第5話 予知夢

 私は、親に元カレの夢でうなされていることを伝え、元カレが今どうしているか聞いたわ。そしたら、子供を生んだすぐ後に、事故で死んだって聞かされた。知っていたんだったら、教えてくれればいいのに。でも、親も、死んだ理由は分からないらしい。


 でも、どうして、元カレが夢にでてくるのだろう。私が元カレを殺したわけでもないのに。ただ、その頃から、私の体に何か変化が起きていることに気づいたの。最初はよくわからなかったけど、日が経つうちになんとなく分かってきた。


 それは、なんとなくだけど、将来のことが予知できるようになったんじゃないかということ。最初は、私の前に、公園で遊んでる子どもたちのボールが飛んでくることから始まったの。昨晩、そんな夢を見たなと思って公園をみたら、夢のとおりボールが飛んできた。


 偶然だと思ったけど、そんなことが続いたので、これは偶然じゃないと思った。


 例えば、お父さんの会社が、新しい半導体を開発したということで株価が急激に上昇する夢とか。だいたい、お父さんの会社が半導体を研究していることは知らなかったし、株価なんて興味もなかったけど、夢どおりのことが新聞に載っていた。


 ここまでくると、単なる夢とか言っていられない。この力は、妊娠したあたりから、だんだん身についたものじゃないかと思う。あの実験の影響が私の体にも・・・。これからどうなるか、私にはわからない。


 そんなとき、陽稀が私に別れを告げる夢を見たの。それは、いくらなんでも間違いでしょう。だって、陽稀とは、今でも仲がいいし。


 でも、その3日後、陽稀から私に別れたいと言い出したの。どうしてと聞くと、ずっと言えなかったけど、元カノと縁を戻していて、結婚してと泣いてお願いされたらしい。


 それなら、私も泣けばいいのと言ったけど、陽稀は、ごめんというだけで、私とは目を合わせなかった。


 普通だったら、浮気してたのと怒るところなんだろうけど、私は、変な能力まであって汚れている。そんな私は、陽稀に私を選んでなんて言えなかった。そして、その翌日、朝起きたら目が腫れていたわ。


 それから半年ぐらい経った頃、偶然、陽稀と道端で会ったので、気づいたら、恥も外聞もなく、付き合っている彼女がいてもいいから、私ともう一度付き合って欲しいとお願いをしていた。そしたら、だめだと思っていたけど、考えてみるって。


 だから、私から、時々、都内のホテルに宿泊するよう誘い、時々、一緒に夜を過ごしたの。その時は、陽稀に浮気させているという後ろめたさはあったけど、一緒にいるときは幸せだった。陽稀と一緒なのもそうだけど、私も普通の人間だと感じられたから。


 陽稀がホテルから帰る時に、どうしても帰らないとだめなのと聞いたけど、明日の会議のためにどうしてもこれから、休日だけど仕事をしなければならないと返事があったの。寂しいと伝えたけど、陽稀は、ごめんねと言ってドアから帰っていった。


 そして、次に会ったときは、一緒に海外旅行をしようと提案したけど、そこまではできないと返事があり、その1週間後、やっぱり、このような関係は続けられないと告げられた。


 もう終わりなのね。私は、眼の前が真っ暗となり、もう生きる気力がなくなっていた。そんな弱気になっている時に、ふと、あの悪夢のことを思い出していた。そういえば、あれって、予知夢なの?


 これは、私の心、考えていることを反映しているんじゃなくて、将来、私が殺されるということなんじゃないかって。


 そうは言っても、そんな事件に巻き込まれるような予兆はなかったわ。でも、ある日、私はびっくりして、その場で凍りついた。腕や膝、足の裏に、夢で見たようなガラスで切ったような傷が多数あったから。


 いつ、怪我したんだろう。全く記憶はないのに。でも、これって、あの夢の怪我に似てない? そう思っている間に、背中が腫れてきた。そう、包丁で切り裂いたように。私は、激痛に苦しみながらも、子供を生んだ研究所に飛び込んで、調べてもらうことにしたの。


 そうしたら、研究所は、前から分かっていたように冷静に私の処置を始めたの。これは最初の症状にすぎずに、これを契機に、だんだん私の体が溶けていくんだって。


 どうしてわかるのと聞いたら、私の子供がそうだったからと言われた。そう、私の子供は、もう亡くなっているということだった。


 親も呼んで、状況の説明を受けたんだけど、お話しのとおり、私は、半年で、足と手が溶けてなくなり、そして、体も赤く腫れて、最後に頭だけになって消えていった。


 研究所は、なにもできないといって、せめての手当ということで痛みだけは感じないようにしてくれた。


 そう、あの夢の通り、状況は違ったけど、元カレが私の体に操作した遺伝子を移し、私の体は逃げ回ったけど、最後は死に至った。夢の通りの最後だったわ。

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