雨傘のアイドル

トマトも柄

    雨傘のアイドル

「今日も雨か……」

 男がぽつりと呟く。

 この街はちょうど梅雨時期に入っており、ずっと雨続きである。

「これだけ雨が続くと気が滅入めいるな」

 そう言って男は傘をさして移動を始める。

 そこで一人の女の子が目の前に歩いていた。

 その女の子は雨でも元気そうに歩いている。

「はたかちゃん?」

 男は女の子に声をかける。

「あ! 宝才ほうさいさん! ここで会うなんて奇遇ですね!」

「ちょうど営業していてね。 今終わって帰るとこなんだよ」

「え!? じゃあ新しい衣装見れるんですか!?」

 はたかちゃんは目を輝かせて宝才に話す。

「いやいや! 一応こっちにも守秘義務ってのがあるからこれ以上は話せないよ。 まぁ今後のお楽しみって事でね」

「それは楽しみ!」

 はたかちゃんは笑顔で楽しみにしているのが見て分かる。

「あ! そういえば宝才さんに渡すのがあるんですよ」

 そう言ってはたかちゃんが鞄からせっせと物を出して宝才に渡す。

 渡したのは一枚のチケットだった。

「今度ライブをするんですよ! 良かったら来てください!」

「お! これは俺が協力した衣装のライブのか。 これは楽しみだ! けれど……」

 宝才は笑顔を見せたが、その笑顔はすぐに消える。

 そして、雨雲の方を見上げた。

 そう、そのライブは屋外のステージなのだが、このところの雨でしばらく晴れになる予定はないとの事だったのだ。

「大丈夫ですよ! ちゃんとおまじないもかけてありますんで」

 宝才の問いにはたかちゃんは笑顔で返していた。

「じゃあライブ見に来てくださいね! 待ってます!」

 そう言ってはたかちゃんはそのまま上機嫌で帰っていった。

 宝才はおまじないの言葉に疑問を思いつつもその時に分かるかなと軽い考えを持ちながらそのまま帰った。



 そしてライブ当日になり、会場では人が賑わっている。

 だがあいにくの雨で会場にいるみんなは不安そうにしている。

 もちろんその宝才もその内の一人だった。

 宝才は不安に思いながらも会場に入る。

 そうするとスタッフからチケットの確認とともに傘を渡されたのだ。

 雨だからやっぱり濡れないようにの配慮なんだなと思いながらライブ会場を見る。

 そうするとまだ始まってもいないのにはたかちゃんがライブ衣装姿でステージにいたのだ。

 そして、雨傘を持ちながらポーズを取ったりと色々していたのだ。

 会場にいる全員が傘を持っており、みんな傘をさしてライブステージを見ていた。

 そしてライブが始まった。

 はたかちゃんの第一声が、

「みんなー! 傘は持ったかなー?」

 とみんなに問いかける。

 そうするとみんなは持ってるよという合図を傘をさして見せていた。

「今日のライブ会場はみんなで傘を持ってライブを楽しんで下さい! 大丈夫! おまじないはかけてありますんで!」

 そして、はたかちゃんは傘をさしたままで歌い始めたのだ。

 今日の全てのパフォーマンスは全て傘をさしたまま行ったのである。

 そして会場のみんなも傘を持って動きを最小限に抑えながら応援をしている。 

 そうすると雨が上がっていき、どんどん晴れ間が見えてきたのである。

 そして雨が上がって上空には青空が広がっていた。

 けれど、みんなは傘を離さなかった。

 今日は傘を使ったパフォーマンスのライブ会場。

 みんなは傘を渡された時点で気付いていたのだ。

 そして大盛り上がりの中ライブ会場は終了した。

「みんなのおまじないのおかげでこんなに綺麗な青空が広がってるよ! みんなありがとう!」

 はたかちゃんはお礼を言ってライブは大成功で終わったのである。



 宝才はライブ会場を後にしようと傘を閉じようとした。

 そこでふと違和感に気付いたのである。

「傘に何か書いてる?」

 そして傘をよく見てみると、

「なるほど! これがおまじないか」

 傘の上に目と口が書かれており、実はみんなの傘はてるてる坊主にもなっていたのだった。






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雨傘のアイドル トマトも柄 @lazily

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