004 森の探索2 Ⅰ
スキル目的での狩りの最中、森の中で高レベルゴブリン十数匹による襲撃を受けた俺は口角を釣り上げ、スキルを
「マイセット『戦闘』」
ジョブ『賞金稼ぎ』と『ハッカー』の複合スキルである『魔石ハック』を
冒険者証にしてステータスデバイスでもあるそれに追加された機能は『スキルマイセット』。
(こいつは前世の『職業英雄』で『賞金稼ぎ』『ハッカー』編成が流行ったあとに公式がアップデートで付け加えた機能の一つだったが、現実化するとこういう形になるんだな)
こいつは簡単に言うなら大量に存在するモンスタースキルを場面場面で効率良く使えるようにするだけの神機能だ。
なお『魔石ハック』を持たない他の編成では意味のない機能でもあるがゆえに『魔石ハック』をアンロックしないと表示すらされないようになっている。
――『取得スキル装備』内のスキルスロットに『スキルセット1【戦闘】』をセットします。
――『熔解(幼)』をセット。
――『身体能力強化Ⅰ』をセット。
――『体術Ⅰ』をセット。
――『弓術Ⅰ』をセット。
ステータスデバイスに表示される俺のスキル一覧が設定したものに変更される。
スキルの切り替え。通常ありえないそれによって肉体構造が即座に変貌する。
「ふッ――!!」
戦闘態勢に移行した俺は、俺に殺到してくるゴブリンどもに向かって駆け出すと腕を大きく振り上げ、『熔解(幼)』スキルを発動。
ゴブリンの群れに向かって振りかぶった手刀を覆うように、超強力な火属性の溶解液が発生――「
瞬時に大きく腕を一閃。
振るった腕の軌道に沿って
――ジュッ、とゴブリンたちの顔に飛沫の形に穴が空いた。
「ギイィイイイイイイイイエエエエエエエエエエエ!!!!????」
森の中にゴブリンどもの悲鳴が響き渡り、闇の加護と瘴気によって穢れているゴブリンの血が撒き散らされる。
腐れた臭いに顔をしかめるものの、内心では確かな勝利の手応えに喜びが湧いてくる。
(やはり、『熔解』スキルがあればこのレベル帯でも余裕か)
俺がやったことは簡単なことだ。
強力でないとはいえ、『賞金稼ぎ』と『ハッカー』二つの職業補正で強化された肉体を『身体能力強化Ⅰ』で更に強化したあとは『体術Ⅰ』と『弓術Ⅰ』の導きに従い、腕を超効率良く振るい、手刀に纏わせた溶解液を突っ込んできたゴブリンの群れに向かって飛ばしただけのことである。
複数のスキルを使って一つの動作を行うことで最終ダメージを増大させるテクニックはコンボと呼ばれ、『職業英雄』で発生するあらゆる活動の基本だった。
息を吐き、そうしてから戦果の確認を行う。
目の前の地面には体中を穴だらけにしたゴブリンが死んでいたり、激痛にうめきながら転がっていた。
控えめに言っても惨劇という奴だ。
とはいえ俺の心中に広がるのは目前の光景とは反対の安堵である。
森の中層は現在の幼馴染たちのレベルであれば『勇者』や『剣聖』といった上位職でさえもなぶり殺しにされる危険地域だ。
そこで戦える以上、今後の俺は――いや、手早く戦闘を終わらせるべきだな。
「残りは、三匹、と」
俺が一撃で生み出した死体の数は10を超えていた。
加えて遭遇時にゴブリンたちの真ん中でリーダー然としてニヤニヤと嗤っていた個体は先頭に立って突っ込んできたために、すでに殺害済みである。
残るは他の個体が盾となって、猛火の水滴を防げたゴブリンが三匹。
俺は指をピンピン、とはねさせて地面に熔解液を飛ばし、瀕死ながらも高めのHPのおかげで生き残れていたゴブリン数匹の額に穴を開けて止めを刺しつつ、未だに何が起こっているのか何も理解していないゴブリンたちに向け、口角を釣り上げ、もう一度嗤ってみせた。
「悪いな、雑で。急いでるもんでさ」
そうして逃げ出そうとするゴブリンたちに向かってダッシュで接近し、熔解液を纏わせた手刀を振り下ろした。
戦闘の結果は語るまでもなく圧勝。
それは戦闘後の俺の手の中にある、十数個の魔石が物語っていた。
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