遅咲きのサワン 〜ソロアイドルと2つのコサージュ〜

SHOW。

プロローグ 遅咲きのソロアイドル

 ——さわやかでのどかな笑顔を覗かせるアイドルは、ダイヤモンドでもパールでもない宝石のような輝きを放つ。


 アイドルである彼女の透明度の高い歌声。

 たおやかで、ここってときにビシッと決まるダンスパフォーマンス。

 緑色と白色がベースの衣装を、胸に飾られたふたつのコサージュと共に、ユラリユラリと揺らす。


 歌も踊りも洗練され、ビジュアルの美麗さから来る柔らかな雰囲気が、現実から少し浮き上がった可愛らしい偶像を作る。これがハリボテじゃなくて、彼女の自然体が織り成す世界観というんだから、もう底無しの魅力と言えなくもない。


 どこか哀愁が漂う、ポップなサウンドの曲が流れ続ける。観客の視点はそのアイドルにのみ注がれていて、彼女が移動すれば、みんなの視線も移動する。いや、知らず知らずのうちにうっとりとさせられているのかもしれない。思わず魅了してしまうんだ。


 時は2010年代の後半。

 グループアイドルが未だ全盛の時代。

 この広いステージ上には、ただ一人。

 かつての憧れと後悔を追い掛ける。


 20代の折り返しからキャリアをスタートさせた、遅咲きのソロアイドルである彼女。そんな彼女がステージのどこに居たって、もはや関係ない。彼女の居る場所こそが正真正銘、アイドルとしてのセンターとなる——

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