04 “バラの歌”ノアとリリー
10:05、ヴィクタル駅に停車しました。シルバーレーベンとローズウッドのちょうど中間くらいです。
ホームからは、こぢんまりとしたレンガ積みの駅舎が見えます。乗り降りする人は少ないようで、ホームは閑散としていました。
3分ほど停まり、10:08に発車しました。
ヴィクタル駅から2等車のコンパートメントに可愛いお客さんが乗ってきました。
それは母親と男女の幼児が2人の親子連れです。母親はエリザベス、男の子はノア、女の子はリリーと名乗りました。
これから、ローズウッドにある祖父母の家に行くとのことでした。
ノアは活発で好奇心旺盛な性格のようで、最初は大人しく座っていましたが、すぐにコンパートメント内をあれこれ探り始めました。
一方のリリーは、優雅で可愛らしい性格で、ノアのことを静かに見ていましたが、彼やエリザベスに話しかけられると、元気いっぱいに応えていました。
エリザベスはそんな2人を愛情深く見ていました。
そのうちに、ノアとリリーは、この地域のことを色々と話してくれました。
自然豊かなヴィクタルのこと、バラで有名なローズウッドのこと、また、最近の幼稚園で流行っていることなど、話は次から次へと出てきました。
そして最後に、ノアとリリーは歌を歌ってくれました。曲名は『バラの歌』。ローズウッドの美しいバラに捧げられた歌であり、地域の人に愛され、代々歌い継がれてきました。
歌詞はバラの美しさと魔法の力を讃える内容でした。
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『バラの歌』
ローズウッド民謡
バラの花 咲き誇れ
美しき色 輝けど
優しい香り 咲かせて
この地を彩りましょう
バラの歌 奏でよう
愛と希望 共に歩もう
魔法の力 この手に
夢を叶えましょう
バラの蕾 芽吹けば
命の息 吹き込まれ
成長し いつか咲き誇る
誇り高き美の花
バラの歌 奏でよう
愛と希望 共に歩もう
魔法の力 この手に
夢を叶えましょう
ーーーーー
2人が歌い終わる頃には、コンパートメントの周りにこの車両の乗客みんなが集まって、2人に合わせて手を叩いていました。
この曲は、この地域の人にとって大切な曲で、2人の天使のような歌声に、他の乗客たちも穏やかな笑顔で聞き入っていました。
歌い終わると、客車は割れんばかりの拍手に包まれました。ノアとリリーの2人は少し恥ずかしそうにはにかみました。エリザベスはその様子に、感極まって満足げな表情を浮かべていました。
地域の宝の曲を、地域の宝である子供たちが歌う、そんな素晴らしい出来事を乗せて、11:40、列車はゆっくりとローズウッド駅に到着しました。
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