n回目の

不細工マスク

問1:ホワイトチャペル連続殺人事件

真っ白な部屋、奥行き,高さ,幅ともに5メートル。窓もなくドアもない、空気ダクトらしき物すらない。いやそんな事よりも、?ここまで来た経緯も自分の名前さえも分からない。ということはここは夢の中なのか?いいや、夢にしては出来すぎてる。


そんなふうに考えていた時、目の前にディスプレイが見えた。

「『ようこそ、プレイヤー1』…?」


このディズプレイは宙に浮いていた。横を見ても下を見ても上を見てもどこにもプロジェクターが見当たらない、一種のゲームUIのようだ。ディスプレイの文字が変化する。

『これから貴方様には謎解きゲームをしてもらいます』


「謎解きゲーム…?」


『これからお出しする6つの事件を解決し、豪華賞品を獲得しましょう!制限時間は1ゲームにつき24時間、ギブアップボタンを押せばゲームは強制終了し貴方様には罰ゲームを受けてもらいます。では豪華賞品獲得を狙ってゲームをクリアしましょう!』


「おいおいちょっと待て、何もわかんねー!何だよ事件て…」


『ホワイトチャペル連続殺人事件』


「『ホワイトチャペル連続殺人事件』…?なんだろう、いや聞いたことあるような…?」


戸惑っていると辺り一体がイギリス風の家らしきものに変わった。

「な、何だ!急に変わった…?」


暖炉に近づいてみると、炎の温かみを感じた。壁や床も見た目相応の感触になっていた。

「ディスプレイヤーで写してるわけではないのか…」


後ろを見るとそこには窓があった。駆け寄って窓を見てみる。外は暗く薄く霧がかかっていた、歩道には人が歩き車道には馬車も走っていた。

「こっちはディスプレイ…なのか?」


机に置かれていた新聞を手に取る、見出しに大きく『ホワイトチャペル 3人目の被害者』と記載されてる。恐らくこれが俺の解かなくてはならない事件なのだろう。突然、誰かがノックをした。

「僕だ、君に言われた通り容疑者を連れてきたよ」


入ってきたのは175cm後半はあるであろう若い男,小太りのあまり裕福ではないであろう男,商人の姿をした細身の男そして薄汚いドレスを着た娼婦だった。入ってきた順番を考えるに175cm後半はあるであろう若い男がさっきの声の主だろう。

「あ、ああ。ご苦労だったワトソン君」


ワトソン?何で彼の名前を知ってる?

「それとこれがスコットランドヤードからお借りした事情聴取書」


「ああ,ありがとう。じゃあとりあえず、皆さんそこのソファに腰をかけてくれ」


渡された資料に目を通す。

容疑者その1、エラン・アイクソン。彼はホワイトチャペルで酒場を経営している。三つの事件が起きたそれぞれの日、彼にはアリバイはなく3人の被害者のうち2人とは面識があった。2人目の被害者とは事件の前日、店で見かけたと店にいた人と本人からの証言は取れている。

「エラン・アイクソンはどちらでしょうか」


「私です」

と小太りの男がそっと手を挙げた。

「念の為の確認ですが、貴方は事件当日店を閉め家で寝ていたと」


「はい、事件があった日は全て体調が優れず早めに寝ようと店をいつもより一時間ほど早く閉めました」


容疑者その2、ウィリアム・サクソン。彼はここ1週間無職で、残った金で毎晩エラン・アイクソンの店で酒に溺れていた。酔った勢いで客と喧嘩や娼婦たちにちょっかいをかけていた。そして容疑者3人とも彼には迷惑をかけられていたとエランから証言が出ている。事件当日は店が閉まっていたので路地裏で寝ていたとウィリアムは証言している。

「えー、貴方がウィリアムさんですね」


「あ、ああそうだ」

声を上げたのは細身の男。


容疑者その3、ジェシー・メイソン。彼女は娼婦で2番目の被害者と口論になったことがある。周りにはよく被害者のことを悪く言い「死ねばいいのに」とも発言している。事件当日はどの日も男と居たと証言しているが、それを裏付ける証言は出ていない。

