第6話:ロリ先生と大変なトイレ



「オレは……」


 先輩とおぼしき女子生徒三名、それに幼顔の女性教師の四人を前に。


 とりあえず、礼儀的に、起立して。


「オレは園田そのだ。一年一組、男子。以上」


 自己紹介。そんでもって、礼、着席。


 座る時にスカートがシワにならないように、太ももに撫でつけて、って、母ちゃんから教えてもらった……教えられたケド、面倒くさいよなぁ、これも……。


 それはいいんだが。


「……」

「……」

「……」


 先輩女子三名、ぱっつん子先輩、金髪子先輩、おさげ子先輩は、見事、無反応。


 幼顔の女性教師が、幼声で。


「……ええっと、それ、だけ?」


 とか、のたまいやがるが。


「そっちはそれ以前だったろが」


「まあ、そうなんだけど……ええっと、んんっと……そ、それじゃ、みんな、園田くんに何か質問とか、無いかなぁ?」


 矛先を先輩女子三名の方へ振る、幼顔の幼声の女性教師。


 あ? そう言えば。


「先生の自己紹介がまだな気がするけど?」


 一応、突っ込んでおく。


「あ……」


 幼顔の幼声の女性教師はオレの突っ込みの事実に思い至ったらしい。


「わ、わたしは……沢田さわたエリ、二年目の教師よ。担当は現国。クラス担任も部活顧問もしていないからって、この訳のわからないカリキュラムの担当を押しつ……任されましたっ!」


 幼顔の女性教師が幼声をふりしぼって、半ば……いや、完全にヤケになって叫ぶ。


「さぁ、じゃあ、園田くんに質問、質問してみましょぉ!」


 あぁ……お疲れ様です、って感じだな、このセンセも。


 てか、名前……エリって言うか、なんとなく、ロリ?


 それはどうでもいいけど。


 とっとと帰って晩御飯の支度したいんだが……。


 仕方ない、小一時間、つきあってやるしかない、か……。


「……」

「……」

「……」


 そんなロリ先生の『指導』にも、無言の先輩女子三名。


 ぱっつん子先輩、金髪子先輩、おさげ子先輩。


 が、しかし。


「……お手洗い……」


 ぼそっと、つぶやくように、ぱっつん子先輩が何か言う。


「ん? 大里さん、お手洗いに行きたいの?」


 ロリ先生の、おそらくは的を外した反応に、ぱっつん子先輩は。


「違いますわよ! お手洗い。男子用のお手洗いなんて無いのに……まさか、女性用のをこっそり使ってるとか言いやがったらタダじゃおきませんことよ!?」


 なんかすごいな、ぱっつん子先輩……。


「あぁ、なるほど! そこのところ、どうなんですか? 園田くん?」


 あぁ、なるほど、は、オレもロリ先生と同じ意見。


 そもそも女子校で、教職員も女性ばかりだったこの学校。


 施設として、男性用のトイレも無さそうだけど。


「一箇所だけあるんだよ。職員室の奥の用務員室の横に、来客用のが」


「え? そうなの? あれ? 一年一組だと、そこって……」


 そうなんだよ。


「まぁ、校舎の端から端、だな……」


 一年生の教室は、校舎の四階。二年は三階。三年は二階。一階は特別教室や職員室や事務室、用務員室。


 一年一組の教室は、四階の一番端。その対角線上に、用務員室。その隣に来客用の男性用トイレ。


「……大変なのね」


 ぼそっと、声を漏らすは、ぱっつん子先輩。


「大変なんだよ……」


 もうね、往復すると休憩時間がかなり削られる。


 『廊下は走らない』なんて校則、ルールがありやがるから、ギリギリ競歩状態で。


 まぁ、漏れそう、とかは今のコトロ無いからいいけど。


 ギリギリで、間に合わなくて決壊とかの悲劇は避けたいしなぁ。


 まぁ、通学時間をショートカットしてる分、身体を鍛えるにはいいかもしれんが。


 でも。


 大変だと、思ってくれるぱっつん子先輩。


 アタリのキつさからろくでもないヤツかと思ったりもしたが、意外と。


 見かけ通りに?


 全くソリが合わないかと思ったけど。



 もしかしたら……?





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