陽一の気持ち

「ショコラ、大丈夫だったか?」


一応撫でられといてやる。


「最近、告白されたんだ。南さんに……」


誰だ、そいつ。

あっ、もしかしてパールの飼い主か?


「好きなのにごめんなさいって言っちゃったんだよな」

「ニャーオ、ニャオ、ニャオ、ニャ、ニャ、ニャ」

「どうした?珍しくめちゃくちゃ喋るじゃん」


《いや、お前が断ったせいで僕がパールに振られたんだよ。今から、付き合いますって言えよ!馬鹿!馬鹿》


陽一には、僕の会話は全くわからない。


「心配してくれてんのか!ショコラ。でもな、うっちゃんが南さん好きなんだよ!うっちゃん知ってるだろ?俺の親友」


うわーー。

よりによって、うっちゃんかよ。

あっ、そうだ。


僕が、部屋を出るとお母さんが珍しく玄関を開けて掃除をしている。

チャンスだ!


「陽一、ショコラ出したら駄目じゃない」

「ニャーオン」

《行くぞ!陽一》

「あっ、待って。嘘嘘行かないで」

「母さんどうしたの?」

「ショコラが出て行っちゃったのよ」

「わかった、追いかけてくるから」


陽一が、僕を追いかけてくるから。

僕は、河川敷まで走って行く。

いつも、ここにパールがいる。


んだけど……。

流されてる。


「ニャーオ、ニャオニャーオ」

《パールを助けて、助けてよ陽一》


僕を流した子供達がパールを流したんだ。


「どうした?ショコラ」

「ニャー、ニャオ」

《いいからついてきて》


僕は、陽一をパールの元に連れて行く。


「猫が溺れちゃう。よく見つけたな!ショコラ」


陽一は、川に入ってパールを助けてくれる。


「ニャオ、ニャー、ニャー」

《パール、パール大丈夫?》


パールの白い毛が赤く染まっている。


「ニャー」

《ショコラ》


弱々しい声で僕を呼ぶ。

一刻を争うよ!

陽一、パールを助けてよ。


「陽一、ショコラ見つかった?」

「母さん、この猫が川で流されてて、それで怪我してる」

「すぐに病院に行かなきゃ!陽一は、ショコラをこれにいれて連れてきて!お母さん、この子連れてくから」


お母さんは、自転車のかごにバスタオルをひいてパールを連れていく。

僕は、陽一にリュック型のキャリーバッグで背負われる。

陽一は、急いで病院に行く。


「母さんどうだって?」

「瀕死の状態だって。あの子の飼い主さんは?」

「知らないよ。初めて見たから」

「えっ……。どうしよう」


ブブッ……。

陽一のスマホが震えた。

ここからじゃ、画面が見えないからイライラする。


「わかった。今の猫、南さんのだ」

「どうしてわかったの?」

「うっちゃんから、画像が来た。昨日の夜からパールが帰ってきてないって写真つき」

「本当だわ!この子よ。すぐに南さんにかけてあげて」

「わかった」


陽一は、パールの飼い主に連絡をしてくれたみたいだ。

しばらくして、パールの飼い主がやってきた。

泣き腫らした目。

不安だったのが、すぐにわかった。

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