第4話_家庭訪問
勢いよく開かれた木製の扉は、
その経年による唸りを響かせながらゆっくりと開いた。
扉の向こうに広がるのは、家族の温もりと歴史が感じられる、暖かな空間だった。
扉からみて右手前に2階の吹き抜けに続く木造の階段があり、
中央には木製の長机一つと丸椅子が4つ配置されていた。
机の上には赤を基調としたタータンチェックのマット、ピンクのゼラニウムが生けられた花瓶が置いてあり、家庭の温かさを一層強調していた。
そして左奥に位置するキッチンの前で一人の男性がそそくさと料理をしている姿があった。
彼の手際は良く、料理に対する愛情が感じられた。
その男性はスキンヘッドで、その頭部がキッチンの照明に反射していた。
黒ズボン、トップスには翠色のシャツを着用していた。
「ただいまー!」
ライトの声は明るく、活発だった。
男性はライトの声に反応してゆっくりとこちらに向き、笑顔で迎えた。
「おかえりライト、おや、隣の方は?」
男性は興味深げに村田を見つめた。
村田は少し緊張しながらも、礼儀正しく自己紹介をした。
「始めまして、村田俊と申します。実は近くの海岸で倒れていたところを彼に助けてもらいまして」
男性は村田の丁寧な対応に軽く頷き、優しく微笑んだ。
続く男性の紹介の際、ライトが口を開いた。
「この人はグレイス、見ての通り頭ツルツルだよ!」
突然の発言に、グレイスの手刀がライトの脳天を打ち抜いた。
叫び声一つ上げる暇なくライトは倒れ伏した。
村田は突然の出来事に驚き、
内心ではこの人を怒らせてはいけないと直感的に理解した。
「すみません..この子良い意味と悪い意味でとても正直なんですよ」
グレイスは苦笑いを浮かべながら謝った。
村田は少し困惑しながらも
「そ、そうなんですね、ハハハ..」と流すしかなかった。
「ところで村田さん、うちのライトが何かご迷惑をかけなかったでしょうか?」
グレイスの問いに、村田は心の中で葛藤しながらも、礼儀正しく返答した。
「あ、いえ、非常に丁寧に介抱してもらいましたよ」
海岸から家までダッシュしたことは伝えたら色々面倒くさいことになりそうな予感がしたため、若干棒読み気味で嘘をついた。
「よかったです。ライト、よく頑張りましたね」
グレイスは先ほどとは打って変わって優しくライトの頭をさすり、ライトは目を覚ました。
「うぅん、なんか頭痛いけどありがとう!」
彼はさっきのことは覚えていないようだが、褒められて嬉しそうに答えた。
「さて村田さん、とりあえず今日のところはぜひ泊まっていってください」
グレイスの声には歓迎の意が込められており、村田は心から感謝した。
村田は新しい家族のような安心感を感じながら、
これから始まる新しい生活への期待を胸に深く頷いた。
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