「最後に君がジェシー・メイソンさんですね」


「ええ、そうよ。全く、警察に取って代わってあのがこの事件を解決するっていうもんだから協力してやろうと思ったのに、見てガッカリしたわ」


「あははは…」

俺が名探偵?そういう設定なのか?っていうか自然に始めてたけど、この人達は誰だ?いや名前は知ってるけど、俺と同じなのか?謎は深まる一方だ。とりあえず目先の謎を解決しよう。


ふと下に目をやると服装が変わっていた。この場所が部屋になる前、俺は上下白の服を着ていた。今はイギリス紳士風の服装だった。胸には何やら手帳のようなものが入っておりその表紙の端っこに記載されてる名前は「Sherlock Holmes」、これが俺の名前なのか?開いてみるといろんな事件の内容やメモが書かれていた。ブックマークが敷かれているページを開き読む。

被害者は3人、どれも娼婦。凶器はナイフで死因は大量出血死だ。遺体はどれも内臓の一部が持ちさらわれている、か。これが事件の概要だろう。どーにも証拠が無さすぎる。

「ホームズさん、これが凶器です」


「サンキュー、ワトソン君」

受け取ったのはハンカチに包まれた血濡れのナイフ。

「ヤード側はこれ一本しか見つけられなかったと言っていた。多分他は川に捨てたんだと思う」


「そうか、これぽっちか」

いやー証拠がこれだけなのは難しい。この時代の技術だと指紋鑑定も出来無さそうだしなー。

「3番目の被害者を発見したヤードの見回りは犯人を見ている。身長は170cm以下の男性で彼は黒のコートを着ていたと、そして見つかったと分かった途端に路地裏に行方をくらませた。その時警官はナイフを置き忘れて行ったのを見つけ回収したらしい」 


整理しよう。被害者Aは店主のエランと酔っ払いのウィリアムと面識がある。そして彼女はウィリアムにちょっかいをかけられた翌日の夜殺されてる。被害者Bは容疑者全員と面識があり、彼女もまたウィリアムにちょっかいをかけられていたがちょっかいをかけられたの第一の事件前日のみ。あの日以降、彼らは会っていたない。ジェシーと口論になったのは事件が起きる数週間前。そして被害者Cはウィリアムとのみ面識があり事件の2日前にウィリアムがちょっかいをかけた。そしてアリバイだが、店主のエランは事件の日、体調が優れず早めに店を閉め寝た。ウィリアムはここ1週間住む家を追われ路地で寝ていた。ジェシーは事件当日全ての日男と一緒にいたと。この中に嘘をついてる人間が居る。全員が怪しく見えてきたぞ、クソッ!

「あと一手、あと一つ決定的な何かが分かれれば…」


そこに突然男が1人ドアを開け入ってきた。長身の細身で目にクマを作った男。身だしなみからしていい職場で働いているのだろう。

「ホームズ、ホワイトチャペルでまたもや殺人事件だ。ここにいる容疑者たちは無罪ということが立証された」


「!?それは本当なのかレストレード!」


自然と口から彼に名が出る。ワトソンを知っていたのと同じで彼のことも知っている、スコットランドヤードの警部だ。

「じゃあすぐに向かうぞ、ワトソン君彼らを見送ってくれ」


「そういうと思って馬車を待機させたある、急ぐぞ」


いや待て、この扉の先はどうなってる?最初この部屋になる前は縦横奥行き共に5mしかなかった、そしてこの部屋はどう見ても5mはある。つまりこの壁の先には何もないはずだ、だとすれば彼らはどのようにして入ってきたんだ?まぁいい、この扉を開ければすぐにわかる…

