最強の軍人

大和市オノゴロ区。2025年に日本に小林首相が第102代内閣総理大臣になると再生可能エネルギーや大和市の高度経済発展に伴い、独立都市となった人口200万人超の都市。

この都市はベータ144との戦争により、2028年に国家破綻すると、アメリカの同盟国である日本が接収し、自国の領地として都市を開発した。


そのため、都市は日本ドリームだという噂が流れており、一部の若者からは、大国の救世主とも言われ、否定的な人は乗っ取り国家と呼ばれた。

現在、ノヴァシティは日本の経済の中心として繁栄し、様々な大企業や多国籍企業も進出している。

そんな中、ある殺人事件により大規模な犯人調査が開始される。殺人事件だから数日で逮捕となるが、調査官でも難航する犯人の素性。

そんな中ユキと空は犯人の動機と政府の関連を調査していた。空はパソコンでネット検索すると、ノヴァシティの新宿市に関する事件が2つあった。

1つは人が突如行方不明になった事件ともう1つは連続殺人事件の事件についてだ。そこで空はユキに聞く。

「ユキ、オノゴロ区の事件は知ってる?」

急に質問される空にユキは戸惑いながら答える。

「いや、知りませんよ。知ってるんですか?」

「オノゴロ区って日本の主要都市の一つじゃん。ニュースで出てたんだけど、実はこの都市には隠された秘密があるんだよ」

空が話すとユキは興味深そうに聞く。そして空は話を続ける。

「まず、オノゴロ区に関しては多くの噂がある。この都市には多数の都市伝説があるよな? まず、オノゴロには実は地下都市があるとか、大昔に謎の宗教団体が創立したとか、いろんな噂があるんだ。その中でも一番有名なのは人が突然消えた事件と連続殺人事件だね」

空の言葉にユキは冷めたようで興味を無くした。

「単なる都市伝説ですね。人が突然消えるなんてあり得ないですよ。あと殺人事件は日常茶飯事ですし」

ユキはため息をついて言う。空もユキの意見に同意する。

二人の思考が合わず、空はユキに別の話をする。

「そうだよね。でもこの都市には何か秘密があるのは間違いないよ」

空の言葉にユキは黙り込む。

話に興味なくはないけど空と居ると空気が重くなるのでユキは一人で朝食を作る。

冷蔵庫には焼きそばとキャベツ半分しかなく、仕方なくこの材料で料理するが、目が見えなく、キャベツを一回一回切るのに包丁の位置を調整していたら、キレ始める。

「キャベツが邪魔で切りにくいです!」

ユキは叫ぶ。誰かに手伝いたいが、空だけは絶対に嫌だ。

しかし、このまま放置すればキャベツが切り終わるのは何時になるかわからない。

空はユキに、「手伝っていい?」と聞くがユキは断る。空も野菜を切るのを手伝うと言い始める。ユキは嫌がっているが、聞く耳もなく空は焼きそばの袋を開けた。すると包丁が止まって下を見続けた。

「……何してるのですか?」

「え?いや一人じゃあ危ないかなって」

空は苦笑いしてユキに言う瞬間、ユキは空に体を向くと包丁を向けた。空が驚いて後ろに下がった。

「お、おい!?何してんだ!?危ないぞ!」

空はユキに怒鳴るが包丁を空に突きつけて睨みつける。空は怖くて声が出ない。

「邪魔しないでください! 料理中です! 出てってください!」

「え、いや、ここ俺ん家だし」

「いいから!出てってください!」

ユキは空の足を踏んづけて外へ追い出そうとする。空は痛みで我慢できないのでユキに言う。

「わかった!わかったよ!出ていくよ!」

空は慌てて外へ出た。空は心臓の鼓動が止まらず、汗が止まらない。

あんな恐ろしい光景は見たことはなかった。ユキが怒って自分に包丁を向けられている時、空は心の底から震え上がったと確信した。

自分は死ぬのだと瞬間的に思ったが、ユキは殺す気は全くなかったと思うが、急に包丁で切りかかられると人間は恐怖以外に何も考えられなくなることを初めて知った。

空は深呼吸をして落ち着くと一人で散歩しに行った。



料理してる間一人になると落ち着いた気分になったが、頭に巡る嫌な記憶を消すことはできなかった。

ユキはずっと怒りと焦りが同時に湧き上がって、落ち着きを取り戻すことができない。

しかし、また怒りに任せてもいけないと自分に言い聞かせる。

手は震えているが、目は確かに焼きそばの麺を見つめ、箸が上手く進まない。

野菜を切るのに包丁の位置を調整しないといけないのでいちいち位置を調整することに手こずる。

「落ち着いて、言うこと聞いて」

ユキは自分に言うと、麺を切り始めた。

麺を全部切り終えると、次に具の青ねぎを切るために包丁の位置を調整する。

その時、また手が震え出した。

その時、つい包丁を滑らして指先を軽く切りつけてしまった。

血が少し出てくるが、ユキは気にしなかった。

ユキの頭の中には今この焼きそばを作るしかないという責任感と、一刻も早く完成させないといけないという焦りしかなかった。

その後も野菜を切っていくが、今度は指を切ってしまった。

さっきの工程よりも段々とミスが増えていき、血も出始める。

その時、ユキは焦りと痛みで混乱しそうになった。料理は一時中断し、応急処置をすることにした。

ティッシュペーパーを何枚も取り出し、指を巻いて絆創膏を貼っていく。

ユキはその絆創膏を見てホッとする。応急処置を終えると、再び調理に戻るが、足元の感触に気付くと切った野菜はいつの間にか全部床に散らばっていた。

これは由々しき事態だ。ユキは悔しい表情をして野菜をかき集め、綺麗に掃除しようとするその時、後ろから気配を感じた。

包丁を握りしめ、後ろから突き刺そうとしたその瞬間、右腕を捕まれ、床に倒れる。

全く何が起きてるのかさっぱりわからなかった。でも弾力のある手の皮膚を予測すると10歳前後の少女のものだとわかった。でも誰か分からなかった。ユキが驚いていると、耳元で声が聞こえた。

「君が輪上ユキね」

その時、ユキは背筋が凍り付いた。力が強すぎて抵抗もできなく、このままでは殺されると本能的に感じた。「き、君は誰?」とユキが聞くとその少女は手を離した。

「レオナ・ローレンス。国家公務員だ」

レオナは冷静に答える。

その少女は前に香りと気配を感じが似ている。ユキはそのまま呆然とするしかなかった。

レオナが再び手を出した瞬間、ユキは抵抗しようとするが、身体が動かない。

「異様な人だったがいざ戦闘では別に大した強い能力ではないみたいね。君の記憶や過去も調べて分かった。君はまだ病弱のまま化け物にされたのね。それでも私は容赦はしない」

ユキは震える。その少女の目つきが恐ろしかった。

ユキは再び質問する。

「何で知ってんの?」

すると少女は少しの間を空いてフッと微笑すると口を開いた。

「全てを知る人だよ」

あまりの恐怖で唖然とした。ユキは何も言えず黙り込むしかなかった。

レオナはユキの髪の毛を持ち上げると顔を近付けた。

「神薙空は何処だ?答えろ」ユキは思った。

どうやって生き延びようとするかを必死で考えた。

「輪上ユキ。私は君の敵ではないんだ。君と同じ目的で一緒に協力しようと思ってる」

レオナの優しい言葉にユキは安堵すると肩の力を抜いた。

「私たちと協力ってどういう?」

ユキは少し落ち着いた様子をしている。

レオナはユキが冷静になったと感じたら再び警戒した。レオナはユキの顔色を窺った。ユキは心配そうな顔つきをしている。

「まぁ、少しの調査だ。神薙空は何処にいるか、というのは私も知りたいことだよ。でも、君が思っているように彼はただの人間ではないんだ。彼は神の力を持つ存在なんだ。だから、彼を見つけるのは簡単なことではない」

レオナはユキに説明した。


「神の力?何を言ってるの?神薙空はそんなことしないよ? 普通の大学生だったはずよ。彼は何故神の力を持つようになったの?」

ユキは驚いてレオナに尋ねた。


「それは私も詳しくは分からないけど、彼はある日突然姿を現れたんだ。その後、世界中で奇妙な現象が起こり始めた。空が赤く染まったり、地震が頻発したり、怪物が現れたり。それらのことは全て神薙空が関係しているという噂が広まったんだ。彼は神の力を使って世界を変えようとしているのかもしれない」

