第40話 ポイズンモスの被害
「それで、今はどんな状況なんだ?」
冒険者ギルドから来たロンさんをエルドさんの家に招いて、私たちはロンさんから今何が起きているのかを聞くことになった。
ロンさんはここまで来るときに流した汗を袖で拭いた後、少しうつむき気味に口を開いた。
「ポイズンモスの討伐にランクの強い冒険者たちに向かってもらっています。先行部隊は毒をもろに浴びてしまって、今は療養中です」
どうやら、思った以上に深刻な事態になっているみたいだった。
エルドさんはロンさんの言葉を受けて、少し考えた後に独り言のように言葉を呟いた。
「シニティーの街も被害状況は酷いのか?」
「はい。なんでも解毒をしても、その後中々体調が回復しないらしいんです」
その後遺症のような衰弱する状態を聞かされて、私とエルドさんは目を合わせた。直近で聞いた症状に凄い似ている。
まさか、エリーザ伯爵以外にもそんな状態になっている人たちがいるなんて。
「ハリガネワームが寄生していれば、その分だけ魔力が跳ね上がるからな。当然毒の威力も跳ね上がる。なるほど、エリーザ伯爵が衰弱していた理由はそれだったのか」
エルドさんはようやく合点がいったといった感じで頷いていた。
そういえば、ポイズンモスの毒にやられたと聞いた時、エルドさんはポイズンモスの毒でここまでなるのかと疑問を口にしていた。
どうやら、その理由は寄生虫が原因だったらしい。
それも通常の魔物をかなり強化するタイプの魔物。
そんな厄介な寄生虫がこの世界にはいるのだと思うと、中々恐ろしい。
「我々も初めはハリガネワームが寄生していると思わなかったので、魔力の強いポイズンモスということで、我がギルドも討伐隊を組んだのです。しかし、太刀打ちできませんでした。負傷して戻ってきたある冒険者に話を聞くと、どうもハリガネワームに寄生されているようなのですが、我々ではどうすることもできない状態でして」
どうやら、冒険者ギルドで討伐隊を組んでも倒しきれない相手らしい。
それほどまで強化されてしまった魔物を相手にするとなると、その魔物を相手にすることができる冒険者というのも限られてくる。
ん? そういえば、なんでロンさんは討伐隊を組んでも倒せなかった相手と戦うのに、エルドさんを誘いに来たのだろうか?
無作為に冒険者を送り込んでもダメだということは、先行部隊が帰って来た時に分かりそうなものなのだけれど。
「そこで、エルドさん。S級冒険者のあなたに力を貸していただきたいんです!」
「…………S級?」
私は必死に頼み込んでいるロンさんの姿を見て、頭にはてなマークを浮かべていた。
S級って、前にエルドさんが言っていた冒険者ランクの一番上のことだ。
頭を下げている先にいるのは私とエルドさんだけで、私は冒険者ギルドにも登録していない。
ということは、つまりどういうことか。
……つまり、そういうことなのだろう。
「え、エルドさんってS級冒険者だったんですか?!」
「ん? ああ、まぁ、そうだけど」
エルドさんは驚きのあまり立ち上がっている私に対して、何でもないことのように私の言葉を肯定したのだった。
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