第2章 声を掛けられたけど・・最悪

2-1

5月の連休前に、私は途中下車して、駅前の歯医者さんに行こうと思って。奥歯辺りが浸みるのだ。虫歯は治療するけど、その奥の親知らずも抜いたほうが良いんじゃぁないと言われた。しばらく、通うのかぁーと、高校に入る前から、時々シクシクするので、行かなきゃーと思っていて、言い出すのを躊躇していたんだけど、お母さんが1週間前から、近所に手伝いに出だして、私が夕食の用意なんかをしていてて、お母さんも機嫌が良かったから、歯医者に行くことを言い出したら


「なんだぁー 早く行きなさいよ! 痛くなる前にね そんなことは直ぐに言いなさいよね!」と、軽く言ってくれていたのだ。


 次の日も、薬を入れて虫歯のところを殺菌するからと、その後詰め物をしてもらって、また明日ねと、出て来て、玄関のところで 彼だ 彼と出くわした!


 私は、一瞬 彼の顔を見て もう 顔をあげれなかった。顔が熱くなってくるのが自分でも感じていたのだ。下を向いたまま、その場を離れようとした時 後ろから彼の手が私の二の腕のところを掴んで


「待って あのー 僕と 付き合ってください」・・・・その時 私は、頭の中が混乱してしまって、何にも考えられなくなっていた。


 だから 「・・・」何にも返事も出来ないまま、逃げるように小走りになってしまった。彼は、追ってくるようなことは無かったけど、「なんなのー いきなりぃー 心の準備もなんもないじゃぁない 声も出ないよーぅ 追いかけてきてくれないのぉー?」と、駅のホームに向かった。電車に乗っている時も、彼のことが忘れなくって・・・「やったぁー 付き合ってください だってぇー だけど・・・私・・・逃げてきてしまった。もう ダメだと思われたかなぁー 私、どうして、返事もできないまま・・だって 急に現れて、いきなりあんなこと言われても・・・じゃぁ どう 返事したら 良かったのよ! すぐに、ええって言うのも 変でしょ いかにも 待っていましたって言うばかりだもん」と、あれこれ考えながらも、独り言を言っていて 急に 自己嫌悪に落ち込んでいた。


 その日、私は暗かったのだけど、夕食の後、姉ちゃんが


「うん 美味しいよ マオが作ったんでしょ?」


 その日のおかずは、マーボー茄子に大根の柚子味噌なのだ。私は、黙ったまま食べていた。すると、姉ちゃんが


「ねぇ お母さん 連休の時 USJに行っていい?」


「良いけど あのね ちょっとは、畑の草むしりも手伝いなさいよ あなた 遊んでばっかりでー マオはちゃんとやってくれているのよー!」


「わかってるよー でも ウチは変な虫が怖いねん 手もかぶれるしなぁー それでね 穿いていくスカート 買いに行きたいの ねぇ 買ってよー」


「買ってってー いっぱい あるじゃぁない」


「うーん いつも 同じのんじゃぁねーぇ おしゃれしたいしー あのね マオにあげるからー だからーぁ ねっ」


 と、お母さんを丸め込んでいたみたい。お母さんは姉ちゃんにはいつも甘いのだ。その晩、姉ちゃんは私にって レモンイェローのフレァーなのとレンガ色のタイトなミニスカートをくれると持ってきた。まるで、有難く思いなさいよ という調子だった。


「マオも 可愛いんだから これっ位のん 穿いていなきゃーもてないよ!」と、勝手なことを言っていた。私は、こんなチャラチャラしたので良いんだろうかと、しみじみ眺めていたのだ。それより、私は、学校の制服以外にスカートなんて小学校以来 穿いたこともなかった。こういうのを穿いた私を見たら、あの人はどうなんだろうとかも考えていたのだ。そんなことよりも あの人 私のこと 呆れてしまってるんじゃぁないのかなー と気になっていた。 

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