レオナは深刻な表情で言った。


「そんな…神薙空はそんなことをする人じゃない。彼は優しくて、厳しいけど正義感が強くて、友達思いの人だった。彼は何故そんなことをするの?」

ユキは涙ぐんでレオナに訴えた。


「私は君の気持ちが分かるよ。でももし、この世界が神薙空の手によって支配されたら、君はどうする?君は神薙空に従うの?それとも反抗するの?」

レオナはユキに問いかけた。



「私は…私は…」

ユキは答えに詰まった。彼女は神薙空に対してまだ愛情を持っていたが、彼が世界を破滅に導くとしたら、彼女はそれに加担できなかった。

彼女は自分の心の中で葛藤した。


「君は決断しなければならない。私は君を助けたいんだ。私は神薙空を止めるために戦っている。私は国家公務員として、世界の平和と秩序を守るために、彼に立ち向かうのだ。君も私と一緒に来てくれないか?」

レオナはユキに誘った。


「私は…私は…」

ユキは迷った。彼女はレオナの言葉にも一理あると思ったが、彼女は神薙空を裏切ることができるだろうか。

彼女は神薙空に対してまだ信頼を持っていた。彼女はレオナの目を見た。レオナは真剣な表情でユキを見つめていた。


「君はどうするの?」

レオナは再びユキに尋ねた。


すると玄関を開く音がして、ユキは空が帰ってきたことに心の中で喜んだ。

彼女は空に抱きついて、涙を流した。彼女は空に感謝した。

「ありがとう。助けてくれてありがとう。私はもう死ぬと思った」



空はユキの様子に不審に思った。彼はユキを優しくはなした。彼はユキの顔を見て、心配した。

「どうしたの?どうして泣いてるの?何かあったの?」


ユキは空の質問に答えられなかった。彼女は空の目を見て、困った。

「いや、なんでもない。ただ、空が帰ってきてくれて嬉しかっただけ」


空はユキの言葉に納得できなかった。彼はユキの嘘を見抜いた。

「嘘だ、何か隠してるだろ。教えてくれよ。俺は君を信じてるんだ」

レオナは空とユキの会話に割り込んだ。彼女は空の前でいい人表情をした。

「神薙空、ユキちゃんは大丈夫ですよ。彼女はちょっと疲れてるだけです。私は彼女の友達で、彼女を慰めてあげてました」

空はレオナの言葉に疑いを持った。彼はレオナの顔を見て、警戒した。

「あれ?さっきの子だよな?何でまた俺ん家に?」

レオナは空の質問に答えた。彼女は空の疑いを和らげようとした。

「私はレオナです。ユキちゃんとは学校で知り合いました。私はユキちゃんのクラスメイトですよ」

ユキを抱き締めながら笑顔になるレオナだった。

しかし、ユキは何故か過呼吸になりなって手を震えていた。

レオナの笑顔が空を欺く中、ユキは恐怖に震え、拳銃の冷たさを感じた。

「それよりユキ、何が起きているんだ?説明してくれないか?」と空が叫ぶ中、ユキは拳銃を背中に突かれてることに、声を詰まらせる。

「空さん。ユキちゃんは少し人見知りだから、びっくりするとすぐに動揺してしまうんですが、大丈夫。私たちはただ楽しくおしゃべりしていただけで、何も問題はありませんよ」

レオナは空に微笑みかけながら言った。


空は依然として疑念を抱きながらも、ユキの不安を感じ取りながら彼女を慰めようとした。

「ユキ、俺は優しいから大丈夫だよ」


ユキは必死で笑顔を作り出し、「そうだよ、空。何でもないの……レオナちゃんとは友達なんだ」

と言ったが、彼女の目には深い不安が宿っていた。


その瞬間、レオナは一瞬だけ銃口の圧力を強め、ユキに黙っているように示唆した。

ユキは懸命に笑顔を作り、空に対して平静を装った。しかし、空は微妙な空気を感じ取りながらも、信じることを選んだ。

「分かった、ユキ。君が安全ならいいんだ。でも、何かあったら言ってくれ。何でも協力するから」


ユキは空の言葉に胸を打たれながらも、レオナの脅威に対する恐れから言い出せず、微笑を返した。

レオナは表向きには友好的な態度を装いながらも、裏では狂気的な計画を進めているようだ。


「おっ、ユキ。一人で焼きそば料理してたんだ。頑張ってるね。上達したらこれから毎日作ってくれたら嬉しいなぁ」と、両手に腰を当てながら空が明るい雰囲気で話しかけてきた。

ユキは一瞬の安堵を感じ、笑顔で、「そうだね、空さん。それなら楽しみにしてるよ」と答えた。

しかし、彼女の心の中ではレオナの脅威が依然として重くのしかかっていた。

「あとは俺が作るからそこのテーブルで座って待っててくれるか?」と、空が優しく言う。

ユキは微笑みながら頷き、テーブルに座った。


レオナは一瞬だけ冷笑を浮かべ、ユキの笑顔を見つめた。その後、彼女もテーブルに座り、表向きには穏やかな雰囲気を装いながら、二人は待機すると肩を叩かれ、ユキは振り向くと急に首を締められ、ユキは絶望の表情を浮かべながら喋る。

「レオナ……さん?何で……?」

レオナは冷静な表情で答えた。

「ごめんなさい、ユキちゃん。今さっき空に助けを求めた発言をしたから、これが君の運命だよ? 自分の本能が動き出したんでしょ?」

レオナの声が冷たく、ユキは絶望に沈んでいく中、涙を流しながらユキは必死に訴える。 


「ごめんなさい……ごめんなさい……何でもしますから助けてください……」

ユキの懇願が絶え間なく続きながら、レオナは冷酷な笑みを浮かべたまま、彼女の絶望を冷徹に受け入れていく。

その瞬間、空の足音を聞いたレオナはすぐ手を離し、そして、空が台所から戻ってくると同時に、レオナは笑顔を作り直し、ユキの様子には何もなかったかのように振る舞った。

「お待たせ。焼きそば、出来たぞ。今日は大盛りだ!」と、空は明るく声をかけてきた。


ユキは涙を拭いながら微笑みを返し、「ありがとう、空さん。楽しみにしてたんだ」と言った。

すると、空は喜んで笑顔で席に戻り、三人は楽しい食事のひと時を過ごすことになった。

しかし、ユキの心は依然として恐怖に囚われ、レオナの冷酷な計画が胸に重く残っていた。

夜が更け、食事も終わり、空とユキは一緒にテレビを見ながらリビングでくつろいでいました。空はユキの不安そうな表情に気づき、「ユキ、本当に大丈夫なのか?」と優しく尋ねた。

ユキは微笑みながら、「うん、大丈夫だよ。ありがとう、空。あなたがいてくれるから安心してる」と答えたが、彼女の目にはまだ不安が残っていた。

その時、突然ユキの後ろから抱きついたレオナが微笑みながら会話する。

「そろそろ就寝時間なのでユキさんと一緒に寝ることにしましょうね。おやすみなさい、神薙空」

レオナの言葉に違和感を感じながらも、ユキは空に微笑んで一緒に寝室に向かった。


しかし、ユキが寝室に入ると、レオナは冷徹な表情に変わり、扉を閉めながら、「さて、どう空を暗殺するか考えなおしましょうか?」と冷笑しながら言った。

ユキは寝室の中で悲鳴を抑え、恐怖に震えながらレオナの言葉を耳にした。

緊迫した空気が寝室に充満し、ユキは絶望感に包まれた。

「大丈夫、すぐには殺しはしないよ。君がどれだけ苦しむか、どれだけ絶望に沈むかを楽しむために。それがパパから命じられた仕事だからね」

レオナは冷酷な笑みを浮かべ、ユキの悲鳴が寝室に響き渡る中、彼女の計画が次第に明らかになっていく。

ユキは絶望の中で必死に耐えようとするが、レオナの冷酷な計画に巻き込まれ、その闇に引きずり込まれていく。

夜の静けさが、彼女の叫び声を包み込んでいく。



夜が明けると空は朝日に照らされ、寝室の扉を開けようとするとレオナがユキに抱きつきながら寝ている光景が広がった。

「おはよう、空さん。ユキちゃんと一緒に寝るのって気持ちいいですよね」

レオナは笑顔で言いながら、空の心を状況と疑念で満たしていく。

「ほ、ほう、そういう関係になっていたのか?」と驚きを隠せない空に対し、レオナは狡猾な笑みを浮かべながら、「ユキちゃんは安心して寝てくれたみたい。あなたの優しさに感謝してるわ」と言った。

「な、なるほどぉ。深い関係が築かれていたのか…」と空は戸惑いながらも、レオナの言葉に何となく納得しようとする。

すると急にレオナが空に抱きつき、「空さん、私もあなたに心を許せるようになりました。ユキちゃんの傍らで、あなたにも癒されています。」と言いながら、レオナは空の胸に手を滑らせていく。

