第8話【追いすがる気持ちだけで】
ここ数か月間、宇辻はTRPGをやっていない。
前にも書いていたことだが、個人勢で活動していく中で宇辻は積極性に乏しく、リアルが忙しいとなれば簡単にTRPGというジャンルから離れてしまう。
「……卓やりてー」
卓をやりたい願望はあるが自身でGMするという気分にも中々ならず、どうすればいいかと受け身の姿勢に回っている。
こういうところが宇辻のいけないところだとは宇辻自身も自覚しているが、中々宇辻自身動けずにいた。
「GMやってくれるって言ってくれたんだけどなぁ」
個人間で知り合った人(数回宇辻がGMをして知り合った)が”そのうち”卓を開いてくれると言ってくれ、シナリオも決まっていた。連絡が来ればすぐに卓を開ける状態にもなったというのにこうなってしまっている。
ただ、この状況でも宇辻は誰も責めていない。こういう事はよくある事だというのは自覚しているからだ。
何故なら、知り合った人も結局は自分とはほとんど初対面だ。自分に裂く労力などよりも楽しく友人たちと卓を囲む方が良い。
宇辻だってそう思う。
知り合った人も何処かのコミュニティに属していた様で、そちらでの卓を楽しんでいるのだろうと推察され、本当ならば宇辻もそうしてコミュニティに属し、”継続”的なコミュニティ活動をした方が絶対に卓にはありつけるのだが、宇辻の中でそれが出来なくなってしまっていた。
宇辻の中でコミュニティというのは死んでしまっていた。
「いいや、今日は早めに寝よう」
そうした過去と現実に目を背けるかの如く、宇辻は早めの眠りにつくのだった。
過去に”宇辻が愛したTRPG”は間違いだと気づかされる。
それはただただ宇辻の”精神が子供”であると気づかされたとても苦い事件だった。
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