第3話

「せんぱい、あの、」

「うん?」

「と、といれ行きたくて…」

「どしたの?気持ち悪くなっちゃった?」

「ぁ…ちがくて、ただ、いきたくて…」

言ったら急に恥ずかしい。思わず声が小さくなってしまう。

「そっかそっか、動けないのか。オッケー。あ、でも10分くらい待てるかな?〇〇さんに至急折り返さなきゃで…」

「あ、大丈夫、です…」

「ごめんねぇ!終わったらすぐ行くから!じゃあ切るねー」

10分。今すぐ出せると思っていたのに。ぱつぱつに張り詰めた膀胱が今か今かと縮もうと暴れている。でも、たった十分我慢できないのは大人としてヤバい。間に合ってくれ、祈るように両手でソコをぎゅうう、と押さえる。

「っは、ぁっ、」

ゆさゆさと上体を前後に揺らして、まるで我慢の効かない子供のように落ち着きがない。

(せんぱい、はやくっ、)

まだ来ないのだろうか。きっと俺の体感時間が長いだけ。でも、ほんのさっき気づいた尿意は性器の先まできている。

「ぅ、っ、」

じゅわ…

「ぁ…」

これは手の汗でも気のせいでもない。温かい感触が手のひらを埋める。

じゅぁ、じゅぁ…

「あっ、ぁっ、待って、ゃ、」

握りしめれば握りしめるほど先端から溢れる液体。ズボンとパンツを挟んでいるのに濡れる手。もう、限界。

「っ、ぅ、ふ、、ぁっ!!!」


ダメだ、これは完全に「失敗」する。

じゅぁ、

「まって、ほんとに待てって、」

さっきスポドリが入っていた空のペットボトルを慌てて掴んで、もう片方の手でソコを揉みくちゃにする。ベルトを外さなきゃいけないのに、ちゃんと服から出さないといけないのに。

「ひぃっ、」

震える両手でかちゃかちゃといじっている間にも、閉め忘れた蛇口みたいにジュワジュワと染み出して。半泣きだった。我慢の効かない体が怖くて、恥ずかしくて。

「ぁっ、んひぃっ、やだぁ、」

ズボンを剥がして、パンツを捲った瞬間。冷気がスゥッと先端を掠め、溜め込んでいたものが噴き出した。びちゃりと放物線を描いたフライングは、少し遠くの地面を濡らす。慌ててそれをあてがうと、行き場を見つけた尿は勢いよくペットボトルを叩いた。

「ぁふぅ、で、た…」

後ろのベッドにもたれて、足の力が抜けてダラリと伸びてしまう。

しぃぃぃ…

甲高い音が部屋に響く。やっと出せたっていう解放感で、何も考えられない。下着はびしょびしょだし、ズボンも湿っているけど、黒だからバレないし、床も頭の上に乗っけてもらったタオルで拭けそうな量。持ち帰って洗濯してこっそり返そう。

 なんて思っていた矢先。

「え…?」

手が、温かい。それも、濡れて。

「…あっ、ぁぁっ、」

200mlの容量は蓋までいっぱいに埋まって、小さな水流となって、脱いだパンツを濡らした。

(まだっ、でるぅ…!)

容器を置いて直接ソコをぎゅうう、と押さえる。でも、一度出始めたものは早々簡単に止まってくれない。下ろしたパンツもズボンも貫通して、じわじわと水溜りを広げてしまう。

やっと止まった頃にはそこは「お漏らし」の光景で。どう足掻いても言い逃れはできない。

「やっちゃった…」



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