幸せな未来を掴むために
『剣持くーん! えへへっ、一緒に帰ろ?』
高校生の時…… 同じクラスになった夏輝と…… 文化祭の準備していて仲良くなった……
顔もタイプだったし、話をしていても楽しいし…… 今思えば私からグイグイいってたなぁ……
『夏輝! ごめん、待った?』
その後も私はアピールを続けて、両想いになれた私達はお付き合いを始めて……
元々優しかったけど、私を包み込んでくれるような夏輝の優しさを、付き合ってから更に知った私は…… 夏輝とずっと一緒に居たいという気持ちが強くなり……
『夏輝…… 嬉しい! 末永く…… よろしくお願いします』
夏輝と共に人生を歩む事を選んだ。
時には喧嘩をしたりもするけど、お互いにゆっくりと愛を育んで…… そしていつかは……
…………
…………
「鎌瀬さん、旦那の方は手足を縛って閉じ込めておきました…… まあグッスリと眠ってましたけどね」
「ははっ、そうかい…… クスリが効いているだろうからしばらくは目覚めないと思うが、念には念を入れておかないとね」
誰かの話し声が聞こえる……
あれっ? 私…… 何をしていたんだっけ?
…………あっ! そうだ…… 夏輝!
「うぅ……」
ここは…… 私達の…… 寝室?
ベッドの上で横になり、天井を見上げているけど…… 私はいつの間にベッドで横になってたんだろう。
あ、あれ……? 目は開くのに…… 身体に力が入らなくて…… う、動けないっ!
「おお、鎌瀬さん、目が覚めたみたいですよ」
「こっちに使ったのは海外製のクスリだったから心配だったが、どうやらちゃんと効果はあるみたいだね」
誰!? ……ひっ! し、知らない男が何で寝室に!? しかも二人もいる!
夏輝は!? 夏輝はどこに行ったの!?
「な、つ…… き……」
「やあ、初めまして、真野…… いや、剣持咲希さん」
「あっ…… あっ……」
楠田…… じゃないけど、どこか楠田に似ている男が寝ている私の顔を覗き込んできた!
うぅっ、恐いっ、恐いよぉ……
この状況…… 『あの日』と似ている! 相手は楠田じゃないけど…… 私が地獄に堕ちた『あの日』と……
あ、あぁ……
「な、つ…… あぁっ…… た、たすけ……」
「はははっ、助けを呼んでも無駄だよ、旦那さんはグッスリ眠っているからね……」
夏輝に何をしたの!? ……夏輝ぃ! 夏輝ぃ! ヤダっ! ……ち、近付かないでぇーっ!
「ふーん…… 良く見ると、何となくだが妹に似ている気がするね……」
妹って…… 唯愛のこと!? 唯愛のことまで知っているだなんて……
「あ、あなたは…… 誰、なの……?」
「ふっ…… ふふっ、はははっ! そんな事知ってどうする? 知ったところで何も変わらないよ? ……これからする事はね」
……っ!!
このいやらしくて人を馬鹿にするような笑い方…… 楠田そっくりだ……
楠田じゃないのに…… 何でこんな事に!?
『未来は変わらない』
ふと最近不安に思っていたことが頭をよぎった……
やっぱり…… どれだけ注意を払おうが、タイムリープしようが…… 私が地獄に堕ちる未来は変えられないの!?
恐怖から未来で味わった地獄のような経験がフラッシュバックして…… 涙が溢れてきた……
やだぁ…… もう、やだよぉ……
あの時には戻りたくないよ……
夏輝とずっと一緒に…… 幸せな未来を歩んで行きたいのに……
逃げないと…… 動いてっ! 動いてよぉぉっ、私の身体ぁぁぁーー!!
「鎌瀬さん、撮影の準備が出来ました」
「ふふっ、じゃあ…… 始めようか」
……ひぃっ! や、やめて! 触らないでぇぇー!!
そして…… 鎌瀬と呼ばれた男が……
私の服に手をかけて……
「どれどれ、まずは………… んっ?」
いやぁぁぁー! 夏輝ぃぃぃー! 誰かぁぁぁー! 助け…………
…………んっ?
「な……」
……な?
「な、なんじゃこりゃーーー!!」
いやぁぁーーー! 恐いからいきなり大きな声を出さないで!!
私の服に手をかけ、捲った瞬間、鎌瀬とかいう男が跳び跳ねるように後退ったのが見えたけど…… 一体どうしたの?
「鎌瀬さん!? ……う、うわっ! 何ですか、これ……」
「この女…… ウブそうな顔をして、とんでもない変態女だぞ! ……しかも貞操帯まで着けている!」
「身体に落書きだらけで貞操帯…… もしかして剣持さんの趣味? それならこの夫婦、とんでもない変態夫婦じゃないですか!!」
……はっ? えっ? ……あぁっ!! そういえば、昨日の夜、夏輝に間違えて油性ペンを渡しちゃって、消えないから夏輝の直筆サイン入りのままだった!!
……べ、別に変態じゃないもん! これも愛の形の一つだもん!!
