第24話 魔王との和解と勇者パーティの凱旋
邪神の呪いから解放された魔王は、俺達に警戒したままゆっくりと起き上がる
「う………、貴様ら、何故トドメを刺さぬ?」
「邪神こそが本当の敵だとわかった今、別にお前を殺す理由なんてねェよ」
魔王はまだ警戒を解かない。その時、クロツキ女王がリタを抱き上げながら戻ってきた。
「クロツキ、貴様の差し金か?我が邪神に洗脳されて都合良く使われていたのは認めよう。そのせいでここ数年、人間共と無益な争いを繰り返してしまったことも詫びよう」
「だが…………、我ら魔族は人間共と馴れ合いはせぬ………!!!弱いというだけの理由で神々の庇護を得て、のうのうと生きて来た人間共とはな…………!!!」
魔王は声に気迫を滲ませながら俺達を拒絶する。最悪自分が殺される事になろうとも人間と歩み寄る気はないようだ。
ここまでの拒絶はただ事ではない。今、神々の庇護と言ったが、おそらくは神話時代にまで遡る程の確執があるのだろう。
「別に俺達はお前を殺さねェし、魔族に対しての侵略戦争を仕掛けるつもりもねェ。俺達はあまりにも無知だ。だから、聞かせてくれ。魔族と人間の間に何があったのか…………」
俺の頼みに魔王は目を丸くして驚いていたが、やがて落ち着いた表情で人類と魔族の歴史を語り始めた。
▷▷▷
魔王side
かつて、
その後、愚かで欲深い神々は互いに縄張り争いを始めた。
しかし、魔族だけは『種族として強い』が故に庇護を受けられなかった。
それどころか、魔族はどこに行こうと排斥される始末………
そんな我らを唯一拾ってくださったのがニュクス様だった。
ニュクス様は最後まで魔族に庇護を与えはしなかったが、その代わりに我らを自身の領地に受け入れてくださった。それだけでなく神々の争いで居場所を失った棄民を束ね、『争いそのもの』を終わらせる為に立ち上がったのだ。
我ら魔族は人間共と馴れ合うつもりはないが、争うつもりもない。我らはニュクス様から与えられた恩を永遠に忘れない。それこそが我らの誇り
魔王side 終
▷▷▷
魔王の話が終わり、場を重い沈黙が包み込む。魔王の人間への怒りは尤もだ。
しかし、邪神の傀儡になっていたという背景を加味しても魔王が先に武力侵攻を行った事は事実。さて、どうしたものか…………
「えっと………クロツキ陛下、私達勇者パーティが魔王を
リゼルの妙案に、その場にいたほぼ全員が驚愕する。
「実に
クロツキ女王は力強く言い切った。
「…………人間の中にも話がわかる者がいるようだな。魔族を代表して礼を言おう。まだ人間共を許した訳ではないが、貴様ら勇者パーティの事は忘れない」
魔王はあまりにもスムーズに事態が解決した事に驚き唖然としながらも感謝の言葉を述べた。
「忘れねェって言うンなら名前ぐらい覚えてけよ。俺はクロード」
「僕はアイン」
「リゼルです」
「ボクはミユ。一応、闇夜の神子らしいね」
俺達は思い思いに名乗る。
「クロード、アイン、リゼル、ミユか………覚えた。さらばだ、真の勇者達よ………」
魔王は俺達の名前を記憶に刻み込むように復唱し、俺達に背中を向けた。
よっし………全部片付いたし、この後は常夜の国の観光でも………
「どこへ行くんだァ………??」
「フオォォォォォォォァ!?」
いつの間にか背後に周り込んでいたクロツキ女王にがっしりと肩を掴まれる。
振り返ると、
「呑気に観光をできるとでも思っていたのか?他の国への魔王討伐報告、勇者パーティの凱旋祝い、他の国に内密で魔王との停戦合意………やる事は色々ある。だが安心しろ、国賓級の待遇を約束する。という訳で…………、逃げられると思うなよ?」
クロツキ女王は不敵に笑いながら、俺達を
その後、常夜の国に滞在中は良い意味でも悪い意味でも退屈する事はなかったとだけ言っておこう。
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用語解説
魔族
神話時代、人類よりも『種族として強い』が故に神々の庇護を得られなかった種族。
神々から魔力の制御技術を与えられなくとも独自に魔法を開発、研究できるだけのポテンシャルをすでに有しており、それ故に畏怖され、排斥された。
ニュクスが魔族を受け入れた事により、魔族は人間と融和しないまま独自に文明を発展させた。
そのような歴史から魔族は闇夜の神ニュクスを信仰している。
魔法
神話時代のアドリビトゥムにおいて、神々が人間へと与えた魔力の制御技術を基礎として発展した。魔力とは生命体の持つ命のエネルギーそのものであり、肉体に貯蔵した魔力を制御、出力する技術を人類が獲得した事により魔法が生まれた。
人物解説
ニュクス
他の
なお、神話時代から『闇夜の神ニュクス』は白夜の国で信仰されている『光の神ルー』をその傲慢さゆえに嫌っており、『ニュクス教』を信仰する常夜の国と『光の神ルー』を至上の存在として信仰している白夜の国は人の時代においても宗教的に対立している。
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