第10話
3日間の睡眠から目覚めた後、俺は三姉妹と共に地上へ帰還した。
当初の目的であったデビルパンサーの討伐証明である尾びれはボロボロになってしまった。
今回の事を俺は王国及び冒険者ギルドに報告したので三姉妹の課題は問題ないだろう。古代遺跡を見つけた功績を考えればどうとでもなる。
今までの俺なら絶対に報告しなかったが三姉妹を巻き込んでしまったからそんなことはできない。
保護者としての務めをしっかりと果たすつもりだった。
重要参考人である俺はポドルディに残り、三姉妹と別れる事となった。
ポドルディに戻ってから4人全員がそれぞれ連絡を行ったり事情聴取をされたりと忙しかったため、別れの日までちゃんとした時間を取ることが出来なかった。
寂しいところではあるが雇った側と雇われた側である。
こんな関係がベストなのかもしれない。
「危険な目に合わせて済まなかったな」
「気にしないで下さい。あれは不慮の事故。私達だけであれば確実に死んでました。私達こそありがとうございました」
最初に会ったころよりも、明るい表情で接してくれるソレア。
出会った当初の「近寄るな蛆虫」みたいな感じはない。
ありがたい事だ。
あれだけ苦労してそんな扱いを受けたらボッチの精神なんて簡単に崩壊ものだ。
「ソウランっ! ありがとね」
背伸びをして頭を撫でてくるアーシャ。
まだお姉ちゃんムーブを続けていたのだと呆れてしまう。
ここは一つ乗ってみるか。
「じゃあなお姉ちゃん」
ニヤニヤしながらそう言ってやると・・・。
「はぅあぁっ!」
アーシャは変な声を上げ胸を押さえて一歩下がる。
予想外の反応に困っているとセナがフォローに入る。
「ソウランさん。ありがとうございました」
礼儀正しいセナは頭を下げてお礼を言ってくる。
「そんなにかしこまらないでくれ。あの崩落から守れていればこんな事にはならなかったんだから」
俺と三姉妹の仲は命に関わるような体験をして近づいた気がする。
これが吊り橋効果か。
まさか自分が吊り橋効果を実体験をするとは思わなかった。
吊り橋効果で得られた友情はなんだか脆そうに感じるが、三姉妹とは会うことはないだろう。
快く送り出せるだけで感謝だ。
「学校頑張れよ」
良い関係を築くことはできたが三姉妹を学校まで送り返すことができなかったのが唯一の不満だろう。
俺と三姉妹から少し離れたところに待機している冒険者たちが俺の代わりに三姉妹を送り届けてくれる。
俺よりもランクが一つ低いB級だ。A級冒険者の俺に変われと言いたいがこの後、国のお偉いさんに会う事となっているのでそれができない。
「ソウランもあまり無茶はしないでください」
「そうですよ。遺跡で寝ちゃったときはびっくりしたんですから」
「ああ、気を付けるよ」
俺だって変身したくてしたのではないのだが、三姉妹にそれを言っても仕方ないだろう。
あと、いつまで胸を抑えてモジモジしているのだアーシャは。
三姉妹と別れの挨拶を初めてかなり時間が経っている。
そろそろ出発しなくてはいけない。
「元気でな」
「ええ。本当にありがとうございました」
「ソウランさんも元気でね」
「ふふ、お姉ちゃんに会いたくなったらいつでも来ていいからね」
三者三葉の挨拶を受け三姉妹とは別れた。
馬車の中から見えなくなる最後まで手を振ってくれたのは何所か可愛かった。
そんな三姉妹を送り出すと俺はポドルディへと戻る。
これから面倒ごとが舞い込んでくる。
その為の準備をしておこうと早足で戻った。
これから始まる面倒ごとを片付けたら今度は北の未開拓地にでも赴こうかと思う。
噂によれば古の時代から生きる戦闘民族がいるらしい。
腕が鳴る。
そんな事を考えているソウランであるがミモザ家の姉妹について未だ分かっていない。
アザレア・ミモザには姉妹はいるが三姉妹とは誰も言っていない。
ミモザ家には有名な十三姉妹がいる事をソウランは未だに知らない。
十三姉妹と出会う運命も知らないのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます