デスゲームでエンドコンテンツに挑む者

佳奈星

デスゲーム&メタフィクション

Prologue:[小説&ゲーム]世界転生

第1話 エンドコンテンツ

<『紅冥神刀』レベル98 の強化に成功!>


 夢かと思った。

 まさかの強化成功確率0.01%を一発で成功させたのだ。

 興奮しない方がおかしい。


「ま、マジか……マジかッ!!」


 ボクは手に汗を握っていた。

 没入型VRMMOのアバターがあるだけで、汗なんて実際に出てはいないものの、それだけの熱は確かに感じていた。


 VRMMOゲーム『召喚士と七大神殿』……通称『サモテン』はクソゲーとして有名だ。

 元はコアなファンの多いWeb小説が原作らしく、ユーザー数もかなり少ないが、コンテンツには恵まれたゲームだった。


 ユーザー達は、舞台となる迷宮学園の生徒となり、付属するダンジョンへと挑む。

 そこでモンスターを捕獲したり、撃破したりして、深層を目指すゲーム。


 コンテンツだけ聞けば単純に面白そうなゲームだが、ダンジョンの難易度は地獄だった。

 全世界のユーザー含めて、到達が確認された最深部は55層。


 そしてボクが今挑んでいるのは、装備カードの強化。

 それもオープンワールドに9つしか存在しないユニークな装備カードの1つである★6の超越装備『紅冥神刀』の強化である。


 本来、装備カードのレベルを上げる為には同名カードを合成するのだが、唯一無二のカードである超越装備を強化するには、同属性の★5装備カードを10枚消費しないと強化できない。


 強化が可能といっても、強化成功確率というものが存在し、失敗しても素材は消費してしまうという鬼畜仕様。


 しかし、強化失敗の度に強化成功確率は倍になるから、時間をかければいつかは成功する。


 とはいえ、レベル97の強化成功確率は驚異の0.01%……その時点で、とんでもない難易度だとわかるだろう。


 ――すなわち、エンドコンテンツである。


 今回の強化で、レベル98に到達し……次の強化成功確率は天元突破の0.001%である。

 通常の装備カードのカンストレベルは99であるが、9つの超越装備カードのカンストレベルは不明。


 前人未到の挑戦……検証へと、一歩手前まで至ったのだ。

 ★5モンスターカード『英雄シェナ・アンリース』に装備スロットに『紅冥神刀』を装備させ、ランキング選へと挑む。


 ボクのランキングは3位。

 1位と2位との間にプレイヤースキルの差は殆どない。

 ただボクは★6のモンスターカードを持っていなかった。


 元々★6のモンスターは捕獲不可能なので、★5モンスターカードの★を上げるしかないのだが、ボクは超越装備カードの強化を優先して、素材が足りなかった。


 『紅冥神刀』をレベル99にしたら、『シェナ』を★6に上げる。

 そうすれば、ランキング1位も目前だろう。


「あと少し……あと少しで……ボクが一番だ」


 元々、ゲームなんて一切してこなかったボクが唯一ハマったこのゲーム。

 負けず嫌いの性のせいか、廃人のように続けていた。


 ……その日の夜は、眠れなかった。




 そんな昨日の出来事が、忘れられない。

 帰りのホームルームにて、ボク――四宮誠司は、待ちきれなかった。


「先生来なくな~い?」


 クラスメイトの声に、我に返る。

 確かに担任教師が中々現れず、教室内では皆が雑談して待っている状態だ。


「誠司~、一緒に帰らん?」

「ネネカか。今日は帰ってすぐやらないといけないことがあるから、また明日な」

「んもぅ、じゃあ明日絶対約束だからね!」

「おう!」


 自分で言うのもなんだけど、ボクはクラスの中心の陽キャってやつらしい。

 家ではゲーム廃人だけど、学校では成績優秀、スポーツ万能だし、それなりにモテた。

 どうにも今は彼女を作る気にはなれなかったけど……友達はとても多いと思う。


 とはいえ、クラス全員と仲が良い訳ではない。

 ふと、クラスの隅にいる五条カミトや、九重ユノを一瞥する。


 五条はクールでカッコいい隠れファンもいるイケメンだし、九重は物静かで可愛らしい姿が上品だと評判の2人。


 もうすぐ一年三学期も終わるというのに、結局彼らだけとは仲良くなれなかったと悔やむ。


 まあ……ボクは放課後の時間を『サモテン』に費やしていたし、仕方ないな……なんて開き直った。

 ゲームが落ち着いたら、またアタックしてみればいい。

 別に、彼らがいじめを受けている訳じゃないからな。


 というか、このクラスは殆どが仲良しだ。

 みんな美男美女の集まりだし、特にアイドル的存在である瀬乃スミなんかは、インフルエンサーとして国内屈指の人気を誇っている。


 『サモテン』が一息吐いたら、ボクももっと青春してもいいかもしれない。

 恋愛だって……もう一度考えても――――


 なんて考えたその時――教室の扉が開く。

 ようやく担任教師がやってきたかと思ったが――――……。


「眩しっ」

「な、なんだこれ」

「先生? せんこー……! なんだこれぇ……」


 そこから謎の白い光がボク達を包んだ。

 クラスメイト達の声も消えゆくように消え……気付けばボク達は、真っ白な空間にいた。











୨୧┈••┈┈┈┈┈┈┈目録┈┈┈┈┈┈┈••┈୨୧


・『カード』

 モンスターカード、装備カード、アイテムカードの三種。

 ランクは★★★★★(+★)存在する。

 同じ合成により強化可能だが、合成時に、確率で消滅する。

 実は、合成コストは同名カードよりも、使用マナ数の方が重い。


୨୧┈••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••┈୨୧


ラブコメです。よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る