらで量を測らせていただけませんこと?」


「了解」


 若干、苦笑する面もあるが。


 ある意味、正しく伝えるには、定量化する方が、確かなのは事実。


 かも?


 次の二食分を作るにあたって、基本的にはぱっつん子先輩が、調理。


 材料や調味料の分量はウチが用意して、測定してから鍋へ投入。


 ぱっつん子先輩がそれを記録しつつ、作業するので、そこそこの時間がかかって。


 今度は、煮込みの時間とかが微妙にズレそうになるけど、そこは前倒しでなんとか。


「ふぅ……」


 出汁部分や、一部食材を、試食。


 先にウチが作ったものと、次に先輩が作ったものを食べ比べ。


「うん、遜色ない、かな?」


「ええ、ただ、やはり」


 時間的な差異があったためか、若干、味に違いがあるような。


「じゃあ、最後、もう一度」


「ええ、今度はわたくしひとりでやってみますわ」


 と。


 挑戦チャレンジ


 その結果は。


「ウソでしょ……、コレ、ほんとにサクラが作ったの?」

「奇跡だわ」

「うんうん、いけるいける」


 予言通り。


 頃合いを見計らって登場した、他の二先輩と、先生。


 母さんも交えて、夕食。


 ぱっつん子先輩の料理を口にした金髪子先輩、おさげ先輩、エリ先生が。


「うぅ、これは……ウチらも習った方がいいよねぇ」

「そうですね……」


 仲良し三人組の三先輩。


 他が出来て、自分が出来ないとなると。


「ふふ。では、ふたりには、わたくしがお教えしましょう。真綾まあやさんのお手を煩わせるまでもありませんし、ね」


 そりゃ、助かる。


「それにしても、真綾氏……」

「男装も、似合うねー」


 おさげ子先輩は、わかんないけど。


 金髪子先輩は、ウチの事を完全に、女子の後輩、と、思い込んでる?


「それにしても、男子の格好の真綾くんって、なんか新鮮ね」


 先生も、おっしゃいますが。


 まぁ、確かに、私服姿を見せるのも、ほぼ初めてだし?


 おさげ子先輩はどうだろう、と、ちらっと顔を見てみたら。


 偶然、目が合って。


 にこっと、微笑まれた。


 まぁ、引かれてないから、まだいいか。


 これで、先輩方も、男子に慣れてくれれば?





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