第52話_作戦開始

夜が深まり、城下町の静けさが一層増す中、

村田と自警団はケイラの家へと向かった。

彼らの足取りは慎重で、しかし目的に向かって確かなものだった。

ケラプおばさんが先頭に立ち、

彼女のがっしりした体躯がまるで彼らを守る盾のように感じられた。


ケラプは冷静に自警団のメンバーへ指示を出した。

「お前たちはここで待機だ..魔人は魔力感知能力が高い..魔力抑制は引き続き切らさないように」

彼女の声は冷静でありながらも、緊迫した状況の重さを感じさせた。


一人、ケイラの家に近づくケラプは、決意のもと自らの腕に小さな傷をつける。

血がゆっくりと滴り落ちると、その匂いが夜風に乗って遠くへと運ばれていく。

この行動は、ケイラを誘い出すための計画の一環だった。


ケラプの血の匂いを感じ取ったのか、家のドアが開いた。

現れたケイラの目が、ケラプの血を認識した瞬間、徐々に赤く変わっていく。

彼女の変化は、魔人としての本能が呼び起こされた証拠だった。


「あら、ケラプさん。こんな時間にどうしたの?」

ケイラの声には、表面上は友好的な笑顔が浮かんでいたが、

その目の変化は彼女の内に秘めた異常な興奮を物語っていた。


「夜分遅くに失礼..やはり魔人か」

ケラプは直接的にケイラの本質を指摘するが、同時に彼女の反応を探っていた。


ケイラは一瞬たじろぐものの、すぐに再び笑顔を浮かべる。

「魔人..あぁ、そういうことね。そのことは誰から聞いたの?」


ケラプは沈黙を保ちながらも、

すでに自分たちの計画が彼女に知られているかもしれないという警戒心を隠し切れなかった。

「少年を担いだ女を目撃した..そんな報告があった」

と敢えて曖昧に答え、村田の名前を出さなかった。


ケイラの目が更に赤く輝く。

「そう....それよりも、あんたの血..すごくイイ!ねぇ、その腕治療してあげるからこっち来てよ..」

彼女の言葉は、表面的な優しさの裏に隠された狂気を含んでいた。


「ありがとう..でも遠慮しておこう..血が欲しいならそっちから来なさい」

ケラプの返答は、挑戦を受け入れる覚悟があることを示していた。


ケイラは微笑んだ。

「随分と自信があるのね..じゃあ行くわよ?」

と言い、一瞬のうちにケラプに近づいた。

その動きはあまりにも速く、背中からマチェーテを素早く取り出して一閃した。


しかし、ケラプの反応はそれ以上に迅速で、

彼女の強力なアッパーがケイラを家の屋根まで吹き飛ばした。

その間に、村田と自警団はケラプからのサインを受け取り、家に入る準備を整えた。

ケラプは一瞬の迷いも見せず、ケイラを追って屋根へと身を投じた。

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