episode1-33 切り札

□□□□□□□□□□□□□□□□

【Name】

 氷室 凪

【Level】

 55

【Class】

 菓子姫

【Core Skill】

 ☆君臨する支配

【Derive Skill】

 ◇菓子兵召喚 Lv4

 ◇フレームイン『チェイン』 Lv1

 ◇星杖起動 Lv1

 ◇マスカレイド Lv1

 ◇お願いカミサマ Lv1

 ◇特権的我儘 Lv1

□□□□□□□□□□□□□□□□



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【Name】

 ゼリービーンソルジャーズ・ブラック

【Level】

 25

【Class】

 召喚獣

【Skill】

 闇属性耐性 Lv2

 闇渡り Lv3

【Tips】

 ゼリービーンズの黒い兵隊。

 蜜蝋を固めた表皮はとても頑丈。

 お菓子のお姫様に仕えている。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【Name】

 ゼリービーンソルジャーズ・ブラック2

【Level】

 12

【Class】

 召喚獣

【Skill】

 闇属性耐性 Lv2

 闇渡り Lv1

【Tips】

 ゼリービーンズの黒い兵隊。

 蜜蝋を固めた表皮はとても頑丈。

 お菓子のお姫様に仕えている。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【Name】

 ゼリービーンソルジャーズ・イエロー

【Level】

 10

【Class】

 召喚獣

【Skill】

 地属性耐性 Lv2

 鉄壁 Lv1

【Tips】

 ゼリービーンズの黄色い兵隊。

 蜜蝋を固めた表皮はとても頑丈。

 お菓子のお姫様に仕えている。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【Name】

 ゼリービーンソルジャーズ・パープル

【Level】

 11

【Class】

 召喚獣

【Skill】

 雷属性耐性 Lv2

 ライトニングチャージ Lv1

【Tips】

 ゼリービーンズの紫の兵隊。

 蜜蝋を固めた表皮はとても頑丈。

 お菓子のお姫様に仕えている。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

【Name】

 ゼリービーンソルジャーズ・ホワイト

【Level】

 10

【Class】

 召喚獣

【Skill】

 光属性耐性 Lv2

 癒しの光 Lv1

【Tips】

 ゼリービーンズの白い兵隊。

 蜜蝋を固めた表皮はとても頑丈。

 お菓子のお姫様に仕えている。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 かなり急ぎ目に流し見た中で10の倍数のレベルに到達していたのはこの五体。鉄壁、ライトニングチャージ、癒しの光はノーマルクラスも覚えるスキルだから内容は知っている。

 今の状況で役に立ちそうなのは、攻撃に雷属性を付与し高速で突きを繰り出すライトニングチャージくらいだ。鉄壁は物理耐性を大きく高めるスキルのためエルフ相手に使っても意味がない。癒しの光は敵味方の区別なく光を浴びた対象を回復するため、使おうとするなら加賀美を一度下げる必要があるが、それは無理だ。戦線が崩壊する。

 ブラックの闇渡りがLv3になってるのは、スキルポイントで上げた潜伏対象+1のほか、レベルアップで自然に上昇した分だ。範囲が2倍に拡大したようだが、現状では大きな意味はない。それよりも、ブラック2が闇渡りを覚えていることの方が大きい。さっきの台風球解放で重複召喚のゼリービーンソルジャーズはブルー以外全滅したと思っていたのだが、このブラック2は解放の瞬間に闇渡りを使って身を隠していたらしい。そして桜ノ宮からの状況報告と合わせて考えると、今もなお身を潜めている。これは使えるぞ。


「如月とブラックは合図があるまでそこから動くなよ」

「わかってるよ。何回言う気?」


 切り札である如月とブラックはセットで後ろに下げており、エルフの視界に入らないよう玉座の裏にいるよう細かい位置取りまで指定している。これなら視覚を頼りに闇渡りの発動を確認することは出来ないからな。

 作戦会議中も繰り返し念押ししていたせいか如月の声は明らかに辟易しているが、万が一にも失敗は許されない。ブラック2を活かそうとするのなら、こいつらの姿を隠しておくことの重要性は更に高まる。




