関羽の運命はエリート課長が覆すってよ
魔術師
第1話 樊城の戦い〜初手〜
樊城の戦い、勝っていれば大きく歴史が変わっていたかもしれない三国志後半の山場。だが主将たる関羽は死に、同盟国であったはずの呉とも戦うことになり軍師諸葛孔明の策は大きく方向転換を余儀なくされるのである。
どうすれば樊城の戦いに勝つことができたか、ウチのエリート課長(超敏腕)に聞いてみた。
戦いの背景などを一通り聞いた課長が最初に放った言葉は
「これは関羽の独断専行やな。」
であった。
「根拠は3つや。
①孔明は関羽に守って欲しかったのであって、攻めて欲しかったわけではない。荊州を返す約束を反故にした以上、呉に対しても睨みを利かせとく必要があった。江陵を留守にしたらそりゃ狙われてもしゃーないやろ。だから孔明が知っとったら止めとったはずや。
②襄陽を落とすにしては兵力が少なすぎる。襄陽は荊州の主要拠点や。樊城とも近いし、樊城を落としても襄陽を落とせなければ身動きが取れんようになる。襄陽と樊城、2つの城を落とすには漢中攻略と同等の戦力が必要や。
そして③功績への焦りや。漢中攻略組が多大な戦果を上げとる中、自分は荊州の城の守りや。守りも大切やとわかっとっても、誰それが第一功やったとか聞いたら、蜀のNo.2やと思っとる関羽には耐えられんかったんやろな。私情で兵を動かしても戦には勝てん。これが関羽の敗因や。」
じゃあ、という部下の言葉を遮り課長は続ける。
「どうすれば勝てるかやろ?そうやなぁ、于禁と龐徳を捕えたあたりで一旦退却やな。全速力で江陵に撤退や。
江陵と公安の糜芳と傅士仁には書簡で詫びと脅しを入れといて城門を閉める策に走らんよう牽制しとかなあかんな。
あ、敵兵の捕虜は全部釈放。できるかはわからんけどその捕虜に味方のスパイを千人くらい紛れさせて釈放するのが理想や。三万人の捕虜をぐちゃぐちゃに混ぜたら千人くらいわけわからんようにはできるやろ。魏からすれば味方を救うためにも樊城と襄陽に半々くらいでうけいれるやろうし。いわゆる工作部隊を潜入させとけば後でいろいろ役に立つっちゅーこっちゃ。
于禁と龐徳は江陵に連れて帰るで。敵将をどうするかは劉備に決めさせなあかん。独断専行した反省を示す意味でも連れ帰って劉備に報告がベストや。まず初手はここまでやな。」
夏の長雨によって発生した洪水の影響で関羽軍に敗北した于禁軍。史実ではこの後に関羽は一気に敗北への運命を辿る。課長は初手でこの敗北を覆すために早期退却を決めた。果たして課長は関羽の運命を変え、樊城の戦いを勝利に導くことができるのか。
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