第18話:もぅ、帰ってよいですか?



 女装男子専門ショップにて。


 女性的な膨らみを模した『物体オブジェクト』を見繕い。


 髪型を女性的にする『ウィッグ』も見繕って。


 がやがやとうるさい連中も戻って来てのお披露目は。


「うわー……」

「あー……」

「ほぉ……」

「んー、かわ……いい?」


 ロリ先生に金髪子先輩とおさげ子先輩。それから最後のは母ちゃん。


 つか、何やってたんだ、今まで?


 いや、言いたいコトは、わからんでもないが。


 自分でも微妙だってのは、理解してるよ?


 ツライよ? いろいろと。


 泣いちゃうよ?


 泣いていい?


「ジャージだから……普通のお洋服、持って来ましょうか?」


 見かねた女性の店員さんが、幼女な息子さんを抱いたまま助け舟を出してくれるが。


 しかし、母ちゃんが。


「んふー。こんなこともあろうかと」


 がさごそ、と、持参のバッグから何かを取り出して。


「じゃーん。こんなこともあろうかと、制服、持って来たわよー」


 わよー、じゃ、ねぇ。


「はいこれ。お着換えしてね」


 ぽん、と、手渡される『しの女』の女子制服。


 わざわざオレの部屋から持って来たんかいっ。


 仕方がないので、さっきも使ったフィッティングルームでお着換えして。


 さらにも増して、恥ずかしい感が、益々、増す増す。


 母ちゃんもさすがに靴は持って来てないか……本来はローファーが指定だけど、今日はスニーカーで。


 開き直って、堂々と、面々の前へ出て。


「どう?」


 せっかくなので、それっぽいポーズを取ってみたりして。


 もぅ、ヤケ?


 それにしても。


 耳とか頬にあたるウィッグがやっぱり慣れないなぁ……。


 そして。


 はて?


 逆に、こっちから見渡して、先輩方とロリ先生の姿を見て違和感。


 何かおかしい。


 何だ、この違和感は……あっ。


「なんだそれ。金髪子先輩とロリ先生……それにおさげ子先輩も」


 オレ同様に。


 無かったはずの女性的な膨らみが。


 オレ以上に。


 どーん!


「女の子用の上げ底も売ってたのー」

「買っちゃったー」

「秘密兵器ね、これは」


 お三方……。


 ぱっつん子先輩と同等か、それ以上の、どーん!


 よく見たら、母ちゃんも同じくらいになってないか?


「お買い上げ、ありがとうございます」


 女店員さんもぺこり。


 女店員さんもぺこり。


「貴女たち、ねぇ……」


 唯一、ぱっつん子先輩だけが。


 頭を抱えている。


 他の面々の膨らみは、ぱっつん子先輩のモノとほぼ同等?


 ずらーっと並ばれると。


 目のやいばに困るんだけど……。


 違う、目のやり場、か?


 目のやいばってなんだよ。刺すのか? 切るのか?


 そんな、どうでもいいコトを。


 考えてしまう、今日この頃。


 皆さま、いかがお過ごしでしょうか?


 オレは、もぅ……。


 ……帰ってよい?




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る