第38話 GOJUに入らない?
それを大通連で止めていたのは、駒子だった。
「いい加減にして…
式神を使うのなんて卑怯よ…」
「邪魔すんじゃねぇよ消えろ」
それでも鋭く目を逸らさない駒子に、
虎太郎はグッと奥歯を噛んで刃を下ろした。
「来い、トラ」
三頭だった虎が瞬時に重なって一頭の大きな虎になった。
「虎太郎様。よいのですか?小通連は目の前ですよ」
頬を擦り寄せながらそう言う虎に、虎太郎は頭を撫でながら鼻で笑った。
「いつかぜってー取ってみせるから待ってろ」
「いや、キミ!虎太郎くん!」
突然和巳が声を出した。
俺はギクリとする。まさかまた……
「キミもチームGOJUに入らないかい?」
やはりアノ和巳が発動されていた。
当然、虎太郎は目が点になっている。
「チームGOJUってのは、大嶽丸を倒すために結成した五十師集団のことだよ!」
「大嶽丸っ、だとっ?!」
やはり虎太郎もその存在は知っていたようだ。
「うん、そう。最強の鬼神だよね。
だから僕らはガーディアンズ・オブ・ジャパン・ユニットを結成して大嶽丸を倒し、日本を救おうというわけさ!協力してくれ!虎太郎くん!」
「…………。」
俺の額に冷や汗が流れる。
絶対この人、なんだそりゃってなってるよ今。
けど正直俺も、この人の力は借りたい。
だって……めちゃくちゃ強かった。
式神なんかも使われたら、どう考えても俺は歯が立たない。
しかも、三種の神器まで持っている……!
よし……
俺は眉を釣りあげ、意を決して虎太郎を見つめた。
「……虎太郎くん。入ってくれないかな、俺のチーム。
その草薙剣も必要なんだ。
知ってるだろ?三種の神器。
それを集めて天照大御神様の所へ行かなきゃなんだよ」
「……じゃあ……」
虎太郎は暫く沈思していたかと思えば、口を開いた。
「その小通連、俺にくれんなら、協力してやってもいいぜ?」
「えっ」
「だってこの草薙剣はアマテラスに納めるんだろ?
俺の刀無くなんじゃん」
「あ……。で、でもなぁ、ははは……
実は三明の剣は全部、駒子にあげる約束を今さっきしちゃったばっかなんだよなぁ〜」
苦笑い気味に返すと、虎太郎はピキっとこめかみに青筋を立てた。
「あぁ"?なんだとてめぇ、おい駒子。
調子乗ってんじゃねーぞコラ」
「違うっ……」
「違うってなんだよ。あ?」
「アンタに……あげようと……思って……」
蚊の鳴くような声で呟いた駒子に、虎太郎も俺たちも目を丸くして固まる。
え……?
そだったん??
ていうかその前に……
今更だけど……
「えーと………誰?このヤンキー」
あっと気がついたように駒子が言った。
「弟……なの。異母きょうだい……」
「はっ、てめぇの弟になった覚えなんてねーわ」
「ちょっと君、いい加減失礼すぎる態度やめなよ」
「い、いいよ、和巳…。私はもともと…ここの家の子じゃなくて、後から来た身だし…
正妻の息子に嫌われるのは当然…」
あぁ……そういうこと……
俺は状況が掴めた。
だからきっと駒子だけはあの離れの家に住まわされてるんだろう。
だからってここまで攻撃的にされるか?普通。
仮にも血は繋がってんだろ。
もしかして駒子が大通連を持っているから……?
あれ……でもなんで虎太郎じゃなくてて駒子が持ってるんだ?
聞くの忘れてた。
「……っま、何はともあれ俺はてめぇらなんかのチームには入らねぇよ。
俺には仲間なんてウザってぇもん要らねぇからな。
欲しいもんは自分の力で手に入れてやるわ。」
虎太郎はそう言ってヒョイと虎の背に乗った。
「そう…じゃー、気が変わったらいつでも言ってよ」
俺がそう言うと、虎太郎は不機嫌な顔を貼り付けたままトラに跨ると、どこかへ飛んでいってしまった。
まぁ高校生なんてこんなもんだ。
意外と直ぐに気が変わったりするから気長に待とう。
それにしても……
「虎にトラって名付けるあたり、やっぱりきょうだいなんだなお前らって。ははははっ」
俺が笑うと、誰もが固まっていることに気がついた。
「笑ってる場合じゃないよ昴!」
「へ?」
「昴、めっちゃめちゃ強くてかっこよかった!!」
和巳の目が、まるで憧れの有名人を見るかのように目いっぱい輝いていて、俺はドキッとなる。
「いやぁ〜オレも感動したっすよ昴さん!
まさか虎太郎様相手にあそこまでやれるなんて!」
「フク……そ、そーかな」
フクの褒め言葉に俺は途端に顔が熱くなった。
単純に俺は、褒められ慣れてない。
「フクの言う通り……私も…かなり驚いた…
剣術は……あの子は私より上だから……」
「ま、まぁ、あの子めちゃめちゃ強かったのは否めないけど…
駒子の特訓のおかげだよ」
駒子は一瞬顔を赤くし、俯いたかと思えば、
「ありがとう……」
蚊の鳴くような声でそう呟いたのが聞こえた。
「え……?なにが?」
「私が貶されてる時……怒ってくれて嬉しかった……」
「……あぁー…。」
" 大学デビューの何が問題なんだよ?
友達作ったら何が問題なんだよ?
人を平気で貶すようなお前みたいな奴に、友達なんて言葉を使う資格はねぇし、人間関係をつべこべ言われる筋合いなんてねぇよ。黙ってろ "
「まぁアレは……俺自身が言われた感じがして嫌だったんだよ」
俺のコンプレックスを真正面から逆撫でされた気分だった。
「俺も……友達できたのは、お前らが初めてだから……」
沈黙が流れ、俺はたちまち恥ずかしくなる。
何言っちゃってんだろ、俺。
こんな妙な雰囲気にさせてるし……
ポンッ!
突然、和巳が俺と駒子の肩に腕を回して引き寄せた。
「じゃーこれから友達として!いっぱい想い出つくっていこーね!
辛いときも悲しいときも楽しいときも!いつも一緒だ!」
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