王子様にしちゃいけない恋をした

学生作家志望

心に決めた人がいるのに!

「なんだこれ、なんでこんなドキドキするんだ…」


普段静かな部屋で珍しく響いたその音は、俺の心臓の音だった。


「恋…したのか?俺が?」


「ダメだダメだ!俺にはもう心に決めた人がいるんだ…!」




ああっ…。マキト様尊い。今日も!



「島野さん!島野さん!」


「はいっ…。」


「うわっ!なんでおっとり?」


「ああごめん。俺…じゃなくて。私、つい、眠くて」


「しっかりしよう!文化祭の準備、ちゃんとやらなきゃみんなに迷惑かかっちゃうからさ」


「う、うん。」


1週間後の文化祭、準備で任されたのは体育館の飾り付け。とは言っても、俺たちは教室で飾り付けを作れるだけ作るって役割なんだけどね。


(はあ、昨日のテレビのマキト様。かっこよかったなぁ。)


「あれ、島野さん!すごいね!僕の方が全然下手だわ…すごい上手!」


「ひぇ?そん、そん、なに?」


「ひぇってwそんな驚かなくても大丈夫だよ?」


「あ、はひ…」


俺には最近悩みがある…それは、今話している隣のクラスの山田くん。めちゃくちゃイケメンってよく俺のクラスでも聞いていたが、会ってみると想像以上にイケメンだった。しかも、顔が俺の推しのマキト様に似てるってこと…!


まずい、呼吸が乱れそうだぁ……!


「ちょっと吐いてくる」


「ひぇ!?大丈夫?」


俺は開きっぱなしの教室のドアから女子トイレへ走って行った。


「はあ…はあ…」


今、みんなは下の階で他の仕事に追われていて、この階には俺と山田くんしかいない。今なら、このドキドキも誰にも聞かれずに済む…


(ぶっさ…)


俺は鏡が嫌いだ。自分の顔が嫌になる。夜遅くまでマキト様のライブ動画とか見てるから顔がニキビだらけになってしまった。目も悪くなって丸メガネ…。


全部自業自得だから笑えない…







「島野ちゃん!そのスカートおしゃれだね!」


「そうかな?ありがとう」




「え!?島野ちゃんの服オシャレすぎでしょ!なんでそんなオシャレなの?」



俺のお母さんは、俺のファッションをとにかく気にする人で…毎日みんなからオシャレって言われた。


でも、俺は別にオシャレなんて言われてもなんら嬉しくなんてなかった。俺は、女子っぽいのが大嫌いだ。


なんで女子は女子らしく、男子は男子らしくじゃなきゃいけないんだ?そう思った時、マキト様に出会った。


マキト様はかっこいい系王子様なのに、中身は女子で…もう本当にさいっこう!あの日たまたまSNSの動画で見つけてからはずっと配信とかライブを追ってる…。あんなにイケメンで、歌もうまくて…!


(やっぱり、違う、俺は山田くんを好きになるわけないし。山田くんは絶対に違う…)


(だって、山田くんは男らしい、イケメンなんだし。)


「でもとにかく、早くこのドキドキを治さなきゃ…」


「ねえ、何、1人で話してるの?」


「え!?いつのまに!?」


鏡に映る私の後ろに、いつのまにか同じクラスの優菜がいた。


「全部聞いてたよ?ねえ、山田くんのこと狙ってんの?」


「違うって!俺は!」


「俺?女の子だよ?」


「あ…私は…別に違うから。」


「きっもw陰キャ男かよw」


(怖いっ…怖い。どうしよう。逃げないと…。)

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