第2話 裏切り

花梨と隼人は周りに誰もいないことを確認して、手を繋ぎ、北の方向にある繁華街を目指して歩いていた。仲良く話しながら歩く二人の姿は、見る人にとっては恋人同士のように見えるだろう。


(まあ、そんなことは…ないだろう)


半信半疑の気持ちでついて行くが、僕はスマホで二人の様子を撮影しながら尾行していた。そして、ある場所で二人が動きを止め、周囲を見回しながらカラオケ店へと入るところを見て、さらに疑念は深まった。


自分も少し遅れて受付し、後を追う。ドアがガラス張りになっているため、外からは明らかに見える。


花梨と隼人が入っている部屋を見つける。二人はキスをしながら、手を繋ぎ、隼人が花梨を押し倒すような姿勢で体を密着させていた。どう見ても不審な光景だ。


中からは、「あぁ、気持ちいい…もっと、もっとして!」「隼人が気持ちいいか?」「うん、もっと…もっと」と聞こえてくる。


(これはうそだろう…。いや、もしかしたらと考えてはいたけど…)


隼人と目が合う。一瞬、驚いた表情を見せたが、すぐににっこりとした顔に変わり、僕を見下すような視線を向けてくる。


「ねえ、私と修也のどちらがカッコいい?」


「そんなのは隼人に決まっているじゃない!」


「それなら、俺と修也のどちらが好き?」


「断然、隼人だよ」


僕は会話の内容とその姿を見て震えながら、故意に涙を流した。


正直、戸惑いや傷ついた気持ちはあるが、今この状況で冷静に演じる事が出来ている修也はこうした刺激のほうが気持ちとしては断然嬉しかった。


そして、隼人の満足そうな表情が見られた僕は、用事がないのでさっさと家へと帰った。


これからの行動を考えて、証拠のカメラもあるし、クラスメイトにバラすか先生に出すか。どちらも悪くはないが、やはりそれらは演じている優しい修也らしいやり方ではない。


(いや、それよりも、あまりにも予想通りの展開に持ち込むのは面白みに欠ける)


どちらのやり方でも結局、隼人と花梨は停学か退学のどちらかになるだけだろう。


どうやら、僕はーーーーーらしい。

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本当の自分を偽り続けてきた俺、裏切られてから本性を現す(改訂) @oraganbaru

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