第8話_お気に入りの場所

イファスアの街は、朝の光に包まれていた。

ライトと村田は、石畳が敷かれた道を歩きながら、街の景色を楽しんでいた。

彼らの周りでは、様々な色と形の建物が立ち並び、

その一つ一つが独特の歴史を持っているように見えた。


市場に差し掛かると、彼らは賑やかな声と香りに包まれた。

地元の農夫が丹精込めて育てた新鮮な果物や野菜が並び、その色彩の豊かさに村田は目を奪われた。

ライトはいくつかの果物を手に取り、村田にも試食を勧めた。

初めて口にする果物の甘さと鮮やかさに、村田は驚きと喜びを感じた。


「あそこに見えるのがグレイスの診療所だよ」とライトが指さした。

村田は小さなその建物を見て、新しい生活の一部としてこの場所を受け入れることに安堵感を覚えた。


街の端にある小高い丘に登ると、イファスアの街が一望できた。

そこから見える街の景色はまるで絵画のように美しく、

二人はしばし言葉を失った。

風が彼らの髪を優しく撫で、新しい世界への歓迎のように感じられた。


ライトが輝く目をキラキラと輝かせながら言った。

「ここが僕お気に入りの場所!綺麗でしょ」

彼の声には子供のような無邪気さと喜びが溢れていた。


村田はゆっくりと周囲を見渡し、深い息を吸い込んだ。

「あぁ、一日中いてもいいくらいだな」

と、彼は感慨深げに答え、目を細めて景色の美しさに心を奪われた。


ふと村田がライトに目を向け、興味深げに尋ねた。

「そういえばさ、お前魔法使いなんだろ?」


ライトは得意げに笑みを浮かべ、右手を前に差し出した。

人差し指の先から炎がふわりと現れると、

村田は思わず「おお!」と声を上げ、目を丸くして感嘆した。

彼の心は、未知の力への驚きと魅了でいっぱいだった。


「初めて見たの?」

ライトは首を傾げ、魔法を使えることへのささやかな誇りを声に込めた。


村田は炎をじっと見つめながら答えた。

「外の世界にはこんなのなかったからな」

と村田は答え、彼の瞳には新しい世界への驚きと興味が宿っていた。


ライトの好奇心が再び高まり、

「そうだ、昨日聞けなかったけど、ムラタはどこから来たの?」


村田はしばらく考え込んだ後、

「この大陸の外の..日本っていうところから来たんだ」

と静かに言った。彼の声には遠い故郷への郷愁が漂っていた。


ライトの目がさらに大きくなり、

「大陸の外!?すごいね!ニホンってどんなところ?」

と質問が飛んできた。


「そうだな、日本はな..」

村田は日本の魅力をライトに伝えた。


「スシ食べてみたい!」

お寿司の話に物凄く食いついた。


「ねぇムラタ、もしニホンに行ったら僕にスシを食べさせてよ!」

とライトは村田の腕を軽く引っ張りながら懇願した。

彼の瞳は期待に輝き、純粋な願いが込められていた。


村田はライトの熱意に心を動かされ、

「いいぞ、約束する」

と優しく微笑んだ。


「絶対だよ!」

とライトは力強く言い、村田との約束を心に刻んだ。

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