想像と違った高校の入学式

俺は、高校生になることを凄く楽しみにしていたんだ。

あの時は。


中学三年生の卒業式が終わって、晴れて高校生になれる十五才の春休みの間が、一番楽しかったんだなって思うんだ。


子供でもない大人でもない微妙な時期だけど、義務教育から離れられて、キッチリとした学校の規則から逃れられることができて、俺には、すごく自由だった。



『どんな高校生活が送れるのだろう。』

『色んな友達作って、たくさん話して、遊びまくって、恋人作って、一生の友達と出会えるんだろう。』

そう思っていた。

マイナスな事はひとつも考えていなくて、プラスの事しか考えていなかった。


中学三年生の頃、クラスに恵まれていたんだ。

クラスは、皆仲良くて、いつも笑いが耐えなくて、明るくて。

毎日が本当に楽しかったんだ。


俺もその調子だったんだ。

自分が笑顔でいれば、周りも笑顔になって、

自分が明るくいれば、周りも明るく楽しく過ごせる。

その調子で、高校の入学式に出たんだ。


でもな、ワクワクして楽しかったのは、入学式に出る前までだったんだ。


俺は、同じ中学の人が誰一人もいない高校を選んだんだ。

ただ、同じ中学の人が嫌とかそういう理由じゃない。


新しい場所で、誰も俺を知らない人達の中で、どんな風に過ごせるか試してみたかったから。

ある意味、挑戦だよな。

それくらいポジティブだったんだあの時は。


けれども、その考えは甘かったんだ。


高校の入学式に出る人達は、別室に集められた。

部屋の中に入ると、

皆同じ中学の人達と一緒に固まってお喋りをしていた。


辺りを見渡せば、皆そうだった。


県外から来た俺は、その間に割り込んで入れる訳もなくて、離れたところでひとり座り込んだ。


俺の周りでは、色んな話し声が聞こえる。

笑い声や他愛のない話し声が。


でも、俺は、今、『ひとりぼっちだ。』


高校だから、色んな人達(県外の人や外国の人や色んな性格の人、色んな性別の人)が集まって仲良く出来るものだと思っていた。


でも、それは間違いだった。


田舎特有の人間関係があるという事をこの時、初めて知ったんだ。


『見慣れない顔』、『立ち振舞い』、『何かひとつでも違った所』、『気に食わないこと』があれば目をつけられる。


そして、『いじめの標的』になるんだ。



誰とも話をしないまま、入学式に出るためにクラスの出席番号順に並んだ。

そして、無事に入学式を終えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る