第25話 アレを買うことができるな

 冒険者ギルドから、今回の強制依頼の報酬が入った。

 さらに活躍を認められ、冒険者ランクをFからEにあげてもらうことができた。


 報酬のお陰で現在の所持金は300万ゴルドを超えている。


「この金額ならあればアレを買うことができるな」


 装備を更新するのも重要だが、それよりも先に入手しておきたい必需品があった。

 俺は道具屋へと足を運ぶ。


 ポーションや魔物寄せの笛、煙幕玉などが置かれている中に、それを発見する。


「あった。〈アイテムボックス〉だ」


―――――――――

〈アイテムボックス〉アイテムを保管しておける袋。計10種類まで保管可能。ボックスなのに形状が袋なのはご愛敬。

〈アイテムボックス・上質〉サイズはそのままに、より多くのアイテムを保管しておけるようになった上質な袋。計50種類まで保管可能。

―――――――――


 ゲーム時代のグラワルでも、この〈アイテムボックス〉を持っているかいないかで、プレイアビリティ(=遊びやすさ)が段違いだったが、現実化したこの世界ではそれ以上だろう。


「なにせアイテムは全部、持ち歩かなくちゃいけないわけだからな」


 できるだけ手持ちを少なくしてはいたが、特に〈ウィンドソード〉、〈鋼の剣〉、〈暗闇のナイフ〉、〈血濡れのナイフ〉と、四本の武器が非常に邪魔だった。

 しかも重いと敏捷にも影響が出る。


 なので要らないものは全部売り払っていて、〈上等な布の服〉は2万ゴルドで買い取ってもらえた。


「〈アイテムボックス〉は50万ゴルドで、〈アイテムボックス・上質〉は400万ゴルドか。グラワルでも店やタイミングによって値段が上下したが、ちょっと高めだな……」


 なお、この上に〈アイテムボックス・特上〉もあるはずだが、こんな店に置いているような代物ではない。


「くっ……できれば上質の方が欲しいんだが、金が足りない……どのみち後で確実に上質が必要になるのに……」


 俺は仕方なく通常の〈アイテムボックス〉を選んだ。


「まぁ、もう少しレベルが上がっていくと、4、500万くらい簡単に稼げるようになる。また貯まったら買おう。他にも買っておきたいものがあるしな」


 同一種類のアイテムは、10個まで入れることが可能だ。

 つまり10種類まで保管可能なら、最大で100個まで保管ができるということである。


 大きさについては無視されるので、石ころも10個までだし、大型の盾でも10までだ。

 ただし生き物と、家や馬車など大き過ぎるものはアイテムと判断されず、保管することはできない。


 早速〈レッドキャップ〉〈ウィンドソード〉、〈暗闇のナイフ〉、〈血濡れのナイフ〉、それから〈ポーション〉二本を〈アイテムボックス〉に入れる。


 装備は〈盗賊の服〉と〈鋼の剣〉、そして〈疾風の腕輪〉と〈頑強の腕輪〉だ。


―――――――――

〈疾風の腕輪〉風の魔法を付与された腕輪。敏捷+15

〈頑強の腕輪〉土の魔法を付与された腕輪。防御+15

―――――――――


 この腕輪はセレスティア王女から褒美としてもらったものだ。


 実はゲームでは、三種類の腕輪の中からランダムで一種類しかもらえない。

 だが、この現実世界はゲーム時代より明らかに自由度が高くなっているのでダメもとでお願いしてみたら、二つくれたのだ。


 さすがに三つはくれなかったが。

 ……王女なのにケチだよな。


 どちらも今のレベルでは非常にありがたいアイテムである。

 なお腕輪は二つまで装備可能で、それ以上を装着してもただのファッションになるだけで特殊効果は発揮されない。


〈アイテムボックス〉を入手した俺は、続いて魔法屋へとやってきた。

 ここはその名の通り、魔法関係のアイテムを販売している店だ。


 店頭に並んでいるのは、杖やMPを回復させるための〈マジックポーション〉、魔法使い用の服などなど。

 店の奥、カウンターの向こうで眠そうにしていた眼鏡っ娘の店主に訪ねる。


「魔導書を見せてくれないか?」

「ほえ? あ、はいはい、魔導書ですねー、って、お客さん、見たところ魔法使い系には見えませんねー? 魔法を使えない天職だと、魔導書を読んでも意味ないですよー? まぁ私としては商売ですし、欲しいっていうなら売りますけど?」


【魔術士】などの魔法使い系の天職は、魔導書を読むことによって魔法を習得する。

 レベルアップなどではスキルは覚えられても、魔法を覚えることはできないため、習得したい魔法の魔導書を入手しなければならなかった。


 しかし魔法を使えない天職では、眼鏡っ娘店主が言う通り魔導書を読んだところで魔法を習得できない。

 もちろん俺はそれを承知したうえで、魔導書を欲しているのだ。


「ああ、ぜひ売ってくれ。どんなものが置いてある?」

「はいはい、分かりましたー。今はこんな感じですねー」

「ふむ、攻撃系は〈ファイアアロー〉、〈ウィンドカッター〉、〈フリージング〉の三種類か。補助系は〈サンドウォール〉、〈ウォーターフィルム〉の二種類だな」


 各店舗での魔導書の品ぞろえは、ゲームでも頻繁に入れ替わっていた。

 そのため習得したい魔法の魔導書と出会えるまで、何度も根気よく店に足を運ぶ必要があるのだが、


「いきなり悪くない品ぞろえだ。〈ファイアアロー〉と〈フリージング〉の魔導書を売ってくれ」



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