空は戸惑いと疑念に包まれつつも、その言葉に一瞬心が揺れる。


ドアの方から入るよーっとレナの声が聞こえ、側から離れるがレオナの力が強すぎてユキがレオナから解放されず、空は状況に戸惑りつつも、レオナの言葉に惑わされていた。

ドアが開き、レナが元気な声で、「おはよう神薙くん!って何してるの?」と入ってきた瞬間、空はユキの助けを求める視線を感じた。

「こんにちは、レナさん。空さんとの関係が進展していたみたいで、朝からびっくりですね」

「勝手に話を進めるな!?」

レオナは依然として笑顔で言いながら、空を引き離し、レオナから離れるように促した。

レナは引き摺った表情をしながら空を見つめる。

「違う! 俺はそんな関係じゃない!てかそんな目で見るな!?」と、空は一瞬の間を置いて否定した。

レナは真剣な表情で、「レオナさん、何かあるなら教えてくれないかな。私たちはあなたたちの安全を守るためにここにいるんだから」

「イェッサー!分かりました!」レオナが敬礼しながら明るく答えた。

「いや!何で俺が悪者扱いされてんだ!?」

空が慌てて訴えた。レナは考え深い表情で、「でも、何かがおかしいのは分かるでしょう?この空気感、ユキちゃんの表情…」と続けた。

ユキはただレオナのしつこさに引いてるだけ。レオナは冷静な態度で、「子供と貴方の年齢の差は無視できないわよね」と言った。


空は混乱し、レナの言葉に戸惑いを隠せなかった。

「いやいや被害者! 勝手に抱き着かれて困っているんだ!」と空は慌てて弁明する。

レナは真剣な表情で、「冷静に話そう。もし本当にレオナちゃんが困っているのなら、私たちは助けるつもりだよ。でも、君とレオナちゃんの安全が最優先だ」と語りかけた。


レオナは微笑みながら、「もちろんです。私たちは仲良く楽しい時間を過ごしているだけですもの」と強調する。

一方で、空はまだ状況を理解しきれていないようだ。


「レナ、何か言いたいことがあるのならはっきり言ってくれ。このままでは誤解が解けない」と空が静かな声で言いながら、なんとか事態を収拾しようとする。

このままでは自分がロリハーレム扱いされてしまうからだ。

レオナはそんな空の反応に微笑みを返す。そして空の元に歩み寄り、耳元で仲良くっと囁いた。

空の背筋に冷たい汗が流れる。もはや一刻の猶予もなかった。このままでは本当にまずいことになるかもしれないのだ。

レナが空に歩み寄るが、腰に手を当てながら鋭い眼光で睨んでいる。しかし、何としてもここで答えを見つけないといけない。そうしないと今後の活動に支障をきたすからだ。何か良い考えがあるはずだ。空は必死に考えた。考えれば考えるほど事態は悪化した。

