エイプリルフールのラブコメ。

あるふぁ

今年もエイプリルフールに告白かよ!

 俺は後輩に好かれているらしい。

 恋愛感情とかではない。

 例えるなら、おもちゃのように思われているらしい。

 簡単に言うと事あるごとにからかってくる。

 それは四月一日でもおかまいなしに



『いま旅行中なんだけど、どこ行ってるかわかる?』


 予想通り後輩からメッセージがきた。

 メッセージの内容は予想外だったが。


(いつもならメッセージで呼び出されるはずなんだけどな)


 過去四回の四月一日エイプリルフールを思い出す。

 彼女に会って以来、毎年毎年、俺は告白をされる。

 からかっているだけなのはわかっている。

 からかっているだけなのだから「好き」なんて言われても勘違いしてはいけない。

 エイプリルフールなのだから。



「どうせ電車で1時間くらいのとこだろ?」


 彼女の問に答えた直後『違うよ。もっと遠いところ』と送られてきた。


「じゃあどこ?」と返すと『海外』と、またもや即座に返信が。


「なんで」

『家出』

「嘘だろ」


 嘘に違いない。

 家出で海外なんて聞いたことがないし、アイツは両親とも仲が良いらしいからな。


(海外とか言っておいて、漢字の通り海の外って可能性もあるが)


 こんな時期に離島に行く理由もないだろうから、嘘だと断定する。


「今日はエイプリルフールだからって嘘付いてるだろ」


 思ったことを打ち込み送信。

 すると、返事が。それも瞬時に。


『そうだね、今日はエイプリルフールだね』


(やっぱり)


 二つの意味でやっぱりだ。

 こんなに返信が速いなんて、俺がどう返すのか想定しているに決まっている。


(そんなに単純か、俺)


 メッセージが送られてきてから数秒後、彼女から写真が送られてきた。


(わざわざスクショ撮って送る必要ないだろ……)


 送られてきた画像にそんな感想をいだく。

 今日が四月一日だなんてほとんどの人が知ってるだろうに。


『そうだ、今日、エイプリルフールだったよね』

『好きです! 付き合ってください』

『どう? 告白は嬉しい?』


 ほぼ――というか同時に送られてきた三つのメッセージに「はいはい、そうですか」と返す。


 対面じゃないから、からかわれることもない。

 去年と同じく動揺することもない。

 昨日の今年こそは動揺しないぞ、という決意に意味はなかったらしい。


(来年もそうしてほしい……)


 本心から思った。


「ていうか、ちゃんと寝れてるか?」


 話を逸らすように送る。

 というのも、画像に売っていたアラームの時間が気になったのだ。

 朝の三時。最近夜勤のバイトもいれてると言っていたが、しっかりと睡眠が取れているか心配だ。


『普通だよ』


 今までと同じくらい寝られているなら良かった。

「無理すんなよ」とだけ送っておいた。






(次話『メッセージの裏で』)

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