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

☆特権的我儘 Lv1

一定時間フィールドを強制変更する。

持続時間 5m

効果範囲 直径500m

・クラッカーフィールド

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 残るはこの特権的我儘だが、ハッキリ言って意味が分からない。フィールドを強制変更するスキルなんて聞いたこともない。そもそもフィールドとは何を指してるんだ? 地形か? 菓子兵召喚はまだ召喚系スキルの一種だと考えて傾向の予想や運用方針を決めることは出来るが、このスキルはどう使うべきなのか直感的に理解できない。

 クラッカーフィールドというのが変更先なのだとしら、地形をお菓子に変えるスキルということなのだろうか。 

 例えばこのダンジョンがマグマに満ちているとか水中だとか、特殊な環境で立ち入ることすら難しいというような状況なら地形を変えるというのはかなり有効な気がするが、今この状況でクラッカーフィールドとやらに変えて何か意味があるとは思えない。ⅯPの無駄遣いをしている余裕はない。このスキルの検証は後だ。


「マスカレイド・スパイダー!!」


 強化フォームが自然に解除されるよりも早く、加賀美が顔を手で覆い別のフォームへと変身した。灰色のクモをモチーフにしたようなスーツだ。攻防中に初期フォームに戻るのは危険だと判断したのだろう。スパイダーを選んだのはエルフのスピードについていくためか。元より如月の魔法で止めを刺すという作戦であり、マンティスの殺傷能力は必要ない。さらに、メイジーとエレメントが引き剥がされたため、ビートルの装甲で受けるよりも瞬発力で回避するべきだと判断したのだと思われる。


「××」

「××××××××!」


 メイジーの殲滅を終えたゼリービーンソルジャーズが援軍として加賀美のもとに駆けだし、壁裏から顔を覗かせたその時、ゼリービーンソルジャーズ目掛けて巨大な何かが落下した。


「ちっ、そう使うか!」


 ゴーレムだ。各壁の裏にはゴーレムが一体ずつ配置されており、9時と10時の方角は恐らく最初のライトニングで倒せたのだと思うが、あの11時の壁の裏にはまだ残っていた。動きの鈍いゴーレムなど遠距離の撃ち合いでもなければ戦力に数える必要はないと考えていたが、動きが鈍いと言っても自由落下に任せればそれなりの速さにはなる。ベッドに倒れ込むかのように、あのゴーレムはゼリービーンソルジャーズに向かってダイブしたんだ。


「××、××」


 咄嗟にライトニングチャージを発動することでゴーレムの下敷きになるのを唯一免れたパープルが、勢いのままにエルフへと高速の突きを繰り出すが、辿り着く前に放たれた炎の魔法によって全身がドロドロに溶けて崩れ落ちた。


「化け物めぇ……!」


 あの短い詠唱で、完全な君臨する支配のバフを受けたゼリービーンソルジャーズが一撃。あれじゃあ何体いたところでゼリービーンソルジャーズは正面から戦うことは出来ない。実力に大きな差があるのはわかっているつもりだったが、ここまでとはな。

 加賀美の奴がエレメントやメイジーの魔法は直撃してもエルフの魔法だけは避けるなり弾くなりしていた理由がよくわかった。あれは受けるわけにはいかない。




□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

◇菓子兵召喚 Lv4→Lv5     『SP 1』

解放する権能を選択してください。

▶召喚獣「エクレアドッグ」の解放(要:現在Lv5)

▶同時召喚数+1

▶重複召喚数×2

▶召喚獣強化

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


 残り1ポイント、重複召喚を更に解放することも考えていたが、数を揃えても意味はない。シロップスライムなんて良い的だろう。エクレアドッグとやらはまだ解放できない。同時召喚数を解放しても意味がないし、今更召喚獣を強化したところでまともに戦えるのが残っていない。


 カミサマは順調にエレメントの数を減らしているが全滅に至っていない。魔法攻撃が来る可能性がある以上沖嶋は動かせない。


 クソ! やっぱりやるしかないのか……!