ユキがまた手を挙げた。

「今ロリコンって聞こえましたけど?」

レナと空は驚いた表情でユキを見つめた。

レナはユキの質問に笑いながら空の前で指の関節を鳴らそうて威嚇する。空はすかさず慌てて弁解した。

「違う! 違う! 聞き間違いだろ!? 俺はロリコンじゃないぞ!? 信じてくれ!」

「ロリコンかー、これって拳出しても正当防衛成立するよね?」

レナはそう言うと、拳を空の顔目掛けて突き出した。空は慌てて躱すが、その勢いで壁に叩きつけられてしまう。大きな音を立てて壁が凹んだ。

レオナはおーっと感心そうにうなずいた。

「流石レナちゃん!格好いい!」


レナは微笑んだ。ユキは口を開けながら全身ガクガク震えた。

ちなみに、空はレナに殴られた後でも無傷だった。

身体強化と無属性魔法であるからすぐに立ち上がったが、レナの殺気を感じた。

何かやばいと悟った瞬間、レナはすでに攻撃態勢に入っていた。

「チェストぉ!!」

後頭部に踵落としを食らってしまった。

あまりの衝撃で俺は床に倒れた。レオナは心配そうな眼差しで駆け寄ってきた。

俺はゆっくりと起き上がった。レナが手を差し出しながら心配してきた。

「大丈夫!? クリーンヒットだったけど!?」

一体誰のせいでクリーンヒットされたと思ってんだ。

まぁいい。切り替えていこう。すると、今度はいきなりユキが手を挙げた。

「私も特訓したいです師匠!」

どうやらユキはレナの師匠扱いらしい。レナはユキの頭を撫でながら微笑んだ。

「オッケー!じゃあユキも特訓しよう!」ユキは嬉しそうに飛び跳ねた。

「おいなんか俺をサンドバッグと間違えてないか!?」俺はキレ気味に言うが、ユキとレナは無視して俺を置いてきぼりにしてどんどん話を進めていった。

これから地獄の日々が始まろうとしていた……。



新宿市では、勧告のために尊殿が自然公園付近で国民の声を聞き取り、その場で市民からの要望を聞き入れ、改善策を提示するなどの活動を行っている。

また、尊殿が国民の声を聞くために開放している公園での行事やイベントも積極的に開催している。

参加人数は5十万人にまで増え、尊殿は大忙しである。

しかし、尊殿は喜びに満ち溢れていた。それは国民と深くつながれた証拠だからである。

さらには、尊殿の政策によって国の経済が活性化したことも事実であった。

そんな時に演説の横に立つ空と周辺のボディーガードや警察たちも、国民の周りを囲う警備をしており、尊殿の演説に心酔する人が続出していた。

国民も人間であり、誰しもが何かしらの悩みを抱えているのだ。

その悩みを解決しようと努力する尊殿の姿に感銘を受けて、自然と拍手が沸き起こっていたのである。

目の前はユキとレナが最前列で椅子に座っていた。ユキと目が合った途端手を振ってきたので小さくを振ることしかできなかった。

何故かレオナが居なく、レナによればトイレらしい。フェイも居たが、最前列の椅子の端に一人ちょこんと見てるだけだ。

半分尊殿の話を聞いてその半分はどう秒速で犯人を取り押さえれるかを考えている。

そして時は流れ演説が終わるとそして尊殿は一礼をした。もうこの時点で1万5千人ほどにまで人々が増えていた。国民は尊殿に拍手をする。

良い演説だと思い、拍手をすると遠くビルに光が反射するのが見えた。

物体は捉えれなかったが1キロメートルぐらいで人物がうつ伏せ状態になってる姿が見えた。

その時、閃光が一瞬に光り尊殿に危機を感じた。

「危ない!!」

そう叫んだ瞬間、隣の尊殿の胸倉を掴み自分の方へ引き寄せた。

それと同時に演説台が命中すると爆発と同時に破片が飛んだ。周りにいる複数のボディーガードは咄嗟に盾になり尊殿を守った。

幸い尊殿に怪我はなく、他の聴衆やボディーガードも無傷であった。

その後、武装部隊が到着して空が安全に避難すると部隊も警戒しながら後についてく。その場はテレビやネットなどで溢れかえって国民が騒がしくなる中、犯人の居場所を説明。

その後警官隊が包囲し、追い詰める策を取った。


尊殿は安全な場所で避難し、怪我人がいないかを確認しに行ってると、空が戻ってきた。

周りが騒がしくなった時に空と尊は互いに目が合った。

「お怪我は大丈夫ですか?」

尊は微笑みで返す。すると、空は質問した。

「今犯人を捕らえる為包囲して追い詰める作戦をしているが、まだ犯人は分からない」

空は黙った。すると、尊は空に近づき頭を撫でた。そして、耳元で囁いた。

「とても良好な判断でしたよ」

空は顔真っ赤にして頷いた。尊は微笑みながら頭を撫でた。

そして、空は再び外へ出ると犯人を追いかけている警官隊の姿があった。

すると、空の足元を掠めるように銃弾が飛んできた。即座に建物の影で屈みこんだ。

その数秒後、後方からの射撃が始まった。

敵の数が把握できないのでこのままここにいても危険だと判断した空は銃を構える瞬間、左目が焼き切れたかと思うくらいに熱くなり激痛が走った。

しかし、その痛みは瞬間的に消え、元の状態に戻ると視界が鮮明になった。

空は走って逃げた。敵の位置が把握できない今、自分がすべきことは相手の位置を特定することではなく自分の身を守ることだからだ。

左目が使えなくなった空を狙い、敵が集中攻撃を仕掛けてきた。

空は自分の身を挺し、銃弾を受けながら銃弾が放たれた方角を特定し、銃を構え撃った。

銃声が響くと何かが倒れた音がした。敵の撃った銃弾が命中し、隊員のを一人が狙撃された。

狙撃された隊員は防弾チョッキを身に着けてなかったのか、血を吐いて倒れた。

だが、それで眺めてる暇もなく敵から攻撃されてるとわかると銃弾を交わした。

敵は待ち伏せをしていたようで、一人ではないことに気付くと、死角から現れた敵を遠くから視認した。

神薙空はその敵を視認した瞬間、驚愕した。

何故ならそこに立っていたのは紛れもないレオナの姿だった。

空はすぐさま距離を取り、銃弾が飛び交う中すぐに尊殿の場所に戻らなくてはならないと考えた。

銃弾が飛び交う中、銃弾の雨を掻い潜りながらレオナ達から距離を取る。

そして、安全を確認すると、尊殿との待ち合わせ場所に向かって全力で走った。

空は必死に逃げる途中、後ろを確認すると、まだ敵が狙っていたことに驚いた。

その時、一瞬油断してしまったのか、敵の銃弾が空を捉えた。

銃弾が放たれる瞬間、反射で避けようとしたが、体が追いつかず右脚に銃弾が命中した。

脚から血が流れ落ち、バランスを崩した空は地面に倒れそうにになった。

その瞬間、再び銃弾が飛んできたので体勢を崩しながらも避ける。

そして尊殿の隠れる場所まで再び移動を開始した。

一瞬の気の緩みから被弾してしまい倒れそうになるが、気合いで踏み留まり必死に逃げ続ける。

そして、ようやく安全な場所に到達したと思った直後、地面に脚を引き摺ってしまう。

「壕へ行きましょう。そこで銃声が収まるまで待機しましょう」

壕に向かうと、空はすぐに救急箱を取り出して止血と傷口にガーゼを当てる処置を施す。

そんな様子を眺めながら尊殿は悲しみの表情で呟いた。

「お怪我しちゃったのですか? 大丈夫でしょうか?」

尊殿の優しさに感動しながらも返答する。

「大丈夫です。これくらい大した事ありません」

だが、その言葉とは裏腹に痛みが続き、傷は深く出血も止まらなかった。

痛みのせいで集中力が乱れ、なかなか傷口を塞ぐことができない。さらに敵の追撃の可能性を考えながら気を休めることさえも困難な状況だった。

そんな様子を見兼ねたのか、尊殿が声をかける。

「無理はしないでくださいね」


尊殿の優しい言葉を貰いつつも、血は止まらず焦りだけが募っていた。

そんな中、背後から英語で話しかける男性の声が聞こえた。

『Hey! Are you okay! ?(おい!大丈夫か!?)』

振り向くと、そこには黒いマスクと防弾チョッキを着た外国人の兵士が心配そうな顔で見ていた。

「え? どうしてここに?」

突然話しかけられたことに驚きつつも兵士の方を振り向いて答える。

すると、そのアメリカ人兵士が英語で返事(yes)してくれた。

その後、説明してくれるとSWAT隊員の一人だった。

尊殿の隣でSWAT隊員に出会った瞬間、空は安心感を覚えた。

「君たちも同じく敵と戦っているのか?」

という問いに、SWAT隊員はうなずきながら、「そうだ。協力しよう」と答えた。


共闘の元、尊殿とSWAT隊員は状況を共有し、空は敵の位置を説明する。

しかし、空の傷は深く、応急処置では済まないことが明らかだった。

SWAT隊員は的確な手当てを施し、「君たちは安全な場所に退避しよう」と提案した。

その後、彼らは危険な状況を避け、壕に戻ることに決めた。


壕に到着した時、空はSWAT隊員に感謝の意を伝えた。「ありがとう、君のおかげで助かった。」

SWAT隊員はにっこり笑って、「お互い助け合うのが仲間だろう?」と言った。


尊殿も「本当に助かりました。感謝しています」と礼を述べ、SWAT隊員は謙虚に頭を下げた。

「どういたしまして。これからも力を合わせて、平和を守りましょう」



三人は壕で休息をとりながら、次なる行動を検討することにした。

壕の中で、三人は状況を整理し、次なる作戦を練り始めた。SWAT隊員は現地の情報を提供し、敵の動向を確認することができた。

「敵はかなりの数で固まっているようだ。ここから直接戦うのは難しいかもしれないな」とSWAT隊員が言うと、空と尊殿は頷いた。

しかし、尊殿は、「でも、彼らはなぜここにいるんだろう?目的が気になる」と不安げに話した。


SWAT隊員は考え込みながら、「何かを探しているのかもしれない。我々もそれを知りたいが、まずは安全を確保してからだ」と答えた。

三人は次に進むべき方針を模索しながら、地図を広げて戦略を練った。


しばらくの間、戦況の分析と進行方向の検討が続いた。SWAT隊員は専門的な知識を活かして的確なアドバイスを提供し、空と尊殿も自らの経験を交えて意見を出し合った。


その中で、共通の目標を達成するためには協力が必要だという結論に至り、三人は手を組むことを決断した。SWAT隊員は、「信頼関係が築ければ、より効果的に敵に立ち向かえるだろう」と語った。

壕の中で、三人の連携が深まりながら、敵のアジトに迫っていく決意を新たにした。

それぞれが持つ強みを活かし、絶え間ない協力のもとで、彼らは次なる戦いに備えていた。

――外に出ると銃声は鳴り止み、静けさが戻った。三人は壕から出て、周囲の様子を確認した。

しかし、まだ敵の気配が漂っている中、慎重に進んでいくことを決めた。



SWAT隊員は、「先に進む前に、周囲を確認しよう。敵が再び襲ってくる可能性があるからな」と警戒を促した。空と尊殿も頷き、用心深く進んでいく。


三人が慎重に進む中、敵の影が再び迫ってきた。

壕を出てからの数分間は平穏だったが、不穏な空気が再び漂い始めた。

SWAT隊員が指示を出しながら、「隠れる場所を見つけ、待ち伏せしよう。敵の数が多いなら、奇襲を仕掛ける準備をしておくべきだ」と提案した。空と尊殿は即座に行動に移り、周囲の地形を利用して慎重に進んでいった。しかし、敵ではなく、黒い部隊に包まれたのが見えた。部隊の中には様々な武器を携え、戦闘の準備を整えている者たちがいた。

