もう一人の自分で復讐を

 もし、自分の分身が現れて自分の代わりに復讐してくれるとしたらどうしますか?


 『ねえ?君の代わりの僕が復讐してあげるよ!』

 「本当に...この地獄から救ってくれるの?」

 『もちろん。だって僕は...君だから...君の代わりに僕が、復讐してあげるよ』



 「な、なんで..あんたここに。い、いや、殺さないで!」

 『何言ってるの?これは復讐なんだよ。殺されて当然だよね。ねえ?僕』


と微笑み返り血を着いた青年は写真に映る青年・ルイと瓜二つだった。



『もう一人の自分で復讐を』


 僕の名前はルイ。気の弱くて怖がりな性格だった。そのせいで学校や家でもいじめらて蔑まれていた。学校では水をかけらたり物を隠されたり落書きされるなんて日常茶飯事だった。最初はこの状況を変えようと試みて教師に相談したが無駄だった。


 「そんなのお前が悪いんだろう。いじめの原因はお前だろうが...こっちも忙しいんだよ。お前ひとりに構ってる暇はないんだよ」

 「で、でも!」

 「あいつらも友達の居ないお前のために構ってやってるんだから感謝しないとだろ?」

 「え?感謝って...」

 「もういいか?俺は忙しいんだ。暇なら他を当たってくれ」


と言われてしまった。事態は悪化して相談した教師も加わりいじめはさらにひどくなった。土下座を強要された映像を取られた僕はいやいや帰宅すると既に父親は帰宅していた。


(しまった。二人よりも早く帰ってこないといけないのに!動画を取られたからだ)


と内心焦る。父親よりも遅く帰宅すると問答無用で殴られるのだ。母親も止めるどころか同じように殴ってくる。震えながらリビングに行くと舌打ちをされて父親に引きずられて母親に顔を殴られた。それからは二人が満足するまで殴られ続ける。いつもよりも殴られて続けた僕は身の危険を感じた。


 「や、やめて...だ、だれか..助けて..」

 「うろさい!黙れ!」

 「ご、ごめんなさい」

 「あんたなんていなきゃいいのよ!」

 「ごめんなさい!ごめんなさい!」


怒鳴られた僕は謝ることしかできず再び父親に殴られそうになる。それを止めたのは帰宅した兄だった。


 「二人ともこれ以上ルイを殴ると近所の人に言われるからやめたほうがいいよ」

 「すまん」

 「そうね...おかえりなさい」

 「ただいま。じゃあ、僕はルイに勉強を教えるからさ」

 「ビクっ!」

 「行こう..ルイ!」

 「.....うん」


と優しく笑った兄に肩を掴まれる。その笑みの理由を理解した僕は頷くことしかできなかった。兄に腕を掴まれて兄の部屋に連れてこまれると鍵を同時に押し倒された。傍にあるガムテープで口を塞がれ身動きが出来なくなる。僕の上にのしかかった兄に抵抗し首を横に振るが意味がなかった。


 「ん!ん!ん!」


(嫌だ!やめて兄さん!)


 「俺は受験でストレスが溜まってるんだ。だから...分かるよな?」


その後の事はよく覚えていない。気づけば兄は部屋から居なくなっており、僕はほろに入り一人で涙を流した。


 次の日、学校でもいじめは続いた。


 「また来たの?懲りないわね」

 「さっさと死ねばいいのに」

 「ごめん...」

 「ルイ、邪魔だ。そこを退け!」

 「ご、ごめんなさい」

 「本当になんで死なないんだろう?」

 「あっ!いい事思いついた。屋上から落とせばいいんだよ!」

 「それいいね。じゃあ、さっそく...あいつを地獄に落とそうよ」


言葉の暴力だけでなく、肉体的暴力、兄の性的暴力で日に日に疲れていく。

放課後_事件は起きた。呼び出されたのは封鎖されたはずの屋上だった。


 「やっと来た。遅いよ何分待たせるんだよ」

 「ごめん」

 「まあいいや。もうその鬱憤も終わるしね」

 「え?」

 「あんたをここから落とすのよ」

 「どうせ、生きていたっていいことないでしょあんた。そんなあんたのために優しいあたしたちがここから落としてあげるって言ってるのよ」

 「やめてよ。二人とも!」

 「暴れんなって!どうせ家でも居場所がないんだろお前!」

 「なら死んだって誰も悲しまねえよ!」


両腕を掴まれて屋上から落とされそうになる。殺される死の恐怖に抵抗していると教師がやってきた。


 「お前たちなにやってるんだ!」

 「あ!先生、こいつを屋上から落とすの手伝ってよ!」

 「こいつが屋上から落ちて死んだら先生も嬉しいでしょ?」

 「ま、まって...先生」

 「お前ら...」


下を向き考える教師の姿を見る。


(先生...止めてよ。流石に教師がこれ以上いじめに関わったら...助けてくれる。助けてくれ...え?)


 「なら、俺が落としてやるよ」


そう思っていたが教師のこちらを可笑しそうにみる表情に体が震えて動けなくなりその場にしゃがみ込む。教師は少しづつ僕に近づくと耳元で僕に聞こえる声で言った。


 「お前の兄を指定校に推薦したのは俺なんだ。兄貴の顔を汚せないだろこれ以上」

 「え?」

 「知ってんだよ。お前が兄貴にされてること」

 「な...なんで!それを知って!」

 「だってお前の兄にお前を使うことを教えたのは俺だから」

 「......」

 「優秀なあいつの事だからきっと上手いんだろうな。安心しろよ。このことは俺とあいつしか知らない。前にお前との様子と映像で見たけど最高だったぞ。まさかお前で出来るとは思わなかったけどな。安心しろ...殺しはしない」

 「俺はこう見えても加減は出来るぞ。お前の兄にはいじめを容認されてるが殺すなって言われてるからな。殺したらもう遊べないだろお前と」

 「あいつが卒業したらここの生徒じゃないから問題はない。それにバレたとしてもお前の両親はお前がどうなろうと知ったこちゃないだろ?だから殺した風にして入院させる。元気になったらお前と遊んでやるよ」

 「え......」


突然の告白に耳を疑ったが教師が僕を抱きかかえて端まで歩き出した。


 「やめてください!」

 「動くルイ。今ここで嬲ってやろうか?」

 「ヒィっ!」

 「いい子だ。じゃあな!ルイ!」

 「嫌だああああああああああああああああああ!」


背中を強く押された僕は屋上に落とされた。ドン、グシャ...と鈍い音が聞こえた。屋上から落とされる道中三人の馬鹿にする声が聞こえてくる。


 「あはははははははははは!」

 「落ちた~~~~~ざまあじゃん!」

 「これで死んだんじゃないか?」



 「誰か......たす...けて..お願い...」


(俺...死ぬんだ。死んじゃうんだ。ここで...体中が痛い。これ僕の血?血が広がって...死にたくない。死にたくない)


そう思っていると声がした。


 『ねえ...僕が復讐してあげようか?』


(復讐?)


復讐と聞こえた気がする。しかし、血がドンドン流れて意識を保てなくなる。


(血が...意識が..もう痛みが感じない)


痛みを感じなくなった僕は意識を失った。


 目が覚めると病室で寝かされていた。


 「ここは...」

 『病院だよ』

 「誰?」

 『僕は...もう一人の君だよ』

 「え?もう一人の僕」

 『そうだよ!』


身体が動かないルイに変わりもう一人の青年が鏡を見せると自分とそっくりの青年が立っていた。


 『これで信じてくれた?』

 「う、うん...」

 『君はあの後学校から落ちたんだ。近くを通り過ぎた人が気づいて通報してくれたみたいなんだ』

 「そうだったんだ」


あれから一週間は経過していたが怪我の具合は酷くほとんど体を動かせない。


(これからどうしよう...どうせ誰も心配していないし..元気になったら僕は...こんなことなら助からないで死んじゃえばよかったのかな)


 「どうしよう...これから...」

 『...ねえ?僕』

 「何?」

 『僕が復讐してあげようか?』

 「復讐?な、何を言ってるの...復讐って」

 『でもこのままでいいの?このまま人に狂わせられる人生で...』

 「それは...」

 『僕の事は君しかしならないんだよ。それに...また君は殺されたいの?』

 「それは...だって、でも復讐なんて...本当にできるわけないよ!」

 『なら見ててよ。僕が復讐してあげるから』


するとドアがノックされた。


 「入りますよ」

 「はい...」

 『じゃあね!僕の姿は君にしか見えないからいつでも僕を呼んでね!』


そう言い残しもう一人の僕は居なくなった。


(消えた。今まで見ていたのは夢だったのかな。そう言えば意識が失う前に同じことを言われた気がする)


看護師の話しを聞いた僕は眠なりいつの間にか眠ってしまった。それから数カ月がたち僕は退院することが出来た。入院中に家族や教師たちが来ることはなく、始めて自由になった気がした。早朝に退院したため家族に絡まれることは無く自分の部屋に着いた。


 「学校...行きたくないよ。またいじめられる。それに...」

 

教師に言われたことを思いだし両手で体を庇うと震えを押さえようとした。


 「あの人たち...居なくならないかな...」

 『...分かった』

 「え?」


(今声が聞こえたような...気のせいだよな。気のせい...)


機嫌が悪い親に軽く殴られた僕は嫌々学校に行くが教師といじめっ子の姿はない。彼らはそろって休みらしい。彼らが居ないことで安堵し放課後を迎えた。


 「今日は本当に良かった。居なくて...ずっとこれが続けばいいな」


と僕は口にして学校を後にした。その様を見ていたもう一人もルイは微笑んだ。


 『その願いは叶うよ。永遠にね...』


そう呟くとその場から立ち去った。近くのゴミ捨て場から微かに声が聞こえた。


 「...け...て...」


その言葉を最後に動かなくなった。


(あれから平凡な学校生活を送れた気がする。だけど...問題が解決していないことがある。家の問題だ...今日は両親は居ないけど兄がいる。もしかしたら今日も...)


身体が震えるのを耐えて様子を伺っているが何もなく、夜になっても大丈夫だと油断していたその時だった。突然部屋に兄が入ってきた。急なことに判断が出来ずそのまま兄に押し倒された。


 「ルイ!」

 「え?に、兄さん!」

 「最近出来ていなかったからな...分かるだろう...」

 「やめてよ。やめてよ兄さん!だ、誰か助け」

 「うるさい!」


逆上した兄に殴らえた僕は恐怖で体が動けなくなった。恐怖で体が震える。身動きが出来ない僕を抵抗しないと思った兄は僕の服を上着をはぎ取った。このままじゃいけないと思った僕は声を上げて叫んだ。


 「助けて!ルイ!」

 「は?何言って」


ゴンと何かを殴る音が聞こえ顔を上げると兄は倒れていた。傍にはバットを握りしめたもう一人のルイが立っていた。


 「え?兄さん...」

 「大丈夫。助けに来たよルイ!」

 「もう一人の僕...どうして」

 「助けてって言ったでしょ?」

 「ありがとう...怖かった」

 「あとは僕に任せてルイは寝ていいよ」

 「でも!」

 「大丈夫。必ず復讐してあげるから...おやすみ」


もう一人のルイに優しく言われた僕は疲れもあり眠ってしまった。ルイをベットへ寝かせた後にもう一人のルイは兄を引きずって家を後にした。


目を覚ました兄は周囲を見回した。明かり一つない空間に委縮し逃げようとしたが椅子に縛り付けられたため動けない。


 「う、うう...ここはどこだ?」

 「お前は知る必要はない」

 「お前は...ルイ!どうしてこんなところに!こんなことをして許されないぞ!」

 「うるさい!これは復讐なんだ...もう一人の...だから死ね」

 「やめてくれ!ルイ」


グシャ...その後を最後に兄は死んだ。


 「もう少しだ。復讐まであと少し...あとは両親だ」


後日、兄、ルイにいじめ行為をしていた教師らが遺体で発見された。兄は通り魔に刺されたことで処理され、教師は汚職がバレてSNSで拡散され首をつり自殺したらしい。いじめっ子たちは大学生と関係を持っていたことから大学生の関与が疑われた。



