第51話_自警団

村田はイアンから得た情報を手がかりに、

心の準備を整えながら再びケラプおばさんの店の扉を押し開けた。

店内に足を踏み入れると、前回訪れた時と変わらず、

静かで穏やかな空気が流れている。

客はほとんどおらず、ガラガラという状態であった。


「いらっしゃい..おや、この前の..」

ケラプおばさんがその特徴的な低い声で挨拶を投げかける。

その声には、僅かな驚きと認識の明確さが含まれていた。


「お久しぶりです、この前はご馳走様でした。あの、ここに自警団の方がいると聞いたのですが」

村田は少し緊張しながらも、用件を端的に伝えた。


「それは..私のことだね..君はあの白黒君の連れの村田俊だね?」

ケラプおばさんは村田をじっと見つめ、その存在を確認するように言った。


その一言に、村田は少し驚きつつも、ケラプおばさんのがっしりとした体躯と、

その身に纏う強さに改めて気が付き、なるほどと納得した。

彼女が自警団の一員であり、さらにはリーダー格であることが、

その立ち姿からも伝わってきた。


村田はその場で深呼吸を一つし、今回の主目的であるケイラの件について切り出した。


「ふむ..犯人は看護師であり魔人のケイラ・ガイン..同じく魔人の白黒君の血液に対し興味を持っている可能性有..なるほど」

とケラプは静かに言葉を紡いだ。

その声には、情報を整理し、戦略を練っている冷静さが感じられた。


「わかりました..では今日の夜彼女の家にお邪魔するとしましょう..」

とケラプが宣言する。


「ありがとうございます。作戦は何かありますか?」

と村田が尋ねる。

彼の声にはケラプへの信頼と、同時に僅かな不安が混ざり合っていた。


「私も一応魔人だからね..彼女の家の前で出血でもすれば出てくるだろう..引き付けてる隙に他のメンバーが救出する、でいいかね」

とケラプは答えた。

その提案には、危険を顧みず先頭に立とうとする勇気が込められていた。


「引き付けるには十分かと思います。でも、それだとケラプさんが危ないんじゃ..」

と村田が心配を口にすると、彼の眉間には心配のしわが寄せられた。


ケラプは彼を直視して、

「自分で言うのもあれだが、私はそれなりに強い...安心していい」

と力強く言った。

その言葉は、彼女自身の強さと自警団における経験を物語っていた。


「わ、わかりました。あの、今回の作戦に私も参加してもよいでしょうか?」

と村田が躊躇いがちに尋ねると、

ケラプは彼の熱意を認めたように頷き、

「無理はしないように...」

と優しく忠告した。

その交流には、互いの信頼と、共に困難に立ち向かう覚悟が感じられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る