第15話:ユキトとアキラの男子母娘(おやこ)
我らが母校『しの女』の最寄駅の隣の駅から少し歩いたところに。
ありました。
『女装男子専門ショップ・YUKITO』
「お隣は普通に女性向けのファッションもやってるのね」
エロ先生……じゃなかった。ロリ先生のおっしゃる通り。
「なになに……『ガールズ・ファッション~YUKI』」
「女の子向けが『
おさげ子先輩と金髪子先輩の感想と言うか、レポート?
女性向けのショップがもともとあって、そこに女装ショップを追加した感。
『YUKI』の入り口から入ってすぐ、左に『YUKITO』への誘導案内。
「ウチ、こっち見て来てよい?」
「だめよ、貴女も一緒にこちらへ」
「ぅぇー」
金髪子先輩が女性向けのショップに行こうとするが、ぱっつん子先輩に引き戻される。
ロリ先生も後ろ髪ひかれてそうで、時々振り返って女性向けショップの方を見てるな。
オレと母ちゃんは三先輩の後に着いて店内へ。
「いらっちゃいまちぇ!」
「うわー、何? カワイーっ!」
出迎えてくれたのは、幼女。
幼い少女と書いて、幼女。ちっちゃな女の子。
三歳か四歳ぐらいか?
いや、もう、これ、何から何まで。
色々、想定外。
「パパ~、きれいなおねーちゃんがいっぱいきたよー」
なんで女装男子ショップに幼女?
店の奥に座っていた美人なお姉さん……お姉さん??
「ほら、アキラ、こっちおいで……失礼しました。いらっしゃいませ」
お姉さん(仮)が立ち上がり、幼女を抱き上げてこちらへ。
容姿だけを見れば、キレイなお姉さん。
いや、でも『パパ』って呼ばれてなかった?
それに、この声……。
「えっと……あ、君かな? 何かお探し物でも?」
オレの存在に気付いたのか、声をかけられる。
「あ……や……その……」
オレは混乱している!
「このおにーちゃんも、パパとボクとおなじ?」
「うん、多分、そうだと思うよ?」
幼女とその母親らしき父親と……え? ボク?
水色の可愛らしいワンピースに赤いリボンで髪を結っているが。
「はい、このヒトにちゃんとした女装をさせたくて……」
ロリ先生が店員さん
「なるほど……『しの女』が共学化されたって初めて聞きましたよ……」
全然、宣伝してなかったらしいしなっ!
たまたま家の真ん前の学校だったから興味があって調べて共学化に気付いたオレだけど。
男子の出願数が少なかったのも、宣伝してなかったせいだろう。
それはともかく。
「それで、ブラの中に入れる上げ底? みたいなのが売ってるってネットで見て。あと、ウィッグもあるとか」
「はい、それでしたら、そちらの後ろに……」
入口から入って見た正面、ではなく、入り口のすぐ脇。
並んでいる。
「おぉ……写真で見て生々しいと思ったけど、現物はさらに生々しいね」
金髪子先輩の初見感想。
オレもそう思う。
ずらっと並んだ肌色の
「うわ、ふわっふわ……それに思ったよりずっと軽い……」
金髪子先輩が興味津々でその
他の先輩方も同様に。
いや、なんであんたたちが?
「えっと、店員さん……」
念のため、確認しておきたくて、店員さんに声をかける。
「はい?」
「店員さん『も』、その……」
男の娘さん?
「はい、
にっこりと微笑んで返してくれるその姿は、どう見ても美女なのだが。
「あと、この子も……ボクの息子なんですけど」
「はぁ……」
やっぱり……。
「サイズの希望とか、あります? ブラも用意してるので一緒に、フィッティングしてみますか?」
矢継ぎ早に問われるが。
「あ、いや、その、えっと……」
しどろもどろ。
しどろん・もどろん。
新しい漫才ペアか?
「ブラは自前の着けてるので大丈夫です。このサイズでフィッティングいいですか?」
なんでおさげ子先輩が仕切るっ!
「はい、では、こちらへ……」
勢いで試着室へ連行される、オレ。
いやん。
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