女神を自称する女②

 そしてその翌朝。


「――ふに、じゃねぇ! って、うわっ――ぐはっ! ああああああああああああっ」


 僕は驚きのあまり、ベッドから転がり落ち、後頭部を強かに床へ打ち付けのたうち回ることになった。


 何があったのかって? では時間を遡ってみよう――といってもほんの数分前の話なんだが。


 それはとても、モチ柔な朝だった。


……いや、自分で言ってて何を言っているのか訳わからんが、第一印象は確かにそうだった。


 掌にわずかに収まりきらない大きさで、その感触は……そう、まるでつきたての餅を手に取ったときような感じ。


 指がこう、自然と動いてしまうような抗えない柔らかさ。


「アンアン」


――ん? 何だ今の棒読みな台詞は。


 嗚呼、しかしなんて心地よい柔らかさなんだろう。ついつい指が動いてしまう。


「アンアン」


 だからいったい何なんだ? こっちは夢見心地な柔らかさを堪能しているんだから変なノイズを挟まないでくれ。


――(指を)ふにふに


「アンアン」


――ふにふにふに


「アンアンアン」


――ふに


「アン」


「…………」


 いや、さすがにここまでくれば、寝惚けまくった頭でもことの異常さを理解し始めるというもので……。


 恐る恐る目を開く「――!?」目が合った。


 昨晩はいつも通り一人でベッドに入ったはずなのに、今目の前には素敵な美乳――いや、美女が僕同様ベッドに横になっていた。


 その髪は烏の濡羽色。朱を入れたようなその唇はどこか妖艶で、うっすらと笑みを浮かべている。


 そして自分の左腕を目で追えば、その素晴らしいおっぱいの片方を鷲掴みにしていた。


――ふに


「アン」


「――ふに、じゃねぇ! って、うわっ――ぐはっ! ああああああああああああっ」


で、現在に至る。


 その謎の女は何がそんなにおかしいのか、こっちが痛みでエビ反ったり、のたうち回ったりしている間も終始クスクスと笑っていやがった。


「これが『寝惚けて女子おなごの胸を揉んで、驚いて転げ落ちるまでがワンセット』というお約束じゃな」


「んなお約束があってたまるかっ」

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