ファンタジー小説の【冒険者】ってことば、変じゃない?

@grisette

第0話

 そもそも「冒険者」ってなんなんだろう。

 当たり前のようにファンタジー小説に登場するけど、この呼び名って変じゃない?

 この名称を見るたびに違和感があるのはわたしだけ?

 なんかこう、しっくりこないというか、わりの悪さを感じないだろうか。

 

 「冒険者」という単語が載っている国語辞典は意外に少ない。

 「冒険家」なら載ってる辞典もあるけど、それは明らかにニュアンスが違うよな。

 英語ではAdventurerアドベンチャラーという単語が相当するが、英和辞典では普通に「冒険家」と訳される。


 もちろん、「冒険者」ということばがこれまで使われてこなかったわけではなくて、この単語自体は昔から普通に使われていた。有名なアニメ作品『ガンバの冒険』の原作小説の題名や、海外映画の邦題、古くは夏目漱石なつめそうせきの小説にも見える。


 日本のファンタジー作品に登場する「冒険者」という存在は、もとただせば海外の小説やロールプレイングゲームに登場するAdventurerアドベンチャラーということばを、そのまま輸入したものなんだろうけど、薬草採取や魔物退治や護衛任務がはたして「冒険」かというと、どうなんだろう? と思えてしまう。

 あくまで小説やゲームの主人公がやるから、そこに物語が生まれて冒険っぽくなるだけで、職業として考えるなら「冒険」ということばにはそぐわない地味な活動をすることになるだろう。


 「冒険」ということばを調べると、どの国語辞典にも共通して書いてあるのは二点。「危険なことをすること」、そして「成功するかわからないことをすること」だ。

 危険なことはともかく、成功するかわからないことをしていたんじゃ、冒険者も命がいくつあっても足りないだろう。


 違和感の原因はこれだ。


 ファンタジー作品における「冒険者」という職業のイメージと、「冒険」ということばに含まれるチャレンジャー精神や、パイオニアスピリット開拓者精神的な意味との齟齬そご(くいちがい)が、「冒険者」という呼び名が、いまひとつしっくりこない理由なんだと思う。

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