「身体にびっしり…… か、春日くん、いけるかい?」
「む、無理ですよ…… 反応できません」
…………
「どうする? これは予定外だ…… こんな女だとは思わなかった…… これじゃあ撮影したところで逆に喜ぶ可能性も……」
し、失礼ね! 撮影なんか嫌に決まってるでしょ!?
……で、でも、夏輝とのお楽しみのためにとネットショッピングでデジカメは買っておいたけど、それは夏輝との愛のメモリーを二人きりで撮影して保存しておくつもりで買ってあるだけで、夏輝とならいいけどアンタ達に撮られるのは嫌なんだから!!
「このままじゃマズイ…… どうする? とりあえず兄貴に連絡を……」
よく分からないけど、男達が私から離れてあたふたし始めた……
もしかして私の身体にある夏輝の愛情たっぷり直筆サインを見て離れたの? それってあの有名な、どこぞの
……夏輝にアワビで奉仕は毎晩のようにしているけど。
……そんな下らないこと考えている場合じゃない! とにかくこの状況から逃げないと……
あ、あれ? さっきまで身体に力が入らなかったのに…… 身体が動くようになっている!!
「鎌瀬さん、俺はどうすれば……」
「くっ! こんな予定では……」
ふぅぅ……
『サキ、いいか? どんな達人だってほんの一瞬だが隙が出来る時がある、その一瞬を逃さずに的確に素早く急所に拳を叩き込むんだ!』
クレア先生……
未来に備え、もしも悪い人に襲われそうになった時の対処法を教えてもらっていた……
『はい! ……あっ! クレア先生! レオさんがあっちでいきなりズボンを脱いでますよ!』
『な、何ぃー!! おい、玲央! こんなところでズボンを脱いでどうするつもりだ! 夜まで我慢……』
『隙ありぃぃー! えい! えーい!!』
『ぐっ! サ、サキ!? 騙された…… やったなぁぁー!』
ジムでクレア先生とトレーニングをした成果……
今こそ見せる時よ!!
「…………ふん!!」
「グヘッ!!」
「か、春日くん!?」
……私はあの地獄を繰り返すために過去に戻ってきたわけじゃない。
「な、何故動けるんだ!?」
……私はまた泣くために過去に戻ってきたんじゃない!!
「……やぁーっ!!」
「……チン!? びぎゃーっ!!」
「か、春日くーん!」
きっと、これは神様がくれたチャンス…… だから……
「あ、泡を吹いている…… ひっ、ひぃぃーっ!! やめるんだ! ……またこのパターンか!?」
夏輝との…… 幸せな未来は…… 自分の力で手に入れる!! 自分で守り抜くんだからぁぁぁぁーーー!!
「オラオラァァァァーーー!!」
「うっ…… ギャアァァァーーー!!」
……うぅっ! 恐い! 恐いけど、絶対に負けない! 明るい未来のため、夏輝のために!!
身体の中心にいくつかあるという急所を狙い攻撃をして距離を取る…… あと、こんな時のために買った護身用の…… たしかベッドの横に取り出しやすいように隠しておいたはず…… あっ、あった!! えい! えーい!!
「っ!? ぐぇぇぇーーー!!」
ネットショッピングで買ったスタンガン…… 身体に当ててスイッチを押したら倒れたから…… 威力は十分みたいだね、念には念をと買っておいて良かった……
「あっ…… あがが…… うっ、ひぃ……」
一人は倒れているし、もう一人は尻餅をついて少し痙攣している…… これなら寝室から逃げ出せそう! だけど、ここで私が逃げてしまったらこの男達も逃げてしまうかも…… そうなったらまた怯えて暮らさなきゃいけなくなる…… だったらコイツらが逃げられないくらいに…… えぇーい!!
「っっ!? ぐひぃぃぃー!!」
……これでも立ち上がろうとしている!? まだ動けるみたい ……心配だからもう一回、ビリビリっと。
「あ、あばば……」
私から四つん這いになって逃げようとして鎌瀬とかいう男…… あっ、ズボンが脱げかかっているじゃない! いやぁぁー!! そんな変なモノ見せ付けないでぇぇーっ!
何か…… 何か他に護身用の物…… 催涙ガスとかもあったはず…… んっ? これは違うから……
「も、う、やめ……」
いやぁぁーー! こっちに手を伸ばしてきた! ち、近付かないでぇーー!! えぇーい!! やぁっ! やぁっ!
「はぁっっ!!!」
あっちに行けぇぇぇーっ!!
「ぷぴぃぃぃぃーーー!!」
……あ、あれ? この人、いつの間にかお尻から何か生えてる! ……あっ!! あれは……『タケノコ』!!
咄嗟に手にしたのがあのネットショッピングで買ったタケノコだったみたい…… だけど、どうしてそんな所に刺さるの? そこは普通、出る所だよ……
そんな事を一瞬だけど考えていたら、玄関の方からドタバタと音が聞こえて……
「……お姉ちゃん!! 大丈夫!?」
……ゆ、唯愛!? どうしてここに?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます