死ぬ気になるほど強くなる
@nizinopapa
第1話 公開自殺は失敗に終わる
(――――ああ、風が気持ちいい。いい気分だ)
ブランブラン揺れる体。俺の首を締めつける荒縄。その荒縄を支える太い木の幹。
――そして、体を震わせ、または悲鳴を上げながら俺を見上げる人々と魔物の群れ。
(公開自殺、それもいい。ここが日本ならバズってたな……)
構わず目を瞑る。もう帰れない、帰りたくもない故郷を思い出すと、さらに死にたくなった。
「ひぃぃいいいいいッ‼︎」
「に、逃げろ‼︎ あの魔力、四死神(ししがみ)様達よりヤベェぞ‼︎」
「ああ……神よ…………」
ギャラリーが騒ぎ出す。ここまで来ると少しうるさいが、首を締め付ける荒縄に意識を集中させる。
(早く死なせろ早く死なせろ早く死なせろ)
さらに騒ぎ出す人々。狂気の悲鳴を上げ逃げていく魔物の足音。
そんな中、俺に近づいて来る足音があった。
「ちょっ、リュート⁉︎ トイレから戻ってこないと思ったらこんな所で自殺してないでよ‼︎ ――――フレア‼︎」
途端に俺の顔は炎に包まれた。首を締め付けていた荒縄はバチバチと焼け落ち、ついでに俺の体もズシャリと地面に叩き付けられる。
「…………また、死ねなかった……」
「そんなので死ねるわけないでしょ⁉︎ 死にたかったら魔王シヲア・タエールを倒しに行くわよ‼︎」
「まじでめんどい」
空を見上げる。紫色の不吉な雲を背景に、背中まで伸びた白髪と、水晶でできた2本のツノが特徴的な美少女が、俺を呆れたように見下ろしていた。
「ほら立って」
「…………はい」
差し出された華奢な手。それを渋々掴みながら、俺はこうなった経緯に想いを馳せることにした――――。
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