SWAT隊員は手を挙げて味方だと、兵士たちに合図を送り、彼らは誤解が解け、無事に交戦回避に成功した。

部隊の合流により、混乱が解消され、安堵の表情が三人の顔に浮かんだ。

SWAT隊員がリーダーシップを発揮し、各自の専門知識を活かして連携を図ることで、より強力な組織が形成された。

「情報を共有し、協力して立ち向かうことが重要だ。目的地に近づくにつれて、敵の抵抗も激しくなるだろう。だが、我々は勝利する」とSWAT隊員が力強く言葉を紡いだ。

話を聞きながらつい、燃えた車とビルを見ると、ある違和感を予知した。

「危ない!!」

尊殿の体を守り突き飛ばすと。

尊殿を身を挺して庇い、車の爆発による炎と黒煙が二人を包み込む瞬間、熱風が襲いかかり、意識が飛び散る。

倒れた車から立ち上る炎の中、二人は必死に身を守りながら逃げる場所を探した。

身体に火花が飛び散りながらも、その場から遠ざかることに成功したが、尊殿の状態が心配でならなかっかった。

炎の中、尊殿は意識を失ってしまっていた。空は焦りと不安の中で、彼を抱きかかえ、安全な場所に移動しようと努力した。

「尊殿大丈夫か!? 起きてください!」

しかし、尊殿は無応答で、その傷は深刻だった。空は周囲に安全な場所を見つけ、急いで彼女を運びながら、身の安全と共に彼の安全を確保しようと心に誓った。


やがて炎の音が遠ざかり、二人は一時的な安堵感に包まれた。しかし、尊殿の傷は深く、状況はますます厳しくなっていく。

彼女を助けるためには、何としても安全な場所にたどり着く必要があった。

「尊殿、頑張ってください! 必ず助けてみせます!」

焦燥感が心を支配する中、空は冷静さを保ちながら、救援を求める手段を模索した。

周囲にはまだ敵の存在が潜んでいる可能性があり、慎重な行動が求められた。


その時、遠くから響くヘリコプターの音が聞こえ、空は一筋の希望を見いだした。救助が来るまで、尊殿を守り抜くことが彼の唯一の使命だった。


ヘリコプターが近づく中、空は両手を振り、救助を待ちわびる。やがて、ヘリコプターが着陸し、医療チームが飛び降りてきた。

彼らは尊殿の状態を確認し、迅速かつ専門的な治療を開始した。

「君、無事でよかったね。あとは我々が尊殿の治療に全力を尽くします」

救助隊員が言葉をかけてくれたが、空の心はまだ不安に押しつぶされそうだった。

尊殿が無事に回復するまで、安心することはできなかった。

ヘリコプターは尊殿を搬送し、空も同行することとなった。病院での治療が始まると同時に、彼は再び立ち上がり、尊殿の側に寄り添っていくつもりだった。

「ありがとう。君の迅速な判断により、鮮明な治療ができるよ」

救助隊員が言葉をかけ、感謝の意を表す。

しかし、空は謙虚に頭を下げながらも、「まだ終わりじゃない。彼女を守り通さなければならない」と心に決めた。

尊殿の治療が進む中、空は彼の横で見守り、再び共に戦う覚悟を新たにした。

そんな中、無事だったSWAT隊員は空に合図をする。

「我々は尊殿を守るから君が犯人をやっつけるんだ!」その言葉を聴き、空は力強く頷き返す。

尊殿に感謝する気持ちと、自分が果たすべき役割を知ったことで、空は戦う決意を固めたのである。

犯人の特定場所を既に捉えた空は走り出す。

相手は一人で、残りの部下が何処かに展開していると考えられる。

あのビルから見えるその姿は、明らかにあの少女だった。

しかもあの銃声はただのライフルではない、明らかに爆発したかのような威力だ。間違いなく、犯人はあの少女だ。

すると再び銃声が鳴り響く。それは明らかにこの屋上に向けて撃っているものだった。

1秒毎に一発の銃弾が空たちに向けて放たれる。

それをなんとか避ける空を心配し、救助隊員は声をかけようとしたその時、一発の銃弾が空を襲った。

足に命中し、抉れたような傷から大量の出血が引き起こされる。そしてそのまま重力に従い、地面に落下していく。

足を負傷し、建物の影に隠れながら座り込む空は再度足元を確認すると飛び出た骨の破片と突起。

破裂した跡の肉が散乱し、辺りに血液を飛び散らせていた。

ライフルではない威力だ。この銃の正体はわからないが、空には一つ思い当たるものがあった。それは装甲用による遠距離攻撃によるものと空の憶測は確信となった。

足踏みができるよう、落ちてあった棒を足に縛り付ける。止血し、移動を再開した空は思わず言葉を漏らす。

ライフルが撃ってこないタイミングを狙って、空は建物から離れる。

ピストルの射程圏内は50メートルだが、「この9mmマテリアルパーフォレート貫通弾を使用すればこの500メートルのビルくらいの距離を狙える」

そう呟きながら、空はその武器を手に持ちながら慎重に動いていた。

だがそれと同時に、空は何かに気がついた。それは狙撃してこない理由だ。

恐らくそれは、空が死亡判定したからだろう。その死亡判定のおかげで空は生き残ることができたし、敵の意識外へと移動することができた。

だが、このまま逃げ続けていれば狙撃されるのは時間の問題だ。

それを悟った空は何か対策をしようと思い、壁に寄り掛かりながら考え始める――あのライフルの正体は対物ライフルの弾丸の威力が向上されたものだった。

機関砲に搭載されてる弾丸と同等の威力を持っていた。あれを喰らえば骨と内蔵は破裂し、生存の確率は非常に低かった。そもそも対物ライフルは人を撃ものでもないし、対戦車武器でもない。ライフルとの違いは射程だ。対物ライフルは装甲車両や地面などの障害物を破壊するために使用されているものだが、あの狙撃手は飛んだ残虐性を持っていた。

―もし罪悪感あるなら、あんな武器で人を殺したくはないのだろう。だからわざと狙撃してこないというのも納得が繋がる。

どうにであれ、狙撃してこないってことは退避したってことだ。あいつは恐らく、建物の外から撃ってくるはずだし、その方向に警戒すればどうにかなる。

後は弾丸を避けつつ誘導し、あいつのライフルを無力化すれば狙撃手に勝てる。

潜入作戦は中止し、次の作戦を正確に整ったら突撃だ。空は尊殿の方に戻ろうとしたが、その時にはもう尊殿の姿は見えなかった。

治療が早いが、尊殿が助かるならならそれでいい。その方は、神の子で、尊殿がいれば安心だし、何かあれば警護隊などが助ける。

あの方が自分のことをどう思ってるかは知らないけど。

そう言って最後に笑う空であったが、その笑顔は一瞬辛そうな様子だった。それを見た空は胸が少し痛くなるのであった。



とあるコンビニの中買い物し終えた空は片足が覚束ないまま一人で帰るのは危なかった。

足の負傷の後、自ら病院にて治療を受けたにも関わらず傷はやはり大きかった。

それでも空は医者に一応完治したと言われたので大丈夫だと安心はしていたけど、やはり痛みはまだあった。

特に左足の爪先から痺れるような痛みはいまだに感じられている。

しかし、それでもまだ戦わないといけない。と空は自分に言い聞かせる。

そして、病室に戻ろうとする最中、病院の建物から外へ出る時、後ろから気配を感じた。それは間違いなく狙撃手の気配だった。

下を見るとやはりレオナだった。

レオナは自分の右手から何か飛ばしてきた。それは光棒のような不思議なものだったが、受け取るとライフルより一回り大きい薬莢だった。

渡した理由がよくわからなかった。

「命中したのによく生きてるね。普通、あんな距離から撃たれたら一発で絶命するのに」

(こいつも狂人なのか?)

とレオナの発言を聞いて空は驚く。レオナが言っている命中したという言葉にもだ。そんなはずはないと思った空だが、なぜか不安が襲ってきた。

彼女の狙撃が本当に命中していたのか、それとも何か別の意図があるのかを理解できず、空は急速に状況を把握しようとした。

「なぜ俺を狙っているんだ?何が目的なんだ?」と問い詰めるも、レオナは微笑みながら答えることなく、一歩も引かないまま彼女の視線が空を貫いていた。

その時、レオナが口にした言葉が不気味に響いた。

「君は選ばれた者。戦いは終わらない」

空は言葉の意味を理解できないまま、彼女の前に立ちはだかっていた。彼女の言葉が象徴する謎めいた使命や戦いに巻き込まれたことに、空はますます混乱していく。

「君の中に眠る力はまだ覚醒していない。戦いの中でそれが必要になる」とレオナが囁くように言った瞬間、空は何か強大な力に引っ張られるような感覚を覚えた。

「君は私たちと共に未知の戦いに挑む者。運命の糸が交わることを知っている」レオナの言葉が神秘的でありながらも、納得感が生まれていく。

「私たちは選ばれし者同士。君の中に秘められた力は、この戦いにおいて重要な役割を果たす」

再び彼女の言葉が重みを帯び、空は自身が抱える運命の意味を考え込んでいた。

しかし、空には未だに多くの疑問が残っていた。何故彼女たちとの戦いが必要なのか、そしてなぜ自分が選ばれし者とされてしまったのか。

混沌とした感情の中、彼は自身の過去や未来に照らし合わせて理解を試みた。

「まだ分かってない?」

「まぁ……な。もっと分かりやすく」

レオナは微笑む。その微笑みには深い意味が込められているようで、空はますます混乱していく。

しかし、彼女の存在が不可解な魅力を持っていることも確かだった。

「それより、今なら殺せれるけど私を殺さないのか?」

空は混乱と疑問の中、レオナの問いに答えることができず、しばらく黙り込んでしまった。

彼女の存在が何か異次元的であり、戦いの意味が未だに掴めていない中、生死をかけた選択を求められることに、心が揺れ動いていた。

「君は私を殺せるかもしれないし、できないかもしれない。でも、それが君の力だと私は信じている」レオナの言葉には確信が込められており、彼女の目は強い意志で輝いていた。

空は深いため息をつき、「俺はただの普通の人間だ。何もわからないし、戦いたくない。お前もそう思うだろ?特に意味もない人を殺す理由もないだろ?」と言い切る。

しかし、レオナは微笑みを崩さず、深い哲学的な視線で彼を見つめていた。「そう……」表情を変えると爽やかな微笑みで上に目線を向けた。

「それと、また空が作ってくれた焼きそばまた食べたいな」

そんな意外な言葉に、空は戸惑いと同時に安堵の感情が湧いてきた。何故なら、それは戦いや選ばれし者の複雑な宿命から解放され、普通の生活への願いが込められていたようだった。

「焼きそばか……?」

空は思わず目を見開き、彼女の言葉に驚きながらも微笑む。

「それなら、また一緒に食べよう。ただし、戦いのことはもう考えたくないんだ」

レオナは微笑みを増して、空の言葉に頷いた。

「分かってるよ、空。君に強制するつもりはない。ただ、未来の戦いに巻き込まれるかもしれない」

彼女の言葉には未来の不確かさと同時に、対峙するべき運命が空を待ち受けていることが感じられた。

しかし、焼きそばの一言が意味する通り、彼女との関係はただの敵対的なものだけではなく、何かより深いものが結びついているように思えた。

「君にとっての普通の生活が、どれだけ尊いものであるか分かっているよ。でも、時には力を解放し、立ち向かうことも必要かもしれない」

そんな言葉に、空は再び不安を感じつつも、自分の選択を信じる覚悟を決めた。

未知の戦いが待ち受けている中で、焼きそばの味を分かち合いながら、二人は新たな旅路に身を投じることとなった。

「それじゃあ、焼きそばでも食べに行こうか。ここは病院から出る前に立ち寄ったコンビニだから、もう少し買い物をしよう」

彼女の提案に、空は微笑みながら同意する。それに、焼きそばの味を感じることができれば、少しでも現実の平穏な時間に逃れることができるだろうと、彼は希望を胸に抱いていた。

