第26話:肉じゃがか生姜焼きか、それが問題だ



「何で何で何で。何で先生も呼んでくれなかったのよぉっ! 自分達だけおいしいもの食べて、ずるいずるいずるいずるい」


 オレんで、三先輩にオレの手料理を振る舞った、先週の八時間目から一週間。


 今週の、八時間目。


 先週は居なかったロリ先生に、先週の状況を報告、説明したらば。


「わたしも食べたいわたしも食べたいわたしも食べたぁああいっ」


 ロリ先生が、駄々っ子に。


 そんなロリ先生に。


「ホント、あのニンジンは美味しかったわぁ……」


 うっとり、と、その味を思い出すかのように、おさげ子先輩。


 おさげ子先輩はニンジンが苦手と言う訳ではく、率先して食べてくれた。


 その味の評価から、金髪子先輩とぱっつん子先輩にも是非にと、薦めてくれて。


 恐る恐る、と言った感じでクチにしてくれた金髪子先輩とぱっつん子先輩。


「ニンジンがあんなにも美味しいなんて、ウチも知らなかったよ~。あれならいくらでも食べれるかも」


 金髪子先輩も、その味を思い出してくれている模様。


「ええ、ちょっと信じられませんでしたけど、すごかったですわね。まるでスウィーツみたいでしたわ」


 もちろん、ぱっつん子先輩も。


「そうそう、お菓子みたいだったよねー。それに、ハンバーグも美味しかったよねー」


「うんうん。真ん中のチーズ入りの生地の部分と、外側の普通のと、味変? みたいな?」


「えぇ、男子のクセにあんなに料理が上手なんて、未だに信じられませんわ」


 おぃ!?


「だーかーらーーーっ! せんせーも食べたいいいいいいいい」


 当日、そもそも別の用事で、八時間目にも不参加だったロリ先生。


「だー、わかったわかった、先生にも作るから、今日でいいっすか?」


「もちろん!!」


 即答!?


「わたしもっ!」

「ウチもっ!」

「もちろん、私もですわっ!」


 こいつら……。


 しょうがない。


 先生が食べたいと言う、例のニンジン。


 バターとシロップで煮詰めて、とろとろに茹でたヤツ。


 母ちゃん直伝のヤツ。


 ウチでは『甘いニンジン』としか言ってないから、世間でどう言われてるかは、知らん。


 は、いいとして。


 三先輩はさすがに、先週と同じハンバーグじゃ物足りないだろうから。


 今日は何作るかなぁ。



 甘いニンジンに合わせるなら、肉じゃが?


 生姜焼きも悪くないか。



 八時間目は、急きょ、繰り上げてそのまま晩御飯会へと突入。


「ねえねえ、園田氏」


 買い出しに向かう途中、おさげ子先輩が声をかけて来る。


「ん? 何スか?」


「今日は少し時間もあるし、あのニンジンの作り方、教えてよ」


 あー。


 どうやら、三先輩の中で料理に少しでも覚えがあるのはおさげ子先輩だけの模様。


「いいっすよ?」

「うん、お願いするわね」


 メガネの奥。


 すこし吊り気味の目尻が、今日は。


 にこやかに下がってた気がする。


「生姜焼きっ!」

「肉じゃがっ!」

「生姜焼きっ!」

「肉じゃがっ!」


 その前を歩く金髪子先輩とぱっつん子先輩が並んで言い合っている。


 どっちでもいいぞ?


 ただ、両方は、やめて?


 さすがに、ちょっと面倒……。


 しょうがないなぁ……。


 あ。



 しょうがない、だけに。


 しょうが焼きっ!


 じゃ、なくて。



 生姜無い、なら。


 ただの豚焼き?



 豚の肉じゃがにするか?





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