悪いぞ四天王のミィシャちゃん(仮)

ポンコツ人形

第1話四天王ミィシャ

わたしの名前はミィシャ。

暗黒魔界魔王城で魔王様を支える四天王をしている。

四天王にはそれぞれ、力担当、魔術担当、瞬発担当、癒し担当と分かれていて、わたしは魔術担当の四天王である。

主な仕事と言えば魔術を使用した魔王城の周辺の索敵や魔術の開発、魔術道具の作成などをしている。

と言っても大体は各部門の部下が実施しており、わたしは報告内容の精査とちょっとしたアイディアの提案くらいで普段は四天王部屋でふんぞり返ってる事しかしていない。

そして何より…「四天王という重役がわたしに務まるわけないじゃーん」


机に突っ伏しながらミィシャは頭を抱えた。


「突然自己紹介し始めたかと思ったらダメですよ。四天王は終身職で暗黒民から支持された人しかなれない名誉ある職業なんですから」


ミィシャの後ろに控えていた女性が宥めるように言う。


「そういうお前だって、なんか説明口調だぞ、四天王補佐のキリサキよ。それにわたしは指示するよりは考察して作成するのが好きなんだ!部下のみんなから出てくる案に何度憤りを感じたか!?」

「それはミィシャ様が部下から上がってくる常識を覆す画期的な案に自分も混ぜてもらおうとするからですよ。それに手を出さなくても口は挟むじゃないですか、提案を受けた部下が予算度外視の企画に仕上げた時は魔王様から怒号が飛んできて私は夜しか寝れませんでした」

「アレは怖かったな。まさか魔王城を金ピカ無敵城にする事をあんなに怒ってくるとは思わなかった」


2人は以前経験した事を感慨深く思い出しながら

談笑していた。


「ただずっとここに居るのは生産性が無いのも事実!なのでわたしは次のステージに行くわ!」

「今度は何を作られたのですか?この前の自身を小型化して擬似的な街を作る計画は面白かったですが」

「アレは良かった!疑似人格を与えた人間達と街を一から作るのは予想以上に楽しかったな!まぁ、最後は魔王様に見つかって没収されたが...」

「街を作るだけじゃなく、疑似戦闘やシュミレーションに使える所を見抜かれたのが痛かったですね」

「だなぁ、はしゃぎ過ぎて魔王玉を放ってしまったのは失敗だった。ただそれで終わらせないのがわたしの雑学!今回は思考を凝らして、こんな物を用意してみた」


おもむろにミィシャは立ち上がり、部屋の隅にあった布の被っていた物を披露する。


「これは...人形ですか?」

「そうだ、これは様々な生き物に変化するように調整した人形だ。そしてこの人形に意識を集中すると...」


ミィシャと人形が一瞬光るとミィシャの姿が無くなり、また人形が光るとミィシャが現れた。


「この様に人形の中に入る事が出来るのだ!まぁ人形自身にそれほど耐久力はないが、人形が壊れた場合は人形に入った時の場所へ戻される事になるし、魔力を込める事である程度の強化も可能だ!」

「さすがミィシャ様、これで自分だとバレずに出かけられる訳ですね。しかし報告等で部下や魔王様がいらした時に不在がバレてしまうのでは?」

「そこは抜かりない!前の疑似人格の要領でわたしとお前の疑似人格を作成してある。しかも業務専用にカスタマイズしてあるから、本来のわたし達の様な業務放棄もしない」

「あ、そこは自覚していたのですね」

「...コホン!とにかく!!これで後顧の憂いなく出かけられるという訳だ!さて、まずは何から行こうか」

「お供致します」


こうして四天王ミィシャの冒険の幕が上がる...前にこの世界についてもざっくり説明しよう。


ここは暗黒魔界、悪魔や魔族と呼ばれる種族が暮らす隔離された世界。

なんでも初代魔王様を封印する為に勇者やその仲間たちによって作られ、悪魔や魔族たちと一緒に封印という形でこの世界に飛ばされてきた。

飛ばされた当初は何も無い世界であった為、初代魔王は自身の強大な力で世界を創造した。

その後、封印された種族はそれぞれの領土を決め、繁栄を始めた。

ある者は農業を営み、またある者は建築や化学の進歩を目指した。

魔王はその地を収め、四天王は魔王を支える為に奮闘する。

そんな世界の四天王の一人の物語である。

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