第14話 (グレンツェン)

 羽黒に撃たれた飯野の死体は紫の炎に包まれ、やがて固形燃料のように溶けて消えた。

「てめぇ、何考えてやがる!」

 鬼吉組の組員が飛びかかろうとするのを羽黒が制する。

「おっと、いいんですか? それより『銃』のほうが早い。今度俺に撃たれるのは【K】かもしれませんよ?」

 もしそうなったら【ゲーム】は終了で、生きて帰れはするものの報酬は無しということになる。それだけは避けたいというのが誰しもの本音だ。

「俺は『王族』殺しの切り札だ。殺すには勿体ないと思いませんか? クソ社長よりは使える駒ですよ。……どうです、鬼柳さん」

 名前を呼ばれた鬼柳が応える。

「ああ、使えるものならな。だがお前がまたいつ裏切るかもしれん」

「そこは信じてもらうしかありませんね。さっきはどうしても感情が抑えられなかったんですよ。もし鬼柳さんが復讐を手伝ってくれるなら、俺は他の人間を殺すつもりはありません」

「復讐だと?」

「部長と村市、俵を全員審判台送りにして俺の見てる前で殺してください。それが『チーム』に入る条件です」

 羽黒が3人を顎で指ししめす。たちまち3人が抗議の声をあげる。 

「な、何を言って!」「ふざけんなオイ!」「俺はイジメてねえだろ!」

 それを無視して羽黒が鬼柳と交渉を続ける。

「どうです? クソ社長と俺が入れ替わるだけですよ? ……ああ、ご心配なく。こいつらは全員『平民』ですから」

「何でそれがお前に分かる?」

 鬼柳が羽黒に訊く。

「クソ社長が脅して密告タレコミさせてましたよ。長く勤めた社畜ほど逆らえないように教育されてますから。あと駄目押しになったのは俺が『王族』殺しを口にしたとき、全員安心して顔が緩んだからですよ」

 看破した羽黒にそう言われて3人が押し黙る。

「……いいだろう。その話に乗ってやる」

 鬼柳が羽黒に賛同する。村市が石畳に力なく膝をつき、抵抗した部長と俵は組員に殴られて押さえ込まれた。

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