二人はコンビニに戻り、不穏な過去と未来の影を振り切りながら、普通の日常に戻っていくことを決意した。

焼きそばの匂いが広がる中、新たな冒険の幕開けに向けて、空は歩み出すのだった。

『ありがとうございましたー』

レオナとの戦いとは裏腹に、コンビニの中では平穏な雰囲気が広がっていた。

焼きそばの匂いが充満し、空は特盛りを選んでポットに湯を注ぎながら、今までの出来事を振り返った。

「やっぱり普通の日常が一番だな。こんな風にコンビニで焼きそば食べるのが平和だって感じるよ」

レオナも微笑みながら頷く。

「確かに。戦いが続く中で、普通の瞬間がどれだけ大切か改めて実感するね」

彼女の言葉に空は共感し、湯を注いだカップ麺を手に取りながら、何気ない日常の中に潜む喜びや幸せに気づく瞬間だった。

そして、レオナとの遭遇がもたらした戦いの影を一時的に忘れ、ただ美味しい焼きそばを味わうことに心からの安らぎを感じていた。

「焼きそばの後にはアイスでも食べようか?」

レオナの提案に空は興味津々の表情を見せ、「しょうがないな。どんな味が好き?」と問いかける。

「んー、バニラとチョコレートが好きかな」

「それなら、2つ買っておくわ」

レジに向かい、アイスを選びながらも、二人は無意識に戦いの影から逃れるような気軽な雑談を交わしていた。二人との戦いや未知の運命に翻弄された状況とは裏腹に、コンビニの中ではふたりの距離が少しずつ縮まっていくのが感じられた。

――支払いを終え、アイスを手に取りながら外に出ると、夕焼けの中で街の喧噪が広がっていた。

狙撃任務と潜入作戦との戦いの舞台から離れ、ただの街の中に身を置いている。

そして、何気ない一瞬が積み重なり、未知の戦いを前にした二人にとっての平和な瞬間となっていった。

「さて、どこか静かな場所でアイスを食べようか?」

空が尋ねると、レオナは満面の笑顔で、「いいアイデアね。でも、敵が現れたらすぐに戦わなくちゃいけないのよ」と冗談めかして答えた。

「そんなことより、今は戦いじゃなくて、アイスを楽しもうよ」

外の風景を楽しむべく、二人は近くの公園へと向かった。アイスクリームを手に持ち、ベンチに座りながら穏やかな時間を共有した。

「この景色は、戦いの影が忘れさせてくれるな」と、空は遠くの空に目をやりながら呟いた。

レオナも微笑みながら、「戦いの中にいると、こうした日常がどれだけ贅沢か気付かされるね。平和な瞬間を大切にしよう」と応じた。

二人はアイスの甘さを味わいながら、様々な話題に花を咲かせた。過去の経験や好みのアイスのフレーバー、そして将来の夢や希望について語り合った。

「君の好きなアイスのフレーバー以外にも、もっと知りたいことがある。過去や未来についてもっと聞かせてくれないか?」と、空は興味津々に尋ねた。

レオナはしばらく黙って考えた後、「私の過去はあまり人にはトラウマで語りたくないものが多い。それでもいいならそういう過去も含めて話してもいいよ」と答えた。その言葉からは彼女が抱える苦悩や辛い出来事がにじみ出ているようだった。

「分かる。無理に話さなくていいよ。俺も未だに理解できていないことが多いし、君のペースでいいんだ」、空は理解を示すように言った。

しかし、レオナは微笑みながら、「いいえ、君にも知ってもらいたいことがある。それに、君との会話が私にとっても新鮮で心地よいものだから」と言い、遠い過去からの出来事を少しずつ明かし始めた。

彼女の話によれば、彼女はかつて平和な世界で暮らしていたが、突如として現れた謎の組織によって選ばれし者として目覚めさせられた。

彼女は強大な力を秘めており、その力を制御し未知の脅威から世界を守る使命を負っていた。

「私も最初は驚きと不安しかなかった。でも、この力を受け入れ、使命を果たすことで初めて自分の存在に意味が生まれた気がしたんだ」と、レオナは振り返りながら語った。

空は黙って彼女の話を聞いていたが、同時に彼女の強さと複雑な宿命に対する戦いの中で見出す美しさに気づいていった。

「君の言う通り、普通の生活が一番だと思っていた。でも、今は違う。私たちの力や戦いの意味、それが尊さを持っていることも感じるようになったんだ。君と共に戦えることが、私の生きる意味でもある」と、彼女は語り終えた。

空は彼女の言葉に深く感動し、同時に自分の存在にも新たな意味が宿っていることを感じた。彼らの運命は未だに不透明ながら、彼女との繋がりが力強さを生み出していることを理解した。

「ありがとう、レオナ。君の話を聞けて良かった。そして、君と戦い、未知の世界に飛び込んでいけることに、自分でも驚いているよ」と、空は真剣な表情で言った。

「私も感謝している。君の力と共に、未来の戦いに挑みたい。そして、平和な日常を守り抜こう」と、レオナも微笑みながら言った。

すると目の前から6台のバイクが、空拭き音を鳴らしながら彼女達に止まった。

バイクにまたがる6人の人物たちが、無言で立ちはだかっていた。その中には仮面をつけた者や、異世界的な服装をまとった者もいた。

『お前がゲノム少女か?ふざけやがって」一人の男が厳しい口調で言った。彼の言葉に、空は戸惑いと緊張が走った。

「ゲノム少女?それは何だ?」とレオナが問い返すが、男は大声で爆笑しながら答える。

『お前知らねぇのか!? 頭トンチンカンかよ!?』

男たちの挑発的な態度にもかかわらず、レオナは冷静な表情を崩さず、空は未知の用語に頭を抱えながらも、彼らの正体や目的を知りたいと思った。

「お前達、相手は子供だぞ。きつい言葉を投げかけるのやめたほうがいいぞ」と空が少し不安げに言うと、男たちは一瞬沈黙した。しかし、

『オメェには関係ねぇだろ!引っ込んでろ!』

そう言い放った男たちは、次第に敵対的な雰囲気を醸し出していく。彼らの言葉や態度が、戦いの気配を感じさせた。

「お前達に何かあったか知らないけど子供相手にするなんて非道だ。立ち去れ」と空が厳しく言う。

しかし、男たちは大笑いながら胸倉を握りしめ、挑発的な態度を崩さなかった。

レオナも静かながらも戦闘の覚悟を感じさせる表情を浮かべ、緊迫した空気が漂い始めた。

「お前らの目的は何だ?子供に巻き込むなら、俺が引き受ける」と、空は言葉を強めて投げかける。

男たちの中の一人がにやりと笑い、『ちょっとしたキレでなぁ。俺の仲間がこの女のせいでやられたんだよ!』

まるで闘志が燃えるような男たちの視線が、空とレオナに向けられた。彼らの中で何かしらの過去の因縁や争いが渦巻いていることが感じられ、未知の敵に立ち向かう決意が空を包み込んだ。

「この女ってレオナか?」​と空が厳しい表情で言う。

男たちの中で一人が手を挙げ、『この女が仲間を殺した!俺たちの仲間をな!』と激昂した声で叫んだ。

「何を言っているんだ? 私は彼らと何の因縁もないし、誰も殺していない」レオナは冷静な口調で反論する。

しかし、男たちは信じる気配もなく、『いやお前がやったんだ』と主張を続ける。

空は怒りを抑えながらも、「それなら証拠を見せろ。無実の者を訴えるなら、証拠が必要だ」彼の声は堂々としていた。

男たちはにやりと笑いながら、『証拠はここにある。お前がゲノム少女だろうがなんだろうが、お前がやったことに変わりはない』と言い放った。

段々と掴む力が強くなり、彼らの手に握りしめられた証拠が何なのか空は確認できなかったが、彼女との出会いや未知の戦いの中で感じた絆を守るため、彼は立ち上がった。

「お前たちのやり口は情けない。子供を巻き込むなら俺が戦う。東郷機関諜報員 神薙空だ」

ワッペンを見せ、空は東郷機関諜報員としてのアイデンティティを明かした瞬間、男たちは大爆笑し、空の告発に対して男たちは大爆笑を浴びせ、興奮気味に舞台を見つめた。

その笑い声が、戦闘の緊張感を一瞬和らげるが、同時に不気味な雰囲気が広がっていく。

『東郷機関!? 諜報員!? そんな名前ねぇよ! 頭壊れたんか!?』

男たちの挑発的な言葉にも関わらず、空は冷静な態度を崩さず、彼らの中に渦巻く因縁や敵意を理解しようと心に決めていた。

「名前が信じられないのか? まぁ、元は東郷末長が設立した元未確認生命体対策部隊ということで、知らない者も多いだろうが、政府が承認された諜報組織だ。俺はこの組織の一員として、未確認生命体の脅威に立ち向かっている。お前たちの問題も解決できる可能性があるが、無駄に戦う前に話し合いを選ぶことはできないのか?」