取手に手をかけると周りの風景が一瞬にして変わった。目の前には馬車、周りは濃い霧に包まれたロンドンの街だ。

「おい、ホームズこっちだ」


「あ、ああ」


レストレードにすぐさま立ち寄った、そこには女性の遺体があった。前の事件同様に腹部のあたりが抉られていた。

「これは酷い有様だな」


「ああ、今回は一個前のと違って目撃者はジャックザリッパーを見ていない。もうお手上げだ」


本当に八方塞がりだ。容疑者はこれで全員無罪と確定した。これじゃ本当に… いや、何でゲームオーバーになっていない?そうだこれはそもそもゲームだ。ということはこれには真犯人がいて後々出てくる、だがそれだと期限である24時間以内に出てこないと不自然だ。もう2時間は使った、いやタイマーを見ると移動でさらに1時間使ってる。つまり寝るとその分の時間は差し引かれる。残り21時間か、どうする?とりあえず帰るか。

馬車に向かい扉に手を向ける。場所はあの部屋に戻った。

さぁこれからどうするか、だ。いや何かが引っ掛かる。

ふと目が新聞に行く。

「なぁワトソン君、この四つの遺体の概要を教えてくれるか?」


「え?ああ。まずは…」


ああそういうことか、なるほどな。

「クックックック…」


「おいどうしたんだ?まさか分かったのか!?誰だ、真犯人は誰なんだ!」


「まだだ、。ワトソン君、容疑者たちをここに集めてくれ!ついでにレストレード警部も!」


「はい!」


あぁ何だそういうことか。簡単じゃねぇーか。

「何ですかまた呼び出して」


「まぁまぁ皆さんお座りください」


みんなが席についたのを確認してから話し始める。

「あなた方はこの三つの事件の容疑者としてここに連れて来られた。だが尋問中に第四の犯行が起きあなた方は犯人ではないと決断された。ですが、俺は大きな勘違いをしていた、そう、この部屋には犯人はいないと勘違いをしていた」


「だが第四の犯行時、私たちはこの部屋にいた、違わないか!」


「ええ、いましたとも。少なくともには、ね?」


「つまり、三つに殺人は第四に殺人と無関係と仰りたいの?」


「そうでもあり、そうでもない… 端的にいきましょう、この事件の犯人はウィリアムさん、貴方ですね?」


「じょ、冗談じゃねー!何で俺なんだよ!」


「説明しましょう。この一連の事件には共通点がある。どれも娼婦を狙った犯行そして内臓が抉り取られてた。ですが貴方は直接見たわけではありません、新聞の記事を読んだけだ、だから小さな矛盾が生じた。貴方は自分の犯罪を隠すためジャックザリッパーの犯行に身立てることにしました。ですが新聞ではとのみ記載されていた、実際には狙われた箇所は子宮でした。それも知らずに腹を切り内臓を取り出したのです。他の犯行を見てみてもどれも抉り取られたのは子宮で、第三の犯行は明らかに悪目立ちします。最後に貴方はヤードの警官に見つかり焦ってナイフと重大な証拠を残し逃げました、それが血痕です。貴方はうまく洗い流したと思っていたようですが、シャツの襟の部分と爪の合間に返り血がついている。以上の事から貴方が犯人と断定しました」


「な、俺は悪くない!ちょっとちょっかいをかけただけなのに俺の事を虫ケラ当然のように叩きやがって…あいつが悪いんだ、売春婦の風情でェ!!」


その後ウィリアムはレストレードに連行されて行った。

「やったね、ホームズさん。だけどこれじゃ他の二つの犯行は誰の仕業なんだろう」


ああそれだ。俺はこの事件を完全に解決したとは言えない。これでゲームクリアなのか?

すると目の前に例のディスプレイが現れた。

『Congratulations! 君は無事この事件を解決した!』


「どうやらこれでいいみたいだな」


ゲーム終了と共に部屋が元の白い空間に戻った。

『次のゲームを始めますか?(はい) (保留)』


これがあと5回も続くのか、楽しいじゃねぇか。

「答えはYesだ!」

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