私は黒猫

ミツル

第1話私は黒猫

私はどう生まれたのかはっきりしていません。と言うのも猫好きの人間のおばあちゃんから


「あんたはどこで生まれたの。可愛いねえ」


私は小柄な黒猫です。人慣れしますがお人好しではありません。警戒もします。お母さんから離れて4カ月位でしょうか、私は流れ者の雄猫に妊娠させられました。そこからはもう大変。お腹の赤ちゃんのために必死に餌を食べました。何でも食べました。ネズミ、虫、人間の捨てた残飯。でも餌の心配はなくなりました。おばあちゃんの家からさほど遠くない家にこっそり餌をくれる人が居たのです。玄関のドアを少し開けていて、そこから入り一声鳴くと人間が餌をくれます。そこには先輩が居ました。キジトラの老猫です。


「おい、お前、身籠っているんだろ。ここの人間は優しい。呼べば餌をくれる。だからお前もここに来い」


そう言われたので私はここの人間の好意に甘える事にしました。昼間は日向ぼっこをして、お腹が空けばドアの隙間から入り、一声鳴く。すると人間が餌をくれました。私は安心して妊娠生活を送りました。出産した時の事は今でも覚えています。冷たい雨の日でした。外で出産したのです。安全な出産場所など無かったのです。私は途方に暮れました。鳴く子猫たちを抱えて思案しているとある考えが浮かびました。


「あの家なら子猫を助けてくれるかもしれない」


私は仔猫を咥え、走り出しました。目的地はそう、あの何時も餌をくれる人間の家です。私は無我夢中でその家に飛び込みました。


「うわ、母さん、何時もの黒猫が子猫を連れてきたよ」


人間も慌てたようです。子猫は六匹居ます。最初に咥えてきた子猫をその家の玄関に置いてすぐ他の子猫を連れてくるためにまた飛び出しました。六匹の子猫を連れて来た時にはダンボール箱が用意され、布が用意されていました。私は次々に子猫をダンボールに入れて行きました。そうして全ての子猫をダンボール箱に入れた後、私は安心して箱の中で母乳を飲ませる事ができたのです。


「母さんどうしよう」


青年が母さんと呼ぶその人間は


「可哀想に、あんな小柄で若い雌猫が赤ちゃんを連れてきて。とりあえず面倒を見てあげよう」


私は安心しました。そこにはストーブが置かれて暖かく、餌の心配も無かったのです。私は安心して子猫たちにお乳を飲ませました。

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