そうこうしてると救えと託される
林 林
プロローグ第零話「理の覆」
「試合も勝ったことだし、一発やりにいきますかぁ!」
剣道高体連の全国優勝を祝おうと、友人兼補欠の笹林 幸人が言う。
「それもそうだ、なんてたって全国だからな!全国嬉しすぎてもうたまんないよ。」
「おーい香久夜くん、ここ道の真ん中だよーそんなに大きな声出したら迷惑になるよー」
喜びのあまり周りが見えてなかった俺に、すかさず声をかける剣道部の聖女、夢森 皐月。
もう少し喜ばせてくれよと言おうと思うがやはり皐月の純粋でいて何処か愛らしい姿に魅了されて言えない。
「そうだぞ!香久夜もっと抑えないとな!」
「やかましいわ!ボケボケー!お前が一番うるさいんだよ!」
「そーですねー、笹林くんはもーとしずかーにすべきだと私も思いますよ?」
ニカァと笑みを浮かべながらいじってくる幸人に学校で流行っているボケボケー!をくらわせながら地味に本音を伝える。
それに反応して皐月も言った。
「そ、そうかな!えへへ、まぁそれほどでもないよ、えへへへへ。」
「何照れてんだおめぇは!」
指摘したところえへへと照れていたので頭を叩いてツッコミを入れてやった。
「いってーな、なにすんだよー」
ツッコミに反応するのには王道すぎでは?と思うがその気持ちを隠して、いやお前が照れるからだろ!と言ってやった。
「それより、早く行きませんかー?一発カラオケとか??」
皐月が脱線した話を元に戻そうと原点の話は持って行く。
「「賛成!!」」
それに反応して二人同時に大きな声で答えた。
_____徒歩二十分がだった。
高校生らしく流行りのゲームやミームなどを話し、少しエッチな事を取り入れ皐月を赤面させながら歩いた。
そして煌びやかに光るカラオケの看板が見えた。
「いらっしゃいませ。高校生三人でよろしいでしょうか?」
カラオケに入り、受付に向かったところそう言われた。
「はい、高校生三人です。」
「ではどのプランにされますか?」
幸人が答えた後に店員がプランを聞いてきた。
「学生プランにします?お財布に優しいですしー」
高校生お金キツキツを掲げる俺らの元にいただけはあるとついついおもってしまった。
「それもそうだな!」
「そうしようか」
「学生プランでお願いします。」
「わかりました。学生証の提示お願いします。」
俺が答えると学生証の提示を求めてきたので三人で鞄から出して提示した。
「はい、しかとお見受けしました。お部屋は108号室となります。間違えぬようご注意ください。時間になりましたらお電話おかけしますので延長なられるか御退出お願いします。では、お楽しみください。」
そう言われて、俺たちは108号室へと向かった。
廊下の照明薄暗いが、それでも何処か明るさを感じる。
華やかな雰囲気だ。
「よし!じゃあ最初は何から歌うか?」
興味津々に幸人は俺に聞いてきたので取り敢えず
「小さな恋の歌とかでいいんやない?」
と答えた。
「おぉ、もしや貴様、恋をしているな??」
「そーだったんですか香久夜くん?」
疑問系で聞いてくる皐月に、イジるかのように聞く幸人に、俺は答えた。
「ぁぁあ?恋なんかできれば人生もっと楽しいわ!、剣道なんかしてないわ!全国一位が言うことじゃないけど!」
あっさり言ってしまった。
「なんかごめん」
幸人が謝ってきた。いやいやそこで謝られると逆に悲しいな。
「うん、まぁいいそれじゃ歌ってやりますかぁぁぁぁぁぁ!」
_____一時間半が立った。
三人で楽しく歌った。ラブソングをラブしてない三人で歌ったり、(皐月は彼氏いてもおかしくない)軍歌ばっかり歌う幸人をいじったり、まぁ俺も軍歌は好きだけど、それに世間話を適当にして、時間が過ぎた。
試合後に行ったこともあり、あたりは暗くなっていた。
「楽しかったー、またいつかみんなで行けたらいいですねー。」
歌い切ったのか、額に汗をこぼして皐月が言った。
「あぁ、そうだな。それにしても、幸人、お前軍歌歌い過ぎ、荒鷲の歌とか歌ってるとき、俺もう耳が軍歌耳になってたよ。」
「いや軍歌耳って何だよ!軍歌調が印象的だっただけだろ。」
しれっとボケる俺に幸人はツッコんでくれた。
「おし、そんじゃあ俺らここら辺だから。」
「あぁわかった、そんじぁな」
「おう!、じゃあな」
「さよーならー」
幸人と皐月が手を振ってくる。いいよな、お前らは二人で帰れて、家が遠いんだよな。
どうやら二人は幼馴染で家が共に近いらしい。
なので俺とは途中でお別れ。
そう思い手を振り返して、我が道を行った。
ビルからの隙間風がこの混沌の夜を更に深くする。そして何より寒い。
気温が夜は下がると言うがそれは本当だったらしい。スマートフォンを見たら、現在気温−2°と表示されている。
確認して再び歩いた。
満月の月光が輝いている。
暗いのか明るいのかわからないが。取り敢えず明るいので世を見渡した。そうしたらビルとビルの間の奥底に『ナニ』かがあった。それはまるで異空間に繋がっていそうなもの、
不気味で仕方ない。何か置いてあると言う次元を超えている、と言うの某青いたぬきのアニメで出てくるタイムトラベルした時に出てくる穴のような、そんなものがある。そこに入れるのか否か、入ってみなきゃわからない。
なので、一度そこに向かってみた。
ビルの奥へと足を踏み入れる。満月の明るさとは違い薄暗く、治安の悪そうな雰囲気。
