第7話初配信 Ⅲ
抜刀術でウサギを屠ると、コメ欄は大盛りあがりだった。
『凄え』
『抜刀術初めてみた』
中々いい反応が貰えて、私的には非常に嬉しい。
『なんか武術でもやってるの?』
そんなコメントまできたので、私はステータスを割り振りながら、簡単に説明した。
「私二年前まで剣術してたんだよね。で、さっきの技はその流派のなんだ」
流石に実家であることは黙っておく。
『技名とかあるん?』
『技名あるなら言って』
あ、やっぱり気になるのかな。
「一応あるよ? 今のは瞬雷。一瞬の雷ね」
開祖がつけたらしいその名前は何か漫画とかにありそうな感じだよね。
あ、そうだ。
「技使う時、名前言おうか?」
そんな思いつきの発言によって、結局使う時技名を言いながら使う事になった。
ちょっと恥ずかしい。
ステータスはSTRとAGIに1点ずつ追加。次の標的を探しに再度駆け出した。
_______________
「お、みっけ」
暫く進んで、またウサギを見つけた。なんやかんや走ったりで感覚が少しずつ戻ってきたから、ちょっととばしていこうかな。
――太刀上流・歩法 迅雷
体を前に倒すことで体重を推進力に変える歩法。普段ではありえない速度でウサギへと突っ込んでいき、
「箒星!」
斬法の一つ、力の一切を鋒に集中させる突き技。またもや、ウサギを一撃のもとに下し、次の標的を探しに走る。
走っている間は片手間にコメントに対して反応していく。
『ラピスはアーツは使わんの?』
アーツ、それは武器スキルが一定レベルに達すると開放される、MPを使って発動する技の総称。
それは、体を半ば勝手に動かしてくれる。
なんとも便利な技だ。
『刀』スキルの最初から使えるアーツは一つ。
袈裟斬りを放つ『一式・袈裟』だ。けど、これは使わない。
そんなことを考えていると接敵。次に見つけたのは、オオカミであった。
『フォレストウルフ Lv.5
属性:物理・斬撃 』
こちらはウサギとは違い追加パーツなんかはない。けれど、ウサギとは段違いに速い。初動は私の方が早かったけど、AGIはオオカミが上みたい。だから、速度勝負はしない。
「グルアアッ」
振るわれる爪は、私のアバターからだを容易に切り裂くだろう。
当たれば、だけどね。
――歩法 虚空
相手の攻撃を僅かなスペースを残して躱す。移動を最小限にすることで次の攻撃を行いやすくするための技。そして、オオカミの爪が通り過ぎた瞬間に一歩踏み込む。
「
上段からの振り下ろし。足腰を使うことで威力を上げて敵を縦に切り裂く技。
『レベルが上がりました。 Lv.2−>Lv.3』
『『刀』のレベルが上がりました』
『『敏捷強化』のレベルが上がりました』
『『識別』のレベルが上がりました』
「とまあ、こんな感じでアーツなくても、同じような事出来るんだよね」
『普通に凄え』
『スレスレじゃん』
コメントにもあったと通り、虚空は敵の攻撃を寸前で躱す関係上、目の前を敵の攻撃が通り過ぎる。
「まあ、この技、結構怖いからあんまり使いたくないんだよね」
見栄えは良いんだけどね。
『そりゃそうだ』
『何したら出来るようになるの?』
また走りながら、コメント返信をする。何したらかあ……。
「攻撃を喰らいながら覚える、かなあ?」
『うわ』
『そりゃ無いわ』
『これは酷い』
「ちょ、引かないで。待って、それ以外無いんだって、本当に。私の場合は攻撃の軌道が急に変わるような相手と打ち合いしてたら、勝手に練度上がったんだよね」
本当に体で覚えるしか方法はない。早く動こうとする体を押さえつけて、ギリギリまで粘ることで相手の隙を作る技なんだから。
あ、ウサギだ。このフィールドにはウサギとオオカミしか居ないのか。
まあ、いいや。
「瞬雷。それでね、さっきの技――虚空は攻撃を避けるときの隙間を段々と狭くしていけば使えるようになるよ。皆も試してみて、出来ると便利だから」
『『敏捷強化』のレベルが上がりました』
やったね。これでまた速くなったよ。
『さらっと』
『犠牲が増えていく』
『恐ろしや、恐ろしや』
「皆もゲームだったら、普通にするでしょ! 箒星」
モンスターをもれなく一撃で屠っていく光景にコメ欄は歓喜(?)の嵐。
次の接敵はオオカミ。それも
『あ、初心者殺し』
『一斉に攻撃くるけど、どうすんの?』
視聴者さん曰く、βテスターの多くが複数のオオカミにエンカウントして負けていったのだとか。
「問題ないよ」
私は木陰から出る。
――歩法 嚆矢
ゼロから一気にトップスピードに移るための技。私は急加速する。
――歩法 迅雷
加速して更に速度を上げる。
その速度のままオオカミの間に入り込み、右足で強く地面を蹴る。
「円環!」
左足を軸として、右足で踏み切り一回転する。その勢いのままに刀を旋回、周囲を薙ぎ払う技。
3頭のオオカミは全てが首を裂かれ、消滅する。
『レベルが上がりました。 Lv.3ー>Lv.4』
『『刀』のレベルが上がりました』
『『敏捷強化』のレベルが上がりました』
よしよし。最初のフィールドの敵は脆いなあ。円環で殺せるんだから。
『おかしくね?』
『3頭とも高さ違うのに何で全部の首に攻撃が当たってるの?』
『何した?』
お、気がつく人がいるとは。でも、割と簡単なんだよなあ。
「さっきの技を使う時に刃より先を見るんだけどさ、相手の首の位置を見て、軌道を調節すれば良いんだよ」
『はい、無理ゲー』
『人間に可能ですか?』
まあ、言うは易しというやつだね。
残り時間は半分を切っていた。
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