 これだけは避けたかったからこんなギリギリの戦いをしたというのに。


 ……だが、死んでしまえばそれまでだ。


「加賀美ー! 引きつけろ!!」

「っ!? ちょっと氷室くん!?」

「氷室!! まだ5分ちょいしか――」

「俺を信じろっ!」


 これは最後の作戦開始の合図だ。エルフに止めを刺すため、最後の一撃をお見舞いするための。

 後ろにいる桜ノ宮と如月から困惑の声が投げかけられるが、説明を放棄して指示を出す。下手をすれば次の一瞬には加賀美が死んでいるかもしれない。そうなればもう、勝ち目はない!


「信じるぜ氷室ォ!! ブレイクマスク!!」


 肝心の加賀美は何も聞かず、動揺することすらなく、即座に作戦を実行に移した。

 スーツのところどころに刻まれているラインから煌めく光があふれ出し、何かするつもりだということを明確に表している。


 加賀美曰く、ブレイクマスクとは残存する全てのエネルギーを集結させて放つ最後の一撃。いわゆる必殺技というやつだ。使用後は変身が解除され身動き一つ取れなくなる。失敗すれば死は確実。

 改めて思うが、よくもまあ大して知りもしない俺に命を預けられるものだ。全くもって大した奴だよ、加賀美。


 経緯を表そう。


「如月! いつでも撃てるよう身構えとけ!!」

「どうなっても知らないかんね! もー!!」


 加賀美の身体から輝くような白い糸が勢いよく射出されエルフへと迫る。スパイダーフォームは本来俊敏性とこの粘着質の糸を用いてトリッキーに戦うスタイルらしいが、この瞬間のために、糸という選択肢を警戒させないために使わないよう指示していた。


「××××××――」


 エルフはそれを回避するのではなく迎撃するつもりなのか、早口で詠唱を始める。それならそれで良い。


「行け!!」


 これは本来の計画にはない一手。だがわかるな? 俺の召喚獣であるお前たちなら、この計画と違う合図の意味が。


「討て」


 そして最後の合図を、本来の合図を呟くように告げる。

 次の瞬間、エルフの背後、地に落ちる影から黒色のゼリービーンソルジャーがぬるりと姿を現す。


「――××××!」


 それは一度見たとでも言うように、エルフはその一撃が来ることを予想していたのか、魔法による炎の鞭で糸を焼き払いながら、振り返りざまにその鞭を背後に叩きつけた。回避ではなく詠唱を選択したのは最初からそのつもりだったからだろう。

 そして、さらにエルフは身体を一回転させながら、自分に迫って来ているであろう加賀美を迎撃しようと鞭を振りぬく。当然そう考えるよな? そのために必殺技を発動させたんだ。何か仕掛けてくるとお前が思うようにな。

 残念ながら、加賀美はその必殺技の出力をお前に叩きつけるのではなく、その場から離脱するのに使用した。理由は単純だ。もっと強力な一撃を持つ奴が、他にいるから。


 すぐに加賀美に対処するため、炎の鞭を叩きつけた相手を確認する暇はなかっただろう?

 そこに如月りりという、破滅的な力を持つホルダーがいないことに気づかなかっただろう?

 そして今、まさにたった今背後に現れた、己の影から這い出たその存在に気づかなかっただろう?




「イけ、怪物」


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

◇星杖起動 Lv2 

如月りりの異能「星の杖」を強制起動する。

▽星の杖

星の記憶を読み取り魔法を再現する装置。

使用には星の記憶を書き込んだメモリーカードと、

魔力を蓄えた魔石が必要となる。

・連続詠唱+1


【魔力残量】

89/100(m)


【カードスロット】

・Fly(1m/1m)

・StrongFirst(1m/1m)

・Lightning(1/5m)

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


「オーダー! ライトニング!!」

『accept,Lightning』


 力強い詠唱と、抑揚のない機械的な承認と共に、光が満ちた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る