第2話

夕方に用事を済ませて帰って来たら、おさだがもう部屋にいる。

いつもより早くて珍しいなと思っていたら、おさだは何か慌てている様子だった。


おさだは話せない。

身振り手振りと不完全な念話でしか俺達は意思を疎通出来ないのだ。


苦労しておさだの言う事を聞くと、明日この近くの廃墟でおさだ達の寄り合いがあると言うのだ。


そして地方にいるおさだの友達達が前のりと言う感じでここに泊めて欲しいと言う事だった。


テレビとかから自由にあちこちに行けるのにわざわざ前乗りで近くに泊まるの?


俺は不思議に思い聞いた所、おさだ達も長距離の移動は草臥れると言う事だった。


まぁ、良いは良いけど、最近やっとおさだに慣れて来たところにまたぞろぞろ似たようなのが部屋にいるのは嫌だと言ったら、おさだは身振り手振りと不完全な念話で俺の目に届くところにいないから安心して欲しいと言う事だった。


まぁ、それなら良いよと言ったら、おさだは身振り手振りで感謝をしつつもうこの部屋にいると言う事だった。


俺はぎょっとして部屋の中を見回したがどこにもおさだの友人たちは見えないので安心した。


どこかに隠れていてくれているんだろう。


さて、用事で草臥れた俺は今日はお風呂が面倒くさいのでシャワーを浴びることにした。


俺がシャワーの準備に服を脱ぎ替えの下着を持ちタオルを持って浴室に行こうとしたら、一緒にテレビを見ていたおさだが慌てたそぶりを見せた。


俺は気にせずにすっぽんぽんになって浴室のドアを開けた。


いた。


浴室一杯におさだの友達がまるで満員電車の様に中に立っていた。


ドアを開けた俺に気が付いたおさだの友達達は皆が身を寄せて俺の場所を空けて作ってくれた。


俺は引きつった顔で浴室を見ていたが、おさだの友達達は身振りでどうぞどうぞとしていた。


俺は優しい男だ。


今更シャワーを浴びるの中止にしたらおさだの友達達が気を悪くするだろう。


俺は仕方なく浴室に入ってシャワーを浴びた。


おさだの友達達は実体を消してくれたが、中々落ち着かなくなり、そして頭を洗う時に友達達は気を利かせてくれるのだろうか手を伸ばして手だけを実体化して俺の髪の毛を洗ってくれた。

何本もの手が同時に俺の頭を洗ってくれてあっという間に頭がきれいになった。


何とかシャワーを終えてダイニングに戻った。


おさだは手を合わせて俺に謝っていた。


浴室は暗いし湿気があっておさだの友達達には良い環境らしい。


明日の夕方には寄合に参加して朝方にそれぞれの場所に帰ると言う事で、やたら部屋に出て来られても困るので俺は浴室を明け渡す事にした。


寄合は2年に1回だとの事で俺は少しほっとした。


あんな狭い所にぎゅうぎゅう詰めで大丈夫なのか、おさだに聞いたが、あまり苦にならないらしい。


しかし何日も長時間体を寄せていると合体してしまい引き剥がすのに苦労するとの事だ。

一晩くらいなら大丈夫との事だ。


やれやれ、俺は早めに夕食を済ませておさだと寝床に入った。


え?いっしょに寝るのだと?


当たり前だよ、おさだと俺は付き合っているんだもん。


大人同士の付き合いだから当たり前でしょ。



続く

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