男たちの中で一人が不敵な笑みを浮かべ、『政府の犬が何を言ってんだよ。警察なんざぁ怖くねぇ。俺たちで解決するしかねぇだろう?』と挑発的な口調で言い放った。彼の言葉に、空は深いため息をつきながら言葉を続けた。

「君たちが持っている証拠が本物なら、それに応じて行動する。しかし、無実の者を責めるのは誤りだ。俺たちは未確認生命体に立ち向かうためにここにいる。それに、関係ない者を巻き込むのは筋違いだろう」

男たちは依然として笑みを浮かべながら、空の言葉を無視し、一斉にバイクから降りて歩み寄ってきた。関節を鳴らし、敵意が一層強くなっていく。

レオナも身構え、戦闘の構えをとる。空は未知の相手たちとの対話が難しいことを理解しながらも、戦いではなく和解を望んでいた。

「君たちとの戦いは避けたい。しかし、無理にでも戦うつもりなら、覚悟はできている。だが、それでもなお話し合いの余地を残したい」

男たちの中の一人がにやりと笑い、『お前、まだしゃべってんのかよ! 黙ってろ!』と怒号を浴びせ、彼らの中に緊張が走った。


『もういい!この女もまとめて潰してやる!』

男たちが一斉に襲いかかる瞬間、銃声が音が隣から響きる。男たちの攻撃を阻止するため、突如現れた銃声が空気を裂いた。

銃弾が男たちの足元に命中し、彼らは驚きと混乱の中、地面に倒れ込んだ。

新たなプレゼンスが現れ、その存在感は周囲の空気を引き締めた。一瞬の静寂が広がり、男たちの挑発的な態度も消え去った。

「さて、ここで騒ぐのはやめましょうね」銃声を響かせたのは、レオナだった。彼女の手には小型の拳銃が握られていた。

「私が殺される前に君達をまとめて潰します」とレオナが言いながら、拳銃を構えて男たちに向けた。


『ガキが拳銃持ってんじゃねぇ!下ろせ!』


 レオナの手に握られた拳銃が男たちに向けられ、一瞬の間が凍りついた。空も状況が急変したことに驚きを抱えつつも、戦意を保ちながら彼女の行動に注視した。


「下ろせって言ったろ!?」男たちの中の一人が怒鳴りつけ、しかし、レオナは微動だにせず冷徹なまなざしを彼らに向けた。


「この銃は最後の手段だけど、君たちには警告を聞く機会を与える。話し合いの余地はまだ残っている。君たちが私たちに訴える問題、それが解決可能ならば力ずくではなく、話し合いで解決すべきだ」


男たちの中には動揺が広がり、挑発的な態度も急速に後退していく。しかし、一部の者はまだ怒りに満ちたまなざしを向けていた。


「くだらない。お前が動くなら本気でやるしかねぇだろ」一人の男が手元から何かを取り出し、挑発的な笑みを浮かべながら前進してきた。


その瞬間、再び銃声が響き渡り、もう一人の男の足元に銃弾が命中し、悲鳴と共に彼は地面に崩れ落ちた。新たな銃撃手の存在が空気を支配し、状況は一変した。


レオナは冷静なまなざしで男たちに向かって言った。「どうやら話し合いできる範囲は越えたみたいね。これ以上の衝突は避けるべきだ」


男たちの中で一人が苦い笑みを浮かべ、「なるほど、威嚇射撃。そんなんで俺達がビビると思うか?」と言いながらも、仲間たちに合図を送ろうとすると、銃声が再び鳴り響いた。


『うわぁぁぁあ!? 手がぁぁあ!? 俺の右手がぁぁあ!』男が絶叫し、手首から先がほぼ存在しない状態で地面に崩れ落ちた。その血まみれの様子が、他の男たちに深い恐怖を植え付けた。



新たな銃声を聞いた男たちは混乱し、一斉に身をかがめて身を守る。レオナは冷静に拳銃を構え、男たちの動揺を見据えると、レオナは冷徹なまなざしを保ちながら言葉を続けた。


「これでバイクが乗れないね。私に対して挑発的な態度をした罰だ。君たちにはもう何度も機会を与えたが、和解の余地を見いだせないようだね。救急車を呼んでもいいけど、このルートだと陥没した道路では到着するのに早くても、一時間かかるだろう。どうする?そのバイクを捨てて逃げるか、その場でくだらない人生を終わらせるか。君たちの行動次第で人生が掛かってる、なのでその二つの判断に見立てることは君たち次第だ」


男たちの中には混乱と狼狽の表情が広がり、拳銃の銃口に向かって手を挙げる者もいた。一方で、まだ戦意を捨てない者たちも一部に見受けられ、彼らの目には怒りと復讐心が宿っていた。


レオナは冷酷なまなざしを保ちながら、状況を見守っていた。空も救急車を呼ぶことを提案するなど、理性的な解決を模索している様子だ。


「もう一度言う。ここで何か起こすなら、君たちには生きて帰れる道は残っていない。そして、その選択は君たち次第だ。何もかもが君たち次第だ」とレオナが冷厳な声で告げる。


男たちの中には逃げる者いたり、抵抗する者もいれば、混乱の中には一部がなおも復讐の念を秘めて立ち向かおうとしていた。しかし、その瞬間、レオナの拳銃から再び銃声が響き、もう一人の男が悲鳴を上げながら地に沈んでいった。


「まだ理解できないのかしら?これは最後の警告。君たちの行動が人生を左右する決定を迫られているのよ」とレオナが冷静に語りかけた。彼女の目には優れた射撃技術と冷静沈着な判断力が宿っており、その存在感は男たちを圧倒していた。


空はなおも紛争の回避を試み、救急車を呼ぶよう提案するが、一部の男たちは未だに怒りに燃え、無謀な復讐を果たすことを選択しようとしていた。混沌とした状況のなか、未知の要素が絶えず増していく中、次なる一手を探るようにレオナは続けた。


「君たちには人を殺す権利もないし、そのために自らの未来を棒に振ることはあまりにも愚か。私たちは君たちと敵対したくはない。だが、もしこのまま進むなら、君たちの選択に責任を持たざるを得ない」


男たちの中には徐々に悔恨の表情が広がりつつも、なおも反抗的な者も散見される。この緊迫した局面で、一つの小さな誤解が致命的な結果を招く可能性もあった。


「ここから先の選択は君たちの手にかかっている。もしできるだけ無血でこの状況を終わらせたいなら、最後の機会を与えている。それを無駄にしないでくれ」


そうして続ける中で、男たちの中には徐々に動揺が広がってきた。何度も命を奪われ、自らの行動に疑問を感じる者も増え、深い沈黙がその場を包み込んだ。


そして、その静寂を破ったのは、一人の男が膝をつきながら泣き崩れる声だった。「ごめんな……ごめんなさい!おれら、馬鹿だったよ……本当に馬鹿だったよ……」


その男の言葉に続いて、他の男たちも次第に謝罪の言葉を口にする者が現れ始め、混乱の雰囲気が和らいでいく。彼らの間には争いごとの愚かさを痛感する共感が生まれ、冷静な判断が戻りつつあった。


「見苦しい光景だけどそれが君達の本性だね。これ以上の衝突は避けるべきだし、君たちには未来がある。だが、この瞬間を忘れず、反省して欲しい。未確認生命体との戦いに巻き込まれる前に、自らの行動を見つめ直すことが大切だ」


『ありがとうございます!!ありがとうございます!!』


一部の男たちが感謝の言葉を繰り返す。

しかし、少しの口角を上げた者を見過ごさなかったレオナは彼に近付いて微笑む。


「助かって良かったね。そんなに嬉しいかったのかな?」


『え?あ、はい』


そう答えると男性に対して優しく頭を撫でるだが、その安心の瞬間も束の間、銃声が聞こえ、男性の額から血を吹き出すと同時に、驚きの声とともに再び混乱が広がった。


レオナの手に隠し持ってたのは手の平サイズに収まる小型ピストルだった。男性の頭部に放たれた銃弾が、まばたきの間に命を奪い、彼は無力ながらも血の海に倒れ込んでいった。「何が起きたんだ!?」


