六人姉弟の長女
五番目の子は流産だったので、性別もわからずに名前が無かったのだが五男が亡くなった年のお盆。二人の青年が夢に出て来て、私の事を「姉さん」と呼んでくれた。
一人は、楓斗と瓜二つの顔で銀色の少し長い髪を後ろで縛ってる青年。もう一人は、目元が颯斗に似ているスポーツ刈りの優しそうな笑顔の青年。
なんとなく、銀髪が晃斗でスポーツ刈りが四番目の子だろうと思った。詳しい会話の内容は、残念ながら覚えてはないが。
目が覚めた時に、一粒の涙が頬を伝って落ちた事は覚えている。その夢を見て以降、私は勝手に四番目の子を【
例え夢だとしても、私の事を「姉さん」と呼んでくれた弟に何かしてあげたくて……夢で会った時の印象が和やかで優しそうだったから、なんて安直な理由で考えた名前なのだけれど……気に入ってくれてたら嬉しいな。
五男の名前は【晴幸】だ。考えたのは父らしい。
1人だけ【斗】の字が入ってない理由は分からないけど……父にしてはいい名前を付けたと思う。
そして今、自分自身の葬式の最中に父は土地がみ夫婦と亡くなったじつの息子三人の計五人に取り囲まれているのだ。何も知らない人から見たら、土地がみ夫婦は見送りに息子たちは迎えに来てくれた。……そんな幸せな光景に見えるかもしれない…………実際は、その逆だけど。
「惠、骨壺持ってくれる ? 」
「……うん」
ご住職の読経が終わり、そのまま納骨へと向かう。それからは何事もなく、納骨が終わり参列して下さった親戚の方々を見送り家へと帰宅した。
家に着くと祖母は、体調が優れないと言って早々に自室へと引っ込んだ。祖父も作業場へと行ってしまう。
あんなクズでも可愛がっていた長男だ。祖母は相当落ち込んでいる。
祖父の方は、元々父と仲良くなかったがそれでも息子であることに変わりは無い。気持ちは複雑なんだろうと思う。
高校の頃、大工の祖父に何故父に跡を継がせないのかっと聞いた事があったが
「無理さ決まってる。お前の父親は他人に使われるのも使うのも向いてね。
……あったなのさ任せたら、一年持たずに潰れるじゃ」
そう真顔で返された。だが、父が若い頃にラーメン屋をやってみたいと冗談半分で話したら祖父は本人に確認もせず勝手に場所を決め店舗まで建ててしまったと言うのも聞いた事がある。
信用はしていなくても、期待はしていたのだろう。でも、父は最期まで祖父の期待に応える事無くあろう事か親よりも先に亡くなってしまった。
だが、親にこれ以上の苦労をかけなかったのだからある意味で最期の親孝行だったのかもしれない。
母に、私も疲れたので部屋で休むと伝え自室に戻った。そして、鞄から隠していた奴の骨を取り出すとクッションの上に厚紙を置きその上に骨を乗せ更に上からクッションで蓋をし音が響かない様にしてから手にした金槌を思い切り振り下ろす。
瞬間、家の外から断末魔の様な悲鳴が聞こえる。窓から庭を見下ろすと、白銀さまと黒曜さまに連れられた父が鎖で縛られた身体をくねらせながら悶絶しているのが見えた。
「へぇ、骨を砕かれると霊体でも痛みを感じるんだ……面白い」
自分でもゾッとするほど冷たい声で呟いた私は、そっとカーテンを閉め作業に戻った。そして、砕いた骨は夕飯を食べに降りた際に台所の残飯入れへと放り込んだ。
手を綺麗に洗い。夕飯前に、仏壇に手を合わせていると
『今年のお盆は、兄さんたちと三人で帰るからさ。
母さんと芋の子汁作って待っててよ。姉さん』
っと言う優しそうな男性の声が聞こえる。目を開け辺りを見渡すが、仏間には私以外の誰も居なかった。
姿を見せてくれても良いのに……そう思いながら、私は仏壇に向き直ると満面の笑みで頷き返す。
「美味しいの作って、待ってるからね」
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