魔晶石と魔核⑥
――ブゴァッ
と断末魔の叫びとともに最後のオルコが沈んだ。
「思ったより手こずっちゃたねぇ」剣に付着した血を払い、フーと息を吐いたマルティナがそんな感想を述べる。
「肌の色が違うし、今までの奴とは違うのかもな」
確かに普段目にするオルコは灰色の肌をしているが、今地面に倒れている二匹の色は〝褐色〟だった。この辺りの魔物のランクを鑑みるに、上位種というのは考えにくい。もしかするとマナ汚染による変異種だったのかもしれない。
「ま、魔核を鑑定してもらえば何か分かるかもしれねぇ」
「そうだねぇ」と頷くマルティナと手分けして
「お、あったあった」と喜色満面の笑みを浮かべるベッキー。その手には灰色をした拳大の球体が握られていた。
これが先にも軽く触れた
「こっちもあったよ〜」とこちらも満面の笑みを浮かべるマルティナ。
「そんじゃ後処理頼むわ」
『後処理』とは人間や動物同様に、マナ汚染によるゾンビ化を防ぐことである。
「はいよ〜」軽い返事で長剣を振るい、二体のオルコの首を撥ねる。「はい、完了〜」
この様に対象の首を撥ねておくことでゾンビ化は阻止できる。いつの頃だったか、新米冒険者がこれを忘れていたがために魔物や動物のゾンビが大量発生するという事件が起こり、各国で大問題になったことがあったらしい。それからというもの、『殺した相手の首は必ず撥ねろ。むしろ首を撥ねて殺せ』という教訓を師匠となった人物が弟子に最初に教えるのが常となったようだ。
「さて、どっちに進むかな?」オルコが向かってきた正面か、もしくは左か。
一旦小休止を入れた二人は、再び入ってきた穴があった場所の周辺を隈なく調べてみたが結果は一緒で、ひとまずマッピングしながら先に進もうということになった。
こういう時人数の多いパーティーならば二手に分かれるといった手も使えるのだが、残念ながら――というか理由があって二人で行動しているためにその手は使えない。ベッキーは罠を見抜く力はずば抜けているが、マルティナのようには戦えない。マルティナもまた、戦闘では無類の強さを誇っているが、罠を看破する能力はさっぱりである。
二人で一人。実に双子らしい組み合わせだった。
「とりあえず左に行ってみるか」
こうして二人は迷宮からの脱出兼、お宝探しを初めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます