第4話 不遇勇者アイン
アインside
ついに念願叶い勇者となった僕は、幼なじみで我が家のメイド兼魔法使いのリゼルとともに白夜の国から旅立った。これから僕達2人で多くの人を助けて、魔族と戦い世界の平和を守るのだと意気込んでいたが、現実はそう甘くはないとすぐに思い知る。
パーティに参加したいと志願してきた冒険者に裏切られて路銀を持ち逃げされたり、『勇者様の歓迎会を開く』と言われて案内された酒場でイカサマギャンブルに参加させられて借金を背負わされたり………僕が世間知らずなのもあると思うが、お金のあるところからならば少しくらい奪っても良いだろうと考える人はどこにでもいるみたいだ。
その後も同様のトラブルに巻き込まれ続けて勇者協会からの支援金はほとんど借金返済に消えた。
こんなのが僕の望んだ勇者なのだろうか?僕はもう疲れたよ………
アインside 終
▷▷▷
氷雪の国に到着した俺達は情報収集と腹ごしらえを兼ねて酒場に入ったが、そこで俺が見たのは…………なんか死んだ魚のような目でビールを飲んでるアインだった。
何があったらこうなるんだよ………
まるで、『子供の頃から英雄譚に憧れていて刺激的な冒険や非日常を求めた青年が、いざ冒険者ギルドに入ると毎日安い報酬で地味な依頼ばかり与えられて心身ともに疲弊して、やがては摩耗して惰性で依頼をこなすだけの日々を繰り返して、とりあえず生きてるだけ』………みたいな面構えだぞ………
「白夜の国に………帰りたい………」
濁った目をしたアインが虚ろな表情でそう呟いてた。やべェよあいつもう限界だよ誰かアインを休ませてやってくれ………
「アイン!!も〜、またビールばっかり飲んでる………」
「ごめんよリゼル……今日はもう飲まないから」
アインの旅仲間と思われる少女、リゼルがあいつに駆け寄る。
ふむ、メイド服に、メイド服のデザインに合わせた魔女帽子………なかなかに独特なファッションだな。
リゼルの言葉に対して、アインはうつむきながらぼんやりとした様子で応えた。
その時、うつむいていたアインが顔を上げた。あ………、目があった。
「クロード…………」
どうしよう、なんかめっちゃキラキラした目でこっち見てる。今更他人のフリはできんよな………
「ひ……、久しぶりだなアイン………」
めっちゃ気まずいけどとりあえず挨拶。その間ミユは我関せずとばかりにご自慢の刀剣類コレクションの手入れしてる。(余談だが、ミユの趣味は刀剣類の収集。集めるだけでなくて武器として使う事もある)
その後アインは一時的に明るさを取り戻して、酒が入ってる事もあってか、リゼルに勇者認定試験の時の俺との戦いについて語り始めた。
「すごいです✨クロードさん、アインに勝ったんですか✨?」
「まあ、一応な………でもブチ切れた白夜王に不合格にされそうになってな………そこをアインが説得したんだよ」
「ハハハハハ、そんな事もあったな〜。本当に……あの時は充実してたなァ………(泣)」
アインおめェガチ泣きじゃん…………
「お前マジで何があった………」
しばしアインの話に耳を傾ける。結果…………、
「おめェ馬鹿だろ、お人好しすぎ」
それ以外の感想が出て来なかった。
理想と現実のギャップで苦しみ、しだいに摩耗する、それじたいは珍しい話ではないがアインの場合は世間知らずすぎてめちゃくちゃカモられてる。意外とポンコツなのか?こいつ。
「アインは昔から騎士の家柄で裕福な暮らししか経験してないから、やっぱり私達のパーティに必要なのはクロードさんみたいに常識的な感覚を持つ人なのかもしれません………」
リゼルがなんかキラキラした目で俺を見ている。なんか前にこんな状況あったような………オモイダセナイナ~イツダロウナ~(←すっとぼけ)
「クロードさん、私達のパーティに入ってくださいませんか✨?」
「嫌だァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
俺はただ白夜の国から出て自由に生きていたいだけなんだ!!ポンコツ近衛騎士の世話なんてしたくないわ!!!
「クロードはアインに恩があるんだよね?」
今まで黙っていたミユが唐突に口を開く。
「まあ、形式的にはそうなるな………」
「それなら恩は返すべき………ボクはそう思うよ」
ミユ、お前もか…………
クロードはどうする?
→ アインの仲間になる
アインの仲間になる
アインの仲間になる
って、選択肢が実質一択はズルくね?
「やれやれだぜ…………」
神妙な表情でそう呟き、ハードボイルドな空気を出してみる。
ささやかな抗議のつもりだったが肯定と受け止められたようだ。
アインが 仲間に なった
リゼルが 仲間に なった
仲間が増えたというのにこの釈然としない感じはなんなんでしょうねェ?
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