(あれから僕をいじめていた人達の遺体が発見された。きっともう一人の僕がやってくれたんだろう。これでもいじめられることはないと内心ほっとしていた。けどその分両親の辺りが強くなっていった)


怒りに任せて父親に殴られた僕はその度に謝ることしかできなかった。


 「黙れ!何でお前なんだ!」

 「ごめんと父さん!」

 「なんであいつが死んでお前が生きてるんだ!」

 「あんたなんて死ねばいいのに!」

 「......」

 「なら...こうしましよう」

 「母さん!やめてよ。ルイ!」

 「何言ってるの?とうとう狂ったかしら」

 「そうかもな。殺せ!」


すると母は台所から包丁を取り出し僕へ向けた。僕は逃げようとしたが先ほどまで殴られていた両脚がもつれてしまい逃げられず片足を掴まれると躊躇わずに振り下ろされた。何度も刺された体はグシャグシャと醜い音が聞こえてくる。血で染まる僕は何度も心の中でルイを呼んだ。


(可笑しい...前は来てくれたのにどうして...どうして来てくれないの)


 「ル.........イ」


死にかけた時背後から両親の悲鳴が聞こえ顔を向けるともう一人のルイが両親を殺した。


 「な、何あんた!誰!こないで!」

 「やめ!」

 「きゃああああああああああああああああ/あがあああああああああああああああ」

 「え?ルイ...来てくれたの?」


助けに来てくれたルイに手を伸ばすがその手を踏まれゆっくり顔を上げた。優しいはずなのにその笑みからは優しさが感じられない。困惑していると強く手を踏まれた。


 「やっと上手くいった...」

 「え?どういうこと?」

 「こういうことさ」

 「え?る...」


目の前に迫る包丁に唖然とした僕は言葉を言う前に何でも刺された。刺されたルイはあっけなく命を落としそう返り血をあびたもう一人のルイは笑った。


 「これでようやく...僕が本物になれる。ありがとう」


と言うとルイの遺体を優しく撫でた。


 それから数日後_


 「おはようルイ!」

 「おはよう」

 「あれ?ねえ、ルイなんか雰囲気変わった?」

 「いいや、何言ってるの。僕は僕のままだよ」

 「そっか、そうだよね」


ルイは軽く返すと小さな声で言った。


 「そうだね。変わったよ偽物の僕から本物の僕にね」



 「どうして...ルイ」

 「僕はもう一人の君...ドッペルゲンガーなんだ。本物ではなくて悪魔で偽物でしかない。入れ替わる方法は君のことを知っている人物を殺さば済む話しなんだ。そのためにはあの教師たちが邪魔だったんだよ。だって入れ替わった後にあいつらの相手をするのは嫌だから」

 「だからって殺さなくても!」

 「そうじゃないと意味がないんだ!両親も殺した。偽物の僕は本物にはなれないから...最後に仕上げだよ。君にはあえて両親に殺させるつもりだったけど面倒だし、今ここで入れ替わることにした」

 「そ...それはど、どういう...こと」

 「こういうことさ。入れ替わるんだ!偽物の僕と本物の君が...君には偽物になってもらう」

 「偽物に...」

 「君には死んでもらわないといけないからさ...さようなら」

 「待っ待って...ルイ!」


グサッグサッ...何度も何度も包丁を振り下ろす。


 「う、うう...そんな...死に..ない...よ」


そう言い残しルイは息を引き取った。


 「これでようやく僕が本物になれるね」


ルイがそう言うと掲示板でニュースが流れた。

【身元不明の遺体が見つかる】


 「なんだろうこれ?身元不明だって怖いね」

 「そうだね。身元不明か...やっと"僕が本物になれた"」

 「うん?何か言ったルイ?」

 「ううん。何でもないよ。行こうか」

 「うん!」


ルイはそう言うとその場から立ち去った。ニュースで流れる遺体はルイに似ていた。


 「さようなら..."偽物の僕"」


もし、あなたの友人に違和感を感じたたらもしかすると入れ替わっているかもしれない。


もう一人の自分で復讐を           終





 


 



 

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