「す、すげぇ」
思わず息を呑んでしまう。それほどのモノがそこにあった。
超越している。この世界を越えている。近くで見た感想はこれだ。やはり地球のものではない、こんなのアニメや漫画でしか見たことがない。まさにどれぇもんに出てきそうなやつだ。
その穴を覗き込もうと手をかけた。
「う、ぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
手をかけ、顔を覗かせようとこの穴に顔を近づけたところ。
ナゾの手が俺の体を引っ張って、その穴に飲み込んだ。
「何だここは?」
どれぇモンの世界では紫だとか時計が辺り一面を覆っていたが。
ここは無色限りない白だ、その白さは逆に神秘さを帯びている。いかにも神の存在がいそうな、そんな風景。
「ああ、来よったか。」
「ん?誰だ?」
ふと瞬きをしたところ。不思議な存在が現れた。それは薙刀?のようなものを持ったおじさんだった。口に髭を生やし、和装と言うよりもう少し古い何とも言いずらいアジア系の服を着ている。何処か神秘さや、清らかさ、神聖さを感じられる。
「我は伊弉諾尊、別名國生みの神である。」
人間ではない何かしらのオーラをまとった伊弉諾尊はそう言った。
「やはり神でありましたか。私は神宮寺 香久夜と申します。先程は大変失礼な御言葉を使いまして大変申し訳ない所存です。」
そこにおられられますは伊弉諾神。その日本はたまた世界を生み出したお方にどのような口を聞いてしまったかと、自分で自分を悔いた。
「あっはっは、そんな畏まらなくてよろしい。なんせ、我は汝に頼みに来たのだからな。」
「あ、はいありがとうござい………いや、ありがとう、そしてどのような願いだ?」
伊弉諾様が畏まるなと言ったら、畏まるのも逆に失礼だろう。そう思った。
頼みとは何だろう。俺に何を頼むのだろう、そもそも何故俺なんかを選んだのだろう。
疑問が膨らむがそれは一旦置いておこう。
「あゝそうじゃった。汝には勇者になってもらう。」
「勇者!?」
俺は驚いた。和を基調とする伊弉諾尊が勇者という西洋の関わりなさそうなことを口走ったからだ。
「あゝそうじゃ。ちょいと我の教え子がヘマをしてな、それで我は貴様を呼んだわけだ。」
「はぁ、ヘマと言いますと?」
神に教え子?神にも階級があるのか?そもそもこの人は本当に伊弉諾なのだろうか。
疑問が膨れ上がり、ついには頭の思考が停止してしまう。
「そうだな、我は神の中でも最高峰クラスなのだよ。貴様も聞いたことがあるイエスキリストとかと同じじゃな、それでイエスの教え子が創造した世界が今結構危ないのじゃよ、」
伊弉諾尊は次々に話を語った。
この一瞬の間にありえないくらいの情報が入ったが、まぁいい、理解はできそうだ。
「大変ですね、それで私がその世界を救えばいいと?」
「そういうことじゃ理解が速くて助かる。」
理解はできるが、何が危ないのだろうか、流石に俺で救えないものもいっぱいあるし、そもそもそんなに人を助けたこともない。
「その、俺は何をすればいい?」
ここを書かなくては何も始まらない。異世界で病気が流行ってそれを治せと言われても医者じゃないので特効薬は作れない。
魔王を倒せと言われても少し不安だ。
「そうじゃったな、汝は勇者として魔王を倒してもらう。世界が滅びる前に、」
わぁお魔王ですか、ハードルが高いな、俺はそんな力ないぞ。
「あの、俺にそんな力ないんですけど。」
言ってしまった。でも出来ないことはできないと言っておいた方がいい。言って正解なのだ。
「安心したまえ、汝は勇者なる。勇者はわしらから力が与えられる、【神の力】、それを一部だ、それに死んだらこの世界から消えるわけでわなくて教え子の世界で消える。つまり異世界では死んでいるが我が地球では生きている、そんな状況である。それに魔王を倒したら、地球へ戻ってくる、戻ってきた時、異世界では長い年月過ごしただろうが、地球では今この時間に帰ってくることとなる。まぁ、倒した後に戻ってくるかは汝次第だがな。」
要約しよう。つまりは勇者となって異世界に行く、【神の力】(一部)や日本人まぁ俺自身の力は使える。
死んだら異世界では死んだことになるが、地球では生きていることになり、そのまま生きれる。魔王を倒した場合、地球に戻ると言う選択肢もあり、戻ってきたら、今の時間くらいにいる。例えどのくらい魔王を倒すのに時間をかけても地球に戻ってきたらまたこのままの生活を送れるってことか。しかも異世界にずっといると言う選択も可能。好条件ではないだろうか。
「それなら大丈夫そうだ。」
普通にウキウキで答えた。
「うむよろしい、では転移させてよろしいか?」
伊弉諾が最終確認のように聞いてくる。だが、こんな好条件断る奴がいるだろうか。
否、いるわけない。
「うん、いいよ?」
「稽古用に今貴様が持っている防具、竹刀も転移させるか?」
「できるならお願い、」
この神様気がきくなぁ、勇者としての稽古もあるだろうけど、剣道ができる。それが一番ありがたい。
「よろしい。では行くぞ!」
体に違和感を感じる何かが自身をすり抜けるかのようだ。それと同時に俺は浮遊感を感じる。伊弉諾の偉大さと奇妙で貴重な出来事を身に感じた。そして気づいた。
俺は異世界に転移している。
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