アルティメットお気持ち表明

小狸

短編

 小説を投稿するために、公式サイトへとログインすると、通知欄が赤く光っていた。


 こんなコメントが届いていた。


 以前から私の投稿する小説に、コメントを寄せてくれる方からのものであった。




『私は、あなたの作品を昔から読んでいます。


 あなたは、自作品で良く親に対して子が復讐するというような暴力的、制裁的な表現が目立ちます。


 特にこの小説では、子が親を殺すという結末になっています。


 先日、私は父を亡くしました。

 

 私の家族は、円満だったと自負しています。


 というか、普通の家庭は、そうです。

 

 にも関わらず、あなたのような影響力を持った方が、そういう作品を書くと、誤解を招くと思います。

 

 少なくとも、そういう人に対する配慮が、足りないと思います。 


 前述の通り、私はあなたの作品の読者でした。


 が、これを機に読むのを辞めようと思います。


 読者が減りましたね、ざまあみろ』




「……………」

 


 私も、乱文乱筆ご容赦ということで、誤字脱字は極力少ないようにしているけれど。


 『かかわらず』の誤字はないよな、と思う。


 推察するに、相手も頭に血が上っていたのだろう。


「さて、どうしよっかな」

 

 このコメントに対し、どのような対処をしようか。


 時に。


 創作の界隈だけでなく。何かを突き詰める際、こういう決まり文句を聞いたことがある。




 

 

 、と。




 私はそうは思わない。


 傷付けば強くなるなんて、嘘だ。


 傷口から血が、感情が、こころがあふれ出て、いずれ何もなくなる。


 になる。


 そうなった人を、私は何人も知っている。


 だから私は、戦わない。


 争わない。


 土俵に上がらない。


 自分を、守るために。


 私は、そっと。


 そのコメントが他の人の眼に触れないように非表示にして。


 その投稿主をブロックしようとしたら。


 既にブロックされていた。


「……あっそ」


 仕事休みの土曜にしては、何だかもやもやしたので。


 こんな気持ちも、物語にしてしまおうと思った。


 うっせえ。


 好きで書いてんだよ。




(了)

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