彼の死によって再び緊迫感が漂い、男たちは驚きと混乱に包まれた。レオナの急な行動に男たちは理解を超えた衝撃を受け、空もその出来事に戸惑いを覚えつつ、新たな局面に向き合っていた。


「な、なぜ…?」と口を開いたのは空だった。深い悲しみが彼の声に漏れ、何が起こったのかを理解しようとする。


レオナは冷たいまなざしを保ちながら、「彼が本当に反省していたとは信じられなかった。信じたくても、あまりにも多くの死と裏切りに直面してきたからね」と冷酷な説明をした。


 男たちは先程の和解の瞬間が嘘だったことを悟り、怒りや絶望の表情を浮かべていた。その一方で、彼らの中には再び戦意を燃やす者も見受けられ、混乱は一気に激しさを増していく。


「お前、なんでそんなことを…」と言葉を詰まらせる空に対して、レオナは容赦ないまなざしを向けた。「彼らが訴える問題も、結局は私たちに対する敵意だった。冷静になって考えてみて。ここで平和的な解決ができるわけないんだ」


空は辛い決断だったことを理解しつつも、「でも、君が一方的に…」と言葉をつまらせる。


「これが私の仕事だ。化け物との戦いでは、時に冷酷でなければならない。私たちは生き残るために戦っているんだ。一人犠牲になって嘆いてたら生き残ることはできない。君もそれを理解して」と冷静な声で言い放った。


空は悲しみと理解の入り混じった表情で頷き、彼女の言葉を受け入れるしかない現実を受け入れた。彼が内に秘めた想いと戦い、レオナが背負う重い役割との狭間で、二人の運命は交錯していた。


新たな局面に立ち向かう中、レオナは再び周囲の状況を見つめ、次なる行動を模索していた。


「帰りましょ。この人達のせいで冷めたわ」

 

彼女の提案に従い、二人はその場を離れる決断を下した。しかし、血の海に沈む男たちと、レオナの冷酷な判断に戸惑いを隠せないまま、空は先ほどまでの出来事を振り返った。

不安と混乱が心を支配する中、空は黙々と歩きながら考え込んだ。


こうした状況の中、レオナは深いため息をつきながら言った。

「あの人たちはもう戻らない。私たちの前に立ちはだかるだけだった。この先、彼らに平和的な解決があるとは思えないし、私たちの生存を脅かす存在になっていただけだった」


空は彼女の言葉にうなずき、しかし同時に胸に重く残る感情があった。

「でも、彼らも家族や仲間を失った者たちだった。何かしらの理由で立ち上がってきたんだろう。こんな彼達は本性は悪い性格じゃないと思うけど」


空の発言に対してレオナはキレ気味でうなり声を上げながら言った。


「まだそんなこと言ってんの?彼らの動機がどうであれ、私たちの敵だ。家族や仲間を失った者たちだろうが、それが許される理由にはならない。私たちは守らなければならないものがあるんだ。」



空はしばらく黙って考え、そして静かに言葉を紡いだ。「でも、彼らもただの人間でしょ。どんなに厳しい状況に追い込まれても、善悪はっきりつけられないこともある」


レオナは眉をひそめ、冷たい視線を向けた。

「空、彼達の気持ちになったら私を潰しにくるんでしょ?こんな傲慢な態度じゃ生き残れるわけないんだよ」


「でも、君のやり方が唯一の正解ってわけじゃない。もっと違った方法があるはずだ」と空は静かに反論した。


レオナは立ち止まり、彼の言葉に真剣な表情で答える。


「色んな方法はあったよ。でも結局は人々の危機を脅かす存在で、それに対抗するためには、時には冷酷であることが必要なの」


彼女の言葉に空は苦悩の表情を浮かべ、しばらく黙ってしまった。そして、静かに続けた。


「でも、それで本当に平和が訪れるのか?彼らもただの生きている存在で、家族や仲間を守ろうとしているだけなんじゃないか?」 

    

レオナは彼の言葉に一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに冷静になりながら応じた。


「知らね、私に聞くな。こんなイカれた人達を許したところで答えは変わらない。もし君がこの人達の味方だと言うなら私は私なりの判断をする」


空はしばらく迷いながら言った。

「彼らもただの人間で、善悪の線引きが難しいこともある。もしかしたら、協力し合って何とかできることもあるんじゃないか?」


レオナは苛立ちを隠せず、厳しい表情で応えた。

「協力? 君甘いよ。こんな状況で何を協力するって言うのよ。私はただ、生き残る手段を選んでいるだけだ。私に喋るな」


「いや、喋らないと解決はしない。一体何があったんだ?」



空は辛そうな表情で続けた。

レオナは舌打ちをし、不満げな表情で応えた。


「何でもない。引っ込んでくれ」


続きは、空がしばらく黙ってその場を離れ、心に抱えた疑問と不安を抱えながらも、新たな局面に立ち向かうことを決意した。

彼はレオナの冷徹な態度に疑問を感じつつも、何か解決の糸口を見つけるべく考えを巡らせた。


去っていくレオナ空は心に渦巻く矛盾した感情を抱えつつも、新たな局面に向けて一歩を踏み出した。

彼はレオナの冷徹な態度に疑問を感じつつも、善悪の境界線が曖昧なこの状況での適切な判断を追求していた。


彼の歩みは、血の海に沈んだ者たちの影を背負いながらも進んでいく。彼は自らの信念と、他者との理解を築くことの難しさに直面していた。

一方で、レオナの言葉が頭に残り、協力や対話が不可能なのかとの疑問が彼を悩ませた。


しばらく歩いた後、空はふと立ち止まり、街の廃墟に広がる悲惨な光景を見つめた。彼の中で葛藤が渦巻き、未知の未来に向けての不安が心を支配した。

しかし、同時に彼は新たな可能性が広がっていることにも気づいていた。


「どうしてこうなったんだろう?」と空はつぶやいた。彼は過去の出来事を振り返りながら、人々がどのようにしてここまで分かれてしまったのかを理解しようと努めた。

違いを乗り越え、共感の架け橋を築くことができれば、未来はより良いものになるのではないかと考えた。


空は周囲の廃墟と血の海に浸る光景に耐えきれず、心に湧き上がる矛盾した感情に苦しんでいた。

彼の中で、善悪や正義の基準が曖昧な中でどう行動すべきかという疑問が渦巻いていた。


彼は自らの信念と、他者との理解を築く難しさに直面し、新たな局面に立ち向かうことが容易ではないことを理解していた。

レオナの冷徹な態度に対する疑問が心を揺さぶり、同時に彼女の言葉がなぜそこまで厳しいのかを理解しようと試みた。


「もし協力や対話が難しいのなら、私はどうすればいいんだろう?」と彼は自問自答する中で、未知の未来に対する不安がますます募っていった。

彼は一歩を踏み出す勇気と同時に、正しい方向を見失わないようにする必要があると感じていた。


廃墟の中を進む中、彼は過去の出来事を振り返り、人々がどのようにして分かれてしまったのかを理解しようと努めた。

感情の葛藤や違いを乗り越え、共感の架け橋を築くことができれば、未来がより良いものになるかもしれないという希望を胸に秘めていた。


「このままでは何も変わらない。どうすれば良いのか、答えは見つかるのだろうか?」と彼は不安定な心情を抱えつつも、自らの信念を貫くことと、他者との理解を深める努力を怠らないことの難しさを痛感していた。

レオナの冷徹な態度に対する疑問が心を揺さぶり、同時に彼女の言葉がなぜそこまで厳しいのかを理解しようと試みていた。


「このままでは何も変わらない。どうすれば良いのか、答えは見つかるのだろうか?」と彼は自問しつつも、同時に新たな可能性が広がっていることにも気づいていた。廃墟の中で出会った人々の生存に対する切実な願いや苦悩が、彼に別の視点を与えていた。


彼はレオナとの対話を通じて、異なる価値観や立場が交わる中での葛藤と理解の難しさを学んでいた。

一方で、彼の心には他者との協力や対話を通じて未来を切り拓く可能性が広がっているという希望も灯っていた。


「もし協力や対話が難しいのなら、私はどうすればいいんだろう?」と彼は再び自問する中で、解決策を見つけるための模索が続いていた。

彼は心の中で善悪の境界線が曖昧なこの状況での適切な判断を求め、同時に他者との連帯を築くことの難しさを感じていた。


「この矛盾した感情とどう向き合えばいいんだろう?」と彼は心の中で問いかけながら、新たな局面に立ち向かう決意を固めていった。

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