女子だけのパーティに女装して入っている俺、バレたら即追放のはずが皆が誘惑してきている件

大学生

第1話

ダンジョンから這い出てきた魔物が村を襲う。遠慮など知らない彼らはいとも簡単に村の人たちを殺していった。


「助けてくれよぉぉーー」

「子供だけは助けてください……」


僕の周りに阿鼻叫喚の嵐が巻き起こる。泣き叫ぶ人、助けを乞う人、その中で汚く笑う人など。魔物に言葉など通じるわけもないのに。


僕はというとただ一人立ちすくんでいた。


魔物は本来は冒険者がダンジョンから出ないように討伐するし、そもそもダンジョンから魔物が出るようになったのは最近のことらしい。


僕にやさしくしてくれていた人たちが殺されていく。僕は一人彷徨い歩いていた。地面には誰かの血が流れていた。


幸い、魔物には襲われていなかったのだが、僕は最悪の瞬間を目にしてしまうのだ。


「た、たすけ……、ア、アリアン!」


僕の幼馴染かつ、大好きな人のケーラちゃんが襲われていた。目には涙を浮かべ、一歩、また一歩と後退りをしていた。僕と目が合って、小さな声で僕の名前をつぶやいた。


このままではケーラちゃんが……。でも僕が行ったって……。殺されるだけ。その恐怖が僕の足をすくませた。


…でも行かなきゃ。僕が行かなきゃ!


僕は土を強くけりだし、助けに向かったが、タイミングが悪く届かない。魔物が振り回すこん棒がケーラちゃんに当たりそうになるその瞬間に僕は手を伸ばした。


「僕の体に当たれェェェー!」


次の瞬間、巨大な炎が村中に広がった。誰かが放った炎である。彼女を襲おうとしていた魔物はまばゆい光に目をそらした。その隙に僕は彼女を連れて逃げ出した。


あの炎のおかげで助かったが、その炎は村中に広がって村を焼いた。焼き尽くしたのだった。家も家畜も。そして、村人を。


僕は魔物の集団に目をやった。するとそこには目を疑うような光景があった。


「人だ」


僕と目が合ったのと同時にそいつは踵を返して、奥へと引き下がっていった。炎を放ったのはあいつに違いない。魔物をダンジョンから出しているのも、村を焼いたのも。そして、村の人を殺したのも。


「ケーラ、僕は冒険者になるよ。僕は、いや俺は絶対に魔物を許さないよ」


この物語はいつか魔物を全滅させたいが、いろいろな災難に巻き込まれている男の冒険者の物語である。


♣♣

俺の名前はフランクリン・アリアン。この国でも指折りのパーティに属する聖騎士である。つらい過去を持つのだが、それは回想シーンにお任せしたい。まっとうな冒険者ライフを送ろうとしていたのだが、いろいろあったんだ……。


でもそんな俺には隠さないといけないことがある。それは―


『男である』


ということ。こんなことを思っている暇はない。仲間が呼んでいる。行かなきゃ、女の子「アリアンちゃん♡」として……。


♣♣

冒険者の集会所、ギルドは俺たちがした快挙により大盛り上がりだった。祝杯で酔った男の冒険者たちの声が聞こえる。


「すげぇ!また純白鳩ホワイトバードがやったぞ!またひとつのダンジョンを攻略したらしい」

「マジですごいよなぁ、強いし、それに……美しい」

「女の子の四人の誰でもいいからお近付きになりたいぜえ」

「エリアさんのおっぱいに挟まれてぇ!」


……こういうのを聞いていると男ってアホだなって思う。こういう声には女の子は敏感だってことに気づいた方がいい。女装している俺からのアドバイスだ。


案の定、俺の横にいるエリアは女の子として、してはいけないような顔を俺の陰に隠れてしていた。


エリアは俺と一緒に騎士として二枚アタッカーを任されている。腰まで伸びる月の糸のような金髪に碧眼。そしてさっきの冒険者が言っていた胸とか……やばいやばい。俺まで死ぬ。


「男なんてろくな奴いない……。私をエロい目で見てぇ……!なぁ?」


そう言って横にいた帽子を被った身長がちっさめのいわゆるロリっぽい白髪の女の子に話を振る。彼女の名前はメア。


「私なんてえっちな目で見られたことないんですけど……?ねぇ、アリアン?」


自分の胸にそっと手をやって、少し悲しそうな目で俺に話を振る。それは俺を貧乳の一味に入れているということなのか?


俺はちなみに貧乳も好きなので、全然いいと思う。


「僕を仲間に入れないでくれるかな?僕だってエロい目で見られたことあるし」


疑われないように適当に話を合わしておく。俺なんていう一人称を使ったらすぐに男とバレてしまうので、僕に変えている。


「「「えっ!?」」」


何故か、俺の返答に驚くパーティ一行。目くばせをしてあーだこーだ言い合っている。そんな変なことを言ったか?


俺の後に続くようにパーティのヒーラーの茶髪の女の子が言うのだった。


「わ、私はないと思います。いやあるのかもしれないですけど、聞かないようにしてます」

「いやいやぁ……、ミラは私と違って持ってるものがあるんだからさぁ。見られてるって。このパーティの中では清楚枠だし?」

「枠ってなんですかぁ!」


プクッと頬を膨らませて怒っているヒーラーちゃんはミラコスタ。貴族の出で丁寧な口調が特徴的で、目が大きく茶色の美しい色をしている。あと、おっきい。


そんな俺たちのいつもの雑談が終わると、皆がうずうずしだした。


「パアッーと打ち上げでも行こうっ!」

「「「おっー!」」」


そう言って、元気よくミラとエリアが先に歩いていく。今日頑張りすぎて足が上手く動かない俺はゆっくりと向かう。横に並んだロリっ子メアちゃんがつぶやくように俺に言う。


「アリアンはやっぱり胸が大きい方がいいと思う?」

「ぼ、僕は気にしないかなぁ」

「……そ。ほら早くいこ、置いていかれるよ」


そう言ってメアは俺の手をとった。悪戯っぽく笑うメアはとても可愛くて恋に落ちそうになる。

でも疑われるようなことをしてはいけない。


バレたらここに入れなくなるから。


♣♣

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