しがないフリーターの婚活

鷹橋

1

 ここは、僕にとって居心地が悪い。

 ガヤガヤとした喧騒の中、立ち尽くす。

 どうもいたたまれない。

 こんな馬鹿でかいパーティ会場にTシャツとジーパン。夏だからいつもの恰好。

 当然ながらしわだらけ。

 こんなでかいところへは夏と年末の大イベントでしかきたことがない。あそこはもっと広い。

 颯爽と登場してしまった手前、僕はひたすらビュッフェの大皿からお皿へ盛り付けては消費を繰り返している。お腹へ入れたものはトイレにて処分している。声を上げることも許されない。静かに吐くのだ。そのための人差し指の使い方も熟知している。教わったんじゃない。わかるのだ。

 誰も近寄らない。こんなのもわかりきってはいる。

 他の男も女性陣も、ドレスコードはしてきている。

 当たり前すぎる。

 仕事も男はきちんとした九時から五時までの仕事を、青山やら港区辺りでしているのだろう。残業代も出るのだろう。満額の上プラスインセンティブか——。

 そのあとでここへ寄ったのだろう。気軽にタバコ臭いやつらだ。コロナ禍が明けたとは思えない。

 男同士でも名刺を交換している。

 一丁前に名刺入れも持ち歩いていて、それも一流のブランドだ。テレビでも見たことがある。特集すらされるまでもなくわかる特徴的な柄だ。

 僕は持っていない。

 名刺入れも名刺すらも。お仕事もコンビニの総合職でパートタイムである。

 女性陣も、お互いを牽制しあいつつ、うまくかわしている。世渡りがうまい。

 この場にいるぐらいだからどこかには……。おっと刺されそう。野暮だやめよう。

 僕は、酒もろくに呑めないのでひたすら肉を食らう。一万円で外食したと思い込めばよい。食べる食べる。

 そして吐く。

 無論出会いが欲しくないわけない。

 女性とは、お話ししたいのだが、話そうとすると逃げられる。風を掴むかのように通り抜ける。

 直接的には逃げ台詞すら言わない。やんわりとフェードアウト。こちらは愛想笑いでトイレへ見送る。

 よくあることだ。

